花火が始まる前に、僕と彼女は多く立ち並んだ出店を見て回った。
各々が食べたい物を買ってシェアしようという話になって、かき氷とフランクフルトとフライドポテトと唐揚げを買った。
一つの食べ物を他人とシェアするという経験もこの時初めてで、謎に緊張したことを覚えている。
再びブルーシートに座り、一息つこうとすると、彼女がかき氷のスプーンをこちらへ向けてきた。スプーンの上には、いちごシロップで赤く染められたきめ細やかな氷が乗っている。
「はいア~ン!」
「いやいやいや」
「早く食べないと溶けちゃうよ。はいア~ン!」
人目が気になって仕方なかったが、僕は彼女に言われるがまま、スプーンを口に含んだ。口の中に広がる甘みと冷たさが、過敏になった体全身に行き渡る。
僕が食べる様を見た彼女は、満足気に微笑んでいた。そして、そのまま自分もかき氷を口に含み、「美味しい」と言いながら体を揺らしていた。僕は、内心こう思っていた。『あっ、間接キスだ』と。
先程、間接ではなく直接キスをしたにも関わらず、そんなことを考えてしまう僕は、何て愚かな人間なんだろうと己を恥じた。
「やっぱ、夏といえばかき氷だよね」
「うん。夏の味がした気がする」
「夏の味ってなんか素敵だね。陽、センスあるよ」
「なんのセンス?」
「うーん、なんだろう? ワードセンス的な?」
「何それ?」
二人で静かに談笑していると、花火開始30分前のアナウンスと共に、一発だけ小さな花火が上げられた。
「わあ、なんか緊張してきた」
「俺も」
「陽は初めてじゃないでしょ?」
「でも、葵と一緒に見るのは初めてじゃん」
「……このプレイボーイが!」
「えっ! なんで?」
「なんでもないよ。さあ、ゆっくり待と!」
30分後、聞き馴染みのある打ち上げ音とともに一発の花火が上がった。そして、一瞬音が止まったかと思うと、空に大きな花が咲いた。
「わあ、綺麗!」
空に大きな花が咲くたびに、彼女の顔がキラキラと輝く。花火の光に照らされた彼女の横顔がより妖艶に強調されて、自分でも分かるぐらいに鼓動が大きくなってしまう。
僕は思わず、ブルーシートの上に置かれた彼女の手をそっと上から覆った。彼女が一瞬、僕の方を見たことが分かったが、僕はあえて視線を空に固定させていた。そんな僕の心情を知ってか知らずか、すぐに彼女も視線を空に戻した。そして空に視線を固定したまま手を動かして、手のひらと手のひらが重なるように僕を導いてくれた。
各々が食べたい物を買ってシェアしようという話になって、かき氷とフランクフルトとフライドポテトと唐揚げを買った。
一つの食べ物を他人とシェアするという経験もこの時初めてで、謎に緊張したことを覚えている。
再びブルーシートに座り、一息つこうとすると、彼女がかき氷のスプーンをこちらへ向けてきた。スプーンの上には、いちごシロップで赤く染められたきめ細やかな氷が乗っている。
「はいア~ン!」
「いやいやいや」
「早く食べないと溶けちゃうよ。はいア~ン!」
人目が気になって仕方なかったが、僕は彼女に言われるがまま、スプーンを口に含んだ。口の中に広がる甘みと冷たさが、過敏になった体全身に行き渡る。
僕が食べる様を見た彼女は、満足気に微笑んでいた。そして、そのまま自分もかき氷を口に含み、「美味しい」と言いながら体を揺らしていた。僕は、内心こう思っていた。『あっ、間接キスだ』と。
先程、間接ではなく直接キスをしたにも関わらず、そんなことを考えてしまう僕は、何て愚かな人間なんだろうと己を恥じた。
「やっぱ、夏といえばかき氷だよね」
「うん。夏の味がした気がする」
「夏の味ってなんか素敵だね。陽、センスあるよ」
「なんのセンス?」
「うーん、なんだろう? ワードセンス的な?」
「何それ?」
二人で静かに談笑していると、花火開始30分前のアナウンスと共に、一発だけ小さな花火が上げられた。
「わあ、なんか緊張してきた」
「俺も」
「陽は初めてじゃないでしょ?」
「でも、葵と一緒に見るのは初めてじゃん」
「……このプレイボーイが!」
「えっ! なんで?」
「なんでもないよ。さあ、ゆっくり待と!」
30分後、聞き馴染みのある打ち上げ音とともに一発の花火が上がった。そして、一瞬音が止まったかと思うと、空に大きな花が咲いた。
「わあ、綺麗!」
空に大きな花が咲くたびに、彼女の顔がキラキラと輝く。花火の光に照らされた彼女の横顔がより妖艶に強調されて、自分でも分かるぐらいに鼓動が大きくなってしまう。
僕は思わず、ブルーシートの上に置かれた彼女の手をそっと上から覆った。彼女が一瞬、僕の方を見たことが分かったが、僕はあえて視線を空に固定させていた。そんな僕の心情を知ってか知らずか、すぐに彼女も視線を空に戻した。そして空に視線を固定したまま手を動かして、手のひらと手のひらが重なるように僕を導いてくれた。



