「勉強とか、人に教えたことないよ」
「それでもいいから、お願い!」
懇願するように手のひらを合わせる彼女の言葉を、無下にはできなかった。
「じゃあ、何が分からないの?」
「ぶっちゃけ、中学の内容も全然分からない」
「……じゃあ、英語はどこで躓いた自覚がある?」
「うーん、最初から躓いてたと思うけど、三人称単数とかが未だに意味が分からない。なんで一人なのに三人称なの?」
正直、彼女の質問に驚いた。と、同時に妙に腑に落ちた感覚があった。あの辺りで同級生の多くが脱落していった記憶があったから。
「ああ、それは自分視点で見て三人目って意味なんだよ。俺視点だと俺が一人称で私のI、葵が二人称であなたのYou、あそこにいるおじさんが三人目の三人称で彼のHe。この説明で分かる?」
「……えっ? めっちゃ分かりやすいんだけど。陽凄いね。今まで聞いた誰の説明よりも分かりやすいよ。将来、先生になりなよ」
「うーん、学校の先生は基本好きじゃないからなりたくないな」
「あっそういえば私も学校の先生嫌いだった!」
彼女の言葉に、僕は声を上げて笑った。彼女もまた、僕と同じように大口を開けて笑っていた。
「なんか陽って不思議だよね。頭いいのに夜遊びしてて、綺麗な優等生の道も歩めるのにそんな感じでもなくてさ。答えたくなかったら答えなくていいけど、家庭環境とか色々あった?」
「……勘がいいね」
「そっか……」
彼女はそれ以上、詮索しようとはしなかった。僕もまた、自分の家庭環境について誰にも話したくなかったので、彼女の配慮がありがたかった。
「花火までまだだいぶ時間あるけど、どうする? 近くにはジャスコぐらいしかないけど」
「このままでいいよ。波の音を聞いて磯の香りを嗅ぎながら陽と過ごす。私にとってこれ以上の贅沢はないよ」
「大袈裟だな。でもなんか嬉しい。ありがと……」
言い切る前に不意に彼女からキスをされた。生まれて初めての口づけだった。
「……えっ?」
「酒臭くなかったでしょ? この日のために三日禁酒したんだからね」
そう言いながら微笑む彼女に、僕は上手く言葉を返せずにいた。そんな僕に対して、彼女は、少しだけ不安そうに言葉を続けた。
「……嫌だった?」
「……嫌じゃない。全然嫌じゃないよ!」
随分と語気を強めてしまった。そんな僕を見て、彼女は屈託のない笑みを浮かべていた。
「はあ、まさか私のファーストキスの相手が三つも年下の中学生になるとはな」
彼女は自嘲気味に言ったが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。それよりも僕は、驚きの方が勝っていた。
「それでもいいから、お願い!」
懇願するように手のひらを合わせる彼女の言葉を、無下にはできなかった。
「じゃあ、何が分からないの?」
「ぶっちゃけ、中学の内容も全然分からない」
「……じゃあ、英語はどこで躓いた自覚がある?」
「うーん、最初から躓いてたと思うけど、三人称単数とかが未だに意味が分からない。なんで一人なのに三人称なの?」
正直、彼女の質問に驚いた。と、同時に妙に腑に落ちた感覚があった。あの辺りで同級生の多くが脱落していった記憶があったから。
「ああ、それは自分視点で見て三人目って意味なんだよ。俺視点だと俺が一人称で私のI、葵が二人称であなたのYou、あそこにいるおじさんが三人目の三人称で彼のHe。この説明で分かる?」
「……えっ? めっちゃ分かりやすいんだけど。陽凄いね。今まで聞いた誰の説明よりも分かりやすいよ。将来、先生になりなよ」
「うーん、学校の先生は基本好きじゃないからなりたくないな」
「あっそういえば私も学校の先生嫌いだった!」
彼女の言葉に、僕は声を上げて笑った。彼女もまた、僕と同じように大口を開けて笑っていた。
「なんか陽って不思議だよね。頭いいのに夜遊びしてて、綺麗な優等生の道も歩めるのにそんな感じでもなくてさ。答えたくなかったら答えなくていいけど、家庭環境とか色々あった?」
「……勘がいいね」
「そっか……」
彼女はそれ以上、詮索しようとはしなかった。僕もまた、自分の家庭環境について誰にも話したくなかったので、彼女の配慮がありがたかった。
「花火までまだだいぶ時間あるけど、どうする? 近くにはジャスコぐらいしかないけど」
「このままでいいよ。波の音を聞いて磯の香りを嗅ぎながら陽と過ごす。私にとってこれ以上の贅沢はないよ」
「大袈裟だな。でもなんか嬉しい。ありがと……」
言い切る前に不意に彼女からキスをされた。生まれて初めての口づけだった。
「……えっ?」
「酒臭くなかったでしょ? この日のために三日禁酒したんだからね」
そう言いながら微笑む彼女に、僕は上手く言葉を返せずにいた。そんな僕に対して、彼女は、少しだけ不安そうに言葉を続けた。
「……嫌だった?」
「……嫌じゃない。全然嫌じゃないよ!」
随分と語気を強めてしまった。そんな僕を見て、彼女は屈託のない笑みを浮かべていた。
「はあ、まさか私のファーストキスの相手が三つも年下の中学生になるとはな」
彼女は自嘲気味に言ったが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。それよりも僕は、驚きの方が勝っていた。



