だから、恋を教えて




心臓の音がうるさいほど全身に響いていて、柊木に聞かれてしまうのではないかと焦る。

柊木だからじゃない、このシチュエーションにドキドキしているだけだ。そうに決まっている。


柊木が俺のネクタイから手を離すと、改めて隣に座り直す。
肩が触れ合うと、さっきより柊木の体温が伝わってくる。俺よりもひんやりとしている気がするのは、俺が緊張で体温が上がっているせいだろうか。


「あー……確かにちょっとどきっとするかもな」
「へ?」
「相手の体温意識すると。三崎の体温、俺より高いし」

柊木の発言は心臓に悪い。本人としては大した意味はないだろうけど。


「てか、平熱何度? 結構高くね?」

顔を近づけながら、俺の額に触れようとしてくるので咄嗟に柊木の腕を掴む。

「ストップ! さすがに近すぎ」
柊木はじっと俺を見つめると、ふっと笑った。

「顔、赤」
からかうように笑われて、俺はイラッとした。反応を見て楽しんでいたみたいだ。
不満に思いながらも、柊木が離れていったので脱力する。

「これから色々試してみような、リリ先生」

立ち上がった柊木が俺を見下ろしながら微笑む。妖しげな色気を纏った柊木に見惚れながら、湧き上がる創作意欲を感じていた。

柊木を見ていると、指先が動きそうになって描きたくてたまらくなるときがある。


「……柊木はいいのかよ。貴重な昼休みとか放課後を、俺なんかに使って」
「俺から提案したんだから、いいに決まってんだろ」

なんで俺なんだとか、聞きたいことは色々ある。だけど、理想のモデルがスランプを抜け出すために手伝ってくれるということが、なによりも魅力的だった。

柊木といたら、俺はスランプを抜け出せるのかもしれない。