だから、恋を教えて


あの後、俺たちは芹菜ちゃんのことは隠して、なにがあったのか説明をした。無事に疑いを晴らすことができて、柊木も俺も処分を受けることはなかった。
俺の荷物を教室に置いたままだったので、ふたりで取りに戻る。生徒たちはみんな下校していて、俺らしかいない。
進路指導室を出てから無言が続いていて、少し気まずい。俺が勝手に行動をしたことを、柊木は怒っているだろうか。
ちらりと柊木を見やると、ふっと笑った。

「お前、マジで馬鹿。無謀すぎだろ。下手したら一緒に停学になるところだっただろ」
「自分でもわかってるよ。でも、じっとなんてしていられなかった」
自己犠牲をしようとした柊木への苛立ちはまだ消えていない。

「だって柊木はなにも悪くないじゃん」
「……だとしても、俺の日頃の行いがイメージ悪くさせてんのは事実だろ」
「なんだよ、イメージって。俺から見た柊木は悪いやつじゃない」
柊木の前に立つと、両手で頬を掴む。

「もうあんなふうに突き放さないでほしい」
わずかに目を見開いた柊木が、眉を下げて「ごめん」と呟いた。

「許して」
俺の手を掴んで、指先にキスを落とす。その行動に一気に頬が熱くなる。

「な、なにして」
「許してくれる?」
「わかったから」
柊木から逃げようとしても、空いている方の手で背中に手を回されて動けなくなった。肩に柊木の頭が乗せられる。

「……ありがとう」
弱々しい声だった。柊木もだいぶ堪えていたのかもしれない。

「三崎が来てくれて嬉しかった」
「……うん」
俺も柊木を助けることができてよかった。
柊木の背中に手を回して、とんとんと軽く撫でる。すると、柊木が俺を抱きしめる力を強くする。

「お礼になにか今度奢る」
「じゃあ、またクレープ行こう。あと柊木の書いた小説が読みたい」
「……別にいいけど。でも三崎は恥ずかしくて最後まで読めないかもな」
どういうことだ?
なんで柊木の小説を読んで俺が恥ずかしがるんだろう。

「恋をしたあとの話だから」
意味深に微笑まれて、どきっと心臓が高鳴る。
鼓動の速さが柊木に伝わってしまいそうで、力づくで離れた。けれど、すぐに柊木に再び捕えられて、手を後頭部に回される。

「なあ、三崎」
鼻の頭が触れる距離で、俺たちは見つめ合う。

「好きになったあとは、どうしたらいい?」
「……そんなの俺が教えてほしい」

柊木のネクタイをぎゅっと掴むと、残り数センチの距離が縮まった。