だから、恋を教えて


翌日、教室がざわついていた。その話題の中心に誰がいるのか、みんなの視線からすぐに察した。
普段から目立つ柊木だけど、今日はいつもと違う。
みんな遠巻きに柊木を見ながら、こそこそ話している。その空気は、なんだか嫌な感じがした。

「柊木が他校の女子をラブホに連れ込もうとしていたらしい」
「あのやばい事件の主犯、柊木だったってことかよ」
聞こえてきた会話に耳を疑った。柊木がそんなことするはずがない。なんでそんなことになっているのか理解できなかった。

「あの写真見た?」
「ラブホの前のやつだろ? 今ネットで拡散されてんじゃん」
まさか……と思い、俺は急いでスマホで検索をかける。いろんなワードを何回も組み合わせて検索をかけると、五回目くらいでようやくヒットした。

日頃からあらゆる事件を取り上げているインフルエンサーが、【女子高生を無理やりラブホに連れ込もうとしている男たち】と投稿し、画像が一枚ついている。
ラブホの前で、柊木と男がいて、芹菜ちゃんにはモザイクがかかっていた。

主犯の女性がいつのまにかいなくなったと芹菜ちゃんが言っていたので、その人物が撮影していたのかもしれない。柊木はなにもしていないのに、主犯という濡れ衣を着せられてしまっている。
柊木と仲がいい人らも、戸惑っている様子だった。ひとりが声をかけようとすると、拒絶するように柊木が席を立って、教室を出て行く。

「さっき聞いたんだけど、朝から職員会議で柊木の件の話し合いしてるらしいよ。あいつ、ヤバいんじゃね?」
そんな話が聞こえてきて、俺は居ても立っても居られなくなり、廊下に出た。柊木の背中を追いかけて、駆けていく。

「柊木!」
足を止めた柊木が振り返る。いつも俺に向けてくれる親しみのある表情ではなく、無表情だった。

「あのさ」
噂なんて、気にするなよ。口に出そうとして、言葉に詰まる。こんなの慰めにもならない。もっと気の利いたことを言いたいのに、なにを言えばいいのかわからなかった。

「先生に本当のこと話に行こう」
「言わない」
「なんでだよ! このままだと柊木が誤解されて……」
「面倒くせぇな。別に誤解されても、どうでもいいから」
手を伸ばそうとすると、柊木が俺から一歩離れる。初めての冷たい拒絶に目を見開く。

「もう俺に話しかけんなよ」
「え……」
「ちょっと話しただけで、友達面すんのウザい」

それだけ言うと、柊木は踵を返してどこかへ行ってしまった。
廊下に立ち尽くしながら、俺は必死に涙を堪えた。
……自分で友達って言ってきたくせに。