俺たちは足早に階段を下って、ロッカーで靴に履き替えてから昇降口を出た。
眩しい日差しを浴びながら、校門をくぐる。同学年の生徒たちには遭遇せずにすんだことに、ほっと胸を撫で下ろす。
視線を上げると、半歩前を歩く柊木の髪が風にほどけるように揺れた。肌が青白く、不健康そうな柊木が日差しの下を歩いている姿は、どこか儚く目が離せない。
「なあ、なに頼むか決めた?」
そんな空気をまとっていながら、柊木は無邪気にクレープの話をする。その表情は幼い子どものようだった。
「柊木って、案外かわいいよな」
思わず漏らしてしまった俺の言葉を、柊木はしっかり拾ったらしい。目を丸くしてこちらを見る。
「かわいいって初めて言われた」
「いつもかっこいいって言われてそうだもんな」
「うん」
あっさりと頷く。事実なんだろうし、柊木の場合それが嫌味に聞こえない。
「柊木はなに頼むか決めてんの?」
「決めてる。これ」
向けられたスマホには、かわいらしいひよこのクレープの写真が表示されている。予想外のチョイスに俺はふき出してしまう。
柊木とひよこって結びつかなくて、可笑しい。
「美味そうじゃね?」
黄色のカスタードにはチョコレートペンで顔が描かれていて、周りにはオレンジがたっぷり乗っている。
「……確かに美味しそう」
「三崎はなににすんの」
以前から気になっていたのは、ひとつある。一番人気らしいので、売り切れている可能性もあるけど。
「……うさぎ」
さっき柊木のことを笑ってしまったので言いづらくて、視線を逸らしながらぼそっと答えた。
「あー、あれ人気らしいな」
顔はいちごホイップ、耳はチョコレートでできている。中にはカットされたいちごとバナナが入っているみたいだ。見た目もかわいらしいけれど、味も美味しそう。
「あと俺、猫のクレープも気になってる」
「わかる! カフェモカ味の美味そうだよな〜」
クレープの話でひとしきり盛り上がりながら、俺たちは駅へ向かって歩く。気がつけば、周囲の視線なんて、気にならなくなっていた。
