だから、恋を教えて



柊木って、思っていた人物とちょっと違う。

いや、クールで無愛想なのは変わりないけど、放課後に教室でふたりきりになると懐いた猫のように距離が近い。おまけに好奇心旺盛なのか、あれこれ試そうと言ってくる。

今日だって、妙な提案をしてきた。

「なあ、これも試してみたい」
柊木は俺が描いた漫画の三話をスマホ画面で開いて見せてきた。

「い、いやそれは……」
「手、出して」

躊躇う俺に対して、柊木は顔色ひとつ変えずに「早く」と圧をかけてくる。
逃れられないのを察して、俺は柊木の手のひらに指先をそっとのせる。プリントで指先を切った主人公の手当てをヒーローがするシーンだ。

触れられて主人公がドキッとしてヒーローを意識する。そして、指先にそっとキスをされるという甘い雰囲気のシーンなのだが、想像以上に緊張する。

俺の人差し指を、柊木の親指がゆっくり撫でるように触れた。心臓が手に移動したんじゃないかと思うほど、全身がどくどくしていた。


「三崎の指、硬い」
「……ペンダコだと思う」
「ふーん」

綺麗な柊木の手に比べて、俺は深爪しているし、ペンダコができていてなめらかじゃない。手を引こうとすると、柊木がぎゅっと握りしめてくる。


「まだ終わってない」
指先が柊木の方へ引き寄せられていく。

「そ、それ以上はいいって……」

ダメだと言っても、柊木は止まらない。でも俺自身も、止めてほしいと本心では思っていなかった。好奇心と期待と照れがぐちゃぐちゃになって、思考が乱される。

柊木の唇が俺の指先に触れた。最初は触れるだけ。次はちゅっと音を立てて触れる。そして、食むように触れるとぬるりとした舌が指先をなぞった。


「……っ、柊木待って」

柊木は止まることなく、むしろ指へのキスが深くなる。口の中に含んで、何度も舌に絡め取られる。

「お、俺そこまで描いてない!」
「そうだっけ」

戯けたように答えてくる柊木を涙目で睨みつける。