横目で廊下側の席を見る。そんなの一年の頃から知ってる。
たまたま通りかかったときに見えた三崎の弁当は見事に肉づくしで美味そうだった。
三崎は子犬のような大きな目で人懐っこそうなのに、いつもひとりでいて物静かだ。
それに案外はっきり物を言う性格。担任からクラス委員を指名されたとき、『家のことやバイトがあるので無理です』と断っていたし、クラスのやつらにノートを写させてくれと言われていたときも、『自分でやらないと意味がない』と断っていたのだ。
流されやすそうに見える三崎は、自分を持っているように見える。
逆に俺は、はっきりしていると周囲には思われているけど、それは恋愛絡みだけ。
気分じゃなくても誘われたら遊びについていくし、バイトだって辞めるつもりだったのに店長に頼み込まれて結局辞められずにいる。なんだかんだ俺は流されやすい。
だから、三崎みたいに自分があるやつが眩しく感じる。
*
俺にとっての転機は、三崎とぶつかってスマホの中身を見てしまったことだった。
「絶対誰にも言うな! 言ったら許さない!」
必死な三崎の表情を見たとき、少し驚いた。こんな顔もするんだな。
「とりあえずさ、飯食わね?」
もっと三崎と話してみたくて、俺は気づいたら昼飯に誘っていた。
話してみてわかったのは、思っていた以上に三崎は顔に出やすくて、結構すぐ照れるし動揺する。
三崎が描いている漫画は、素人の俺が見ても絵が上手いということはわかった。
やっぱりすごいな。夢中になれるものを持っていて、それを仕事にしている。
俺とは住む世界が違い住人だ。それでも、俺は手を伸ばしてしまう。
他の方向を向いている三崎に、こっちを向いてほしくて。
「三崎ってネクタイ、いつも上まで締めてて苦しくねーの?」
放課後の教室で、漫画の再現をすると言って俺は三崎に近づいた。
きちんと上まで締められているネクタイを緩めながら、三崎を観察する。
わずかに潤んだ瞳には、動揺が見えた。だけど、嫌そうではない。どこまで近づいて平気なのだろうか。
三崎の色々な表情が見たい。どんなことを考えて過ごしているのか知りたい。
そう思うのは、今まで俺の周りにいないタイプだからだろうか。
