対異能特別行動組

銀色の髪と尾、耳を持つ少年がビルの上から世界を見下ろしていた、冷たい夜風が髪をなびかせ体温を冷やしていた

「もっと温かい格好すればよかったな・・・」

夜の闇に溶けるように消えた独り言、ギルの装備は革のローブを纏った姿であったかそうには見えるが違うらしい、お尻の少し上、腰辺りには小さな穴が開いていて、そこからふわふわな尻尾が出ている

「じゃぁ・・・お願いね、フィオレ」

隣に居た魔物、フィオレが立っていた、馬のような見た目だが頭部が丸い球状になっており目と思われる小さい穴が三つついている、青い体に青いラインが入っており脚部にはショットガンと思われる機構がついている、不気味なデザイン、キューンとモーター音がし頭部が回転する、首元にも謎の穴が複数穴がついている

「ギル様、作戦開始まで残り二時間、作戦の再確認を要求」

機械的な音声が響く、無機質ながらどこか人間っぽい不思議な音色を奏でた、喋る度に小さい穴が青く発光している

「うん、このビルの下で暴れてヘイトを集める、その後手薄になった第三支部を僕が攻撃する」
「了解、暴れ方は?」
「人を殺さないならなんでも大丈夫、罪を背負うのは僕一人で良い」
「了解」
「・・・フィオレは死なないでね、また・・・寂しくなっちゃうから」
「寂しさを和らげる方法の検索、趣味に没頭する、音楽を聴く、人と話す――」
「・・・優しいね」

優しいのかどうかはさておき、銀色の少年はフィオレに頭を預け、今はただ作戦実行の時まで夜景を楽しむつもりだ、それに答えるように、ギルの頭が乗るように座り込んだ

「夜は冷えます、何か温かいものは?」
「・・・フィオレの体、暖かい」

二人、厳密には一人と一体は、夜の世界をジーッと見ていた





・・・




ドガァァァァァン!!突然、大爆発がビル全体に響く、振動でビル全体が大きく揺れる

「うぁ!?」

せっかくいい気持で寝ていたナナシは、揺れた勢いで二段ベットから落ちてしまった

「いたた・・・今の!」
「ナナシちゃん、大丈夫!?」

下のベッドで寝ていたミオが急いでベッドから降りる

「僕は大丈夫、それより今の・・・」
「今の爆発・・・商業区から」
「ここの目と鼻の先じゃないですか!」
「飛鳥さんとルティアはもう起きてるはず、早く行こう!」

二人の部屋に着くと、すでに飛鳥は起きており、ルティアは少し眠たそうにスナイパーライフルを整備している、しかしその眼は必至だ

「ルティア、早くしろ」
「わかってますよ!」
「先輩!」

ドタドタとナナシが部屋に入り込んできた、髪の毛はぼさぼさだが、いつも通りの服装に着替えている

「警告!警告!商業区にて爆発を確認!至急出動せよ!」

警告音が鳴り響き、ドタドタと足音が響く、部屋の前に男が一人、割り込んできた

「対能の皆さん!出番ですよ!」
「魔物か」
「はい、監視カメラを確認したら、馬のような魔物を確認しました!魔物討伐は任せます!」
「わかった、すぐ行くぞ」
「商業区なら、僕はここから援護射撃します!」
「じゃあ、ルティアはここで待機、俺とナナシはあの魔物の討伐を開始する、念のためミオもここで待機だ」
「わかりました!」

ナナシはこの事態だと言うのに、まるで余裕と言わんばかりに笑顔で走り去ってしまった、それを追いかけるように飛鳥も行ってしまった

「なんだろう、嫌な予感がする・・・獣人の勘ってやつ?」
「・・・その話はあと、早く準備するよ」

ミオは杖を持ち、ふうと息を吐いた、杖というより鉄の棒のそれが駆動音と共に、先端が開き、中の機構が螺旋状に変化した





・・・




「うわ、思ったよりおっきい・・・」
「油断するな」

商業区のど真ん中、目標の馬らしき魔物がそこに鎮座していた、月の光を浴びたその姿は、不気味ながら幻想的な雰囲気を醸し出している

「生体反応を検知、一人は男性・・・もう一人の性別番号は不明」
「何か言ってますよ」
「コイツが暴れた奴か、すぐ仕留めるぞ」
「敵対反応を検知、戦闘開始」

馬が右足の先を向けたかと思うと――

「散弾」

足先がスライドし、散弾銃のような機構が展開、破裂する音と共に大量の弾丸が迫ってくる!

「わぁ!?」
「くっ!」

二人は素早く反対方向に避ける、地面がえぐれるほどの威力だ、ナナシは先に近くの電柱に隠れる

「散弾銃か・・・少し困ったな」

飛鳥の技術で弾丸を弾き飛ばすことができても、あくまで一発が限界、散弾銃のような弾幕を張られると、流石に捌ききれない

「飛剣を使うか」

刀を鞘から抜き、刀身が青く光る、飛鳥の得意な魔法である、剣を振る事で衝撃波を飛ばす技、飛鳥の切り札でもある

「魔力の縮小を確認、優先対象を決定」

飛鳥の方向に銃口がむけられ、散弾が放たれる!

「クソっ」

なんとか走って回避し、近くの路地裏に身をひそめる、散弾銃の威力的にあまり隠れる意味はないが気休めにはなる

「ナナシ」
「はい!」
「奴の気を引け」
「了解です!」

ナナシは素早く電柱から姿を現す、相手との距離は大体十二メートル、相手は道路のど真ん中で遮蔽物はなし、近づくほど脅威が高くなるが、それは相手も同じ

「やっちゃいますよー!」

身体強化の魔法を受け、姿勢を低くし素早く懐に潜り込もうと接近する

「熱源反応の高速移動を確認、対象距離残り三メート・・・」
「話長いです!」

体を捻り、雷を纏った拳を思いっきりぶつける、バチバチ!と炸裂した音と共に拳が装甲に当たる、衝撃波が草木を揺らし、馬の装甲が凹んだ

「・・・損傷10%、自己修復開始」
「コイツ、自己修復持ちですよ!」
「散弾発射」
「わぁ!?」

少しよろめいたのもつかの間、ばらまかれた弾丸がナナシに襲い掛かる、なんとか身を屈んで回避したものの、すでに自己修復が始まっている、馬が緑色に光る、どうやら修復のサインのようだ

「先輩!」
「わかっている、ルティア、狙撃を」

シーン・・・なぜかインカムに手を添えたまま、飛鳥は返答を待っていた、しかし5秒経っても返信がない

「ルティア、なにして――」

耳を澄ましてよく聞いてみると、風切り音と

ドガアアアアアアン!!

「!?」

一斉に振り向いた先には、第三支部が何者かによる攻撃を受けていた、ここからでは遠くて見えないが、小さい何かが宙に浮いている

「敵は、二人・・・!」
「うっそ・・・!!」




・・・




数分前

「やっぱり嫌な予感がする」

屋上でスナイパーライフルを構えるルティア、風に揺られた髪を直さずジーッとスコープを覗いていた、インカムからの指示を待っている、照準は馬に向いている

「・・・どんな予感?」

目にかかったピンク髪をどかしながら、不思議そうに言うミオ、物々しい杖を担いだ彼女が隣で観測機を置いた

「う~ん・・・獣人の勘?」
「獣人族の直感は鋭いって聞いたけど・・・本当?」
「どうだろう、わかんない」
「・・・」

沈黙が重

「でも・・・嫌な予感は確かにする、なんか・・・全身がぞくぞくする」
「・・・ま、信じるよ、今までもずっと助けられてきたし」

その瞬間、ルティアが銃口を上に上げた

「あれ?」
「ちょっと、いつでも攻撃できるように・・・」
「違う」
「え?」

ルティアの尻尾がぞくっと震えた

「勝手に上がった・・・!」

その瞬間、ルティアがライフルと一緒に宙に浮いたまま止まった、時間も止まったような錯覚に陥る

「うぇ!?」
「ルティア!」
「なにこれなにこれ!?」

ルティアがスナイパーライフルを手放すと、すとんと地面に落下する、スナイパーライフルは宙に浮いたままだ

「ど、どういうこと?」

その瞬間、大量の車が空から落ちて来た!空気を切り裂く音と共に様々な大きさの車が接近してくる!

「え!?」
「伏せて!」

ミオが杖を上に掲げると、青い光が二人を包みこんだ、淡い光の膜が落ちてきた車にぶつかり、大爆発!

「シールド!助かった!」
「・・・」

ミオは上空をじっと見つめていた、なぜいきなり車が?

「ライフルが空中で静止してる・・・さっきの攻撃を考えると、重力魔法の可能性が高い」
「えい!」

ルティアがジャンプしてスナイパーライフルを掴むと、力が抜けるように落ちた、スナイパーライフルと一緒に地面に落ちた

「いてて・・・」
「敵は二人、それ以上居る可能性もある」

ミオがルティアに手を差し伸べると、それを嬉しそうに掴んだ、尻尾が上機嫌に揺れているが、すぐ顔を引き締めて周囲を見た、素早くスナイパーライフルを持って周囲を見る

「ミオ、シールド!」
「わかってる!」

ミオが地面に杖を立て、詠唱する

「空間座標の固定を確認、魔力回路接続」

ミオの右手から放たれた魔力が杖の螺旋機構に集まり、周囲に青い光が放たれる

「展開!」

青く光りだした螺旋が光り、上空に向かって光が放たれる!空中で青い光が広がり、青いシールドがビル全体を包み込む

「これで安心、少なくとも気休めはできる」
「よし!」

ルティアはネックウォーマーについているボタンを押すと、周囲に波動が広がり青い光が消える

「ステルス加工を施しといたよ、これでちゃんと狙える」
「早くもう一人の敵を見つけたいけど、熱源反応が多すぎてどこかわからない」

その瞬間、ルティアの全身の毛が逆立つ

「・・・!」

本能、これから死がよぎるほどの悪寒が全身を駆け巡る

「え・・・!?」

上空から、巨大なビルが落ちてくる!

「ミオ!」
「この質量は―――っ」






・・・






「今のって・・・」

ナナシが支部を見ていた、目の前に敵がいるのにもかかわらず完全に油断していた、風と衝撃波、煙で支部に何が起きているかわからない

「ナナシ!」

ハッとしたナナシがすぐさま馬の方を見る、散弾が目の前に!

「わわっ!」

なんとか避けるものの、尻もちをついてしまった、カランと軽い音を立ててスライドされた機構からシェルが地面に落ちる。あの散弾を間近に浴びたら即死だろう

「隙を確認」
「ちょ、ちょっと待って!」

しかしそれが通るわけがなく、無慈悲にも照準がナナシに向けられる、キュイーンと音を立てる音が、まるで死へのカウントダウンのようだ

「しま――っ」

飛鳥が飛剣を放とうとするがもう遅い、今から放っても間に合わない、しかしナナシの目に光は消えてなかった

「足場!」

両足を馬に向けて足場魔法を発動、魔法陣が放たれ間一髪で散弾を防御した、ガガガ!と音を立てて弾丸を受け止めた魔法陣が、ヒビが入って消えた

「やった!」
「・・・」
「ナイスだ」

飛鳥が飛び出し、刀を構え弾丸を装填中で隙だらけの馬を切り裂く!身体強化の魔法を纏った飛鳥は、弾丸を超える速度で斬っては離脱し、高速で接近して斬る、何度も何度もすれ違いざまに斬り続ける、攻撃でひるみ続け装填する暇がない!

「損傷、40%、47%、69%・・・」






・・・





「はぁ、はぁ・・・死ぬかと思った・・・」

ミオが出力を限界にして上部にシールドを展開、ビルを何とか支部から守れたものの、魔力の使い過ぎで地面に倒れてしまった

「ミオ、大丈夫!?」
「な、なんとか・・・でも、もう・・・」
「・・・大丈夫、僕がやっつけるから、先に休んでて」

ミオをゆっくりと仰向けに寝かせ、ネックウォーマーを上に上げる、その眼は元気な色が消え、きりっとした

「僕の大切な人を・・・後悔させてあげる!」

ルティアはすうっと目を閉じた、世界が暗くなり、深く深呼吸する・・・一気に開けた
スナイパーライフルを構えスコープを覗いた、敵は二体、うち一体の居場所は不明、もう一体はナナシ達が倒してくれる、今の標的は隠れている相手だけ

「来なよ!ビルだろうと車だろうと、吹き飛ばしてあげる!」

車が飛んできた、ビルの屋上に向けて、今はシールドはないが――

「甘いね!」

エネルギータンクを一気に撃ち抜く、一発ずつ発砲しコッキングする、弾丸がエネルギータンクを貫き紫色に爆風が空気を振るわせる

「・・・そっち!」

スコープ越しの熱源反応に気になるのがあった、素早く移動する小さい熱を中心に重力魔法の攻撃が来ている、アイツが原因だ

バヒュン!!


・・・


「!?」

路地裏を走っていると、突然何かが横をかすめ銀色の少年が止まった、すぐ横に着弾した後がある、麻酔弾だ
どうやら捕獲するつもりらしい

「威嚇射撃・・・バレた?」

少年が振り向き支部を見た、月光を受けて反射し光り輝いたスコープの逆光が、ギルを捉えていた