対異能特別行動組

キキー・・・ドン

夜のビル街に、一つの車が止まった、周囲は闇に落ちたように明かりがない。闇夜に溶けるように黒いバンで、扉が開き黒い青年が出てきた
黒いパーカー、黒いカーゴパンツに陣笠を深くかぶった黒髪短髪の男、まるで景色にカモフラージュするような姿の黒い男は、音もなく地面に足を付けた、背中には東洋の武器、刀を担いでいる

「・・・」

男が見上げたそこにはまた黒いビル、窓に明かりがついてない漆黒の建物がそこに鎮座していた

「先輩、ここですか?あの”エンジェル”の下っ端が居るビルって・・・」
「そうだ」

もう一人の女性らしき人影が出てくる、白いシャツの上に黒いジャケットを羽織り、頭には青い帽子、金色の長髪が靡く生足の少女が居た

「ナナシはここで待機だ」
「・・・わかりました、気を付けてくださいね、先輩」

ナナシ、と呼ばれる少女は、少し心配した目でその場で立ち止まった、黒い男はナナシには「先輩」と呼ばれている

「頑張ってください・・・!」

その言葉に背を向けたままこくりと頷いた青年は、ゆっくりとそのビルに入っていった










・・・









ビル内は綺麗に清掃されていて、柱が規則正しく立てられている、正面にはスーツを纏った男たちが五人ほど居る、その後ろには巨大な扉が立てられている

「来たか、お前がブツの運搬係か」
「魔石を早く寄こしな」

魔石――この街、フェルム・アストラーテのエネルギーの八割を補う物体の事だ、鉱石や魔物の死骸から採取される、電気や石炭より高いエネルギー効率を持つ物質、それ故に魔石を巡った戦争や、裏取引にも使われている

「・・・」
「おい、早く寄こせよ」
「これだ」

魔石が入った袋を取り出し、目の前に差し出した、一人の男がすぐさまそれを奪う

「あんがとよ」
「なぁ、アイツ・・・怪しくないか?」
「なんでだ?」

後ろだ待機していた男たちがひそひそ話している

「あの刀とやら・・・あんなの普通持ってくるか?」
「護身用じゃねえの?」
「バカ、俺たちは裏取引で来てるんだ、もしこいつに何か裏があったら・・・」
「別に良いだろ、念のためあとで中身確認しとけ」
「・・・」

青年がポケットに手を伸ばした瞬間―――

ボフンッ!

「なんだ!」
「煙・・・!?」

突然、袋から勢いよく煙が噴出し、周囲の視界が真っ白の煙に染まる、男たちはあたふたしている

「クソ・・・!」
「だから怪しいと思ってたんだ!」
「お前ら!銃を持て!」
「前が見えねえよバカ!」

男たちがギャーギャー騒いでる間に、少しずつ煙が晴れていき・・・急いで懐から消音器付きの銃を取り出した男たちは青年に銃口を向けた――はずだった

「あれ・・・居ない」

さっき居た場所に青年の姿はなかった、最初からいなかったように

「一体、どこに――」
「ここだ」

いつの間にか一番左に居る男の真隣に居た青年の肘うちが炸裂!

「がぼん!?」
「ボブ!」

一人の男は間抜けな声を出して吹き飛ばされ、その場でぴくぴくしている・・・気絶したようだ

「そこに居やがったか!」
「撃て!撃て!」

パパパパパパ!!と乾いた小さい銃声が響く、弾丸が青年に向かう

「死ねえええええ!」

青年が背中の刀を抜いたとたん・・・カキンカキン!と何かが衝突する金属音と共に、火花が散り弾丸が地面に向かって着弾した

「・・・」
「な・・・!?」
「弾丸を弾いた・・・」
「まぐれだ!撃ち続けろ!!」

また弾丸の雨が降り注ぐが、そのすべてを刀で弾き飛ばしながら、陣笠を少しずらして思いっきり男の一人を、全身を大きく回転させ蹴る!

「ごぶはっ!?」
「ジョニー!」
「クソ!撃ち続けろ!」

蹴った反動で離れた青年は弾丸を弾きながらゆっくりと近づいてくる!

「く、ジャム(弾詰まり)った・・・!」
「こっちは弾切れだ」
「どうする・・・!」

青年が背中の鞘を抜き、体を半回転させ一人の顔面を思いっきり叩く!そのまま数メートル吹き飛ばされ壁に激突する!

「がべべん!?」
「ジェニファー!」
「離れろ!奴は銃を持ってない!剣一本だ!遠距離武器なんてない!」
「魔法を使う可能性は!?」
「あ・・・」
「おい!」

残った二人が急いで離れる、銃口を向けたまま急いでリロードする男を見た青年は、陣笠を被り直し刀を構えた

「・・・何か来るぞ」
「怖い」
「!伏せろぉ!!」

青年の刀が青白く光り、振り下ろした瞬間、カッターのような波動が放たれ、男の装備を切り刻む

「ぺにゃん!?」
「山本おおおおぉぉぉぉ!!」

その男の服と銃がバラバラに切り刻まれ、下半身以外の服が完全に消滅し・・・ショックで気絶した

「嘘だろ・・・!?」
「・・・」
「クソ!近寄るんじゃねえ!離れろ!」

銃口を青年に向けた男だが、全身が震えているのは見て明らかだった

「あ、あ、あああああああああ!!」

絶叫しながら銃を放つが・・・目の前にはあの波動があった

「ん・・・っと」

青年は気絶した五人組の男を縄で縛り、インカムに手を添えた

「こちら飛鳥、敵の制圧完了、気絶した相手をこれから第三支部に送る、ナナシ、こっちに来てくれ」
「了解しましたー!」

飛鳥と呼ばれる青年のインカムから元気な声が聞こえ、その後すぐにパタパタと少女が玄関からビル内に入ってくる

「どうもです~」
「あぁ」

ナナシはその気絶した五人組を縛った縄を引っ張っている、華奢な女の子にしては筋力があり、一人で十分そうだ

「んしょ、んしょっと・・・」


飛鳥が刀を背中の鞘にしまい、近くの壁などを調べていた

「先輩、まさかこんな作戦が通用するなんて、びっくりですね」
「・・・ナナシの発案だろ」
「そうですけど・・・」

袋の中にスモークグレネード、魔石が入った袋と偽り、煙で混乱させる間に鎮圧する・・・シンプルな作戦

「先輩、この人たちは予定通り吐いてくれるんでしょうか?」
「どうだろうな・・・ま、吐かせるまで尋問を続けるつもりだ」
「鬼ですね・・・」
「そうか?」

エンジェル――近頃この街、フェルム・アストラーテで突如現れては魔物を解き放ち混乱させる謎に満ちたテロ組織。魔物を召喚させ、その後すぐさま消えていく、わかるのは魔物を召喚するほどの力があるだけ

「ふぅ・・・全員乗せれました、行きましょう」
「わかった」

二人は車に乗り、音楽を流しながら夜の街を走っていく―――

「・・・ふわぁ」

空色の瞳をしたナナシが、眠そうにあくびをした、やけにまぶしい街灯が車を照らすたび、少しだけナナシの目が細くなる

「着くまでに少しかかる、寝てていいぞ」
「わかりました、おやすみなさい・・・」

黒いバンが、小さい音を立てて道路を一つ寂しく走っていった





・・・




一方、その車が通りすぎた廃ビルの上で、二つの黒い影があった

「・・・あの人達、捕まっちゃったね」
「追うのはこれだけにしとく、そっちの方がおもしろくなりそうだ」
「・・・」

小さい影と、大きい影、その二つが夜の世界で、風に揺られていた