重心を前傾させ、片足を少し上げ、腕を振ろうとしていた。ここが異世界であっても、好奇心には勝てないのだ。
涼太に全てを見透かされており、彼は少しだけ不貞腐れていた。頬を膨らませ、両手を後ろで組んでいた。
涼太はその様子を見て、呆れるのと同時に妙な感覚に陥った。彼のことが異様に、可愛く見えたのだ。
「お前が、ベッドで寝ろ。俺は床で寝るから」
「こんなとこで、風邪引いても知らねーからな。病院に行けなくて、悪化したらどうすんだっ!」
「分かったよ。そんな興奮すんな」
「ふんっ」
冷静になった二人は、とある事実に気がついた。それぞれに机や本棚があるが、肝心なものが一つしかなかった。
部屋の中央には、大きなベッドが鎮座していた。陽向は顔を真っ赤にて、見ないようにしていた。
涼太はそれを見つめ、意を決したように話しかけた。部屋の外から不気味な声や這いずる音が聞こえる。
陽向は顔色を悪くし、涼太を見つめる。耳を真っ赤にして、頬を掻きながらそれっぽいことを告げた。
涼太は怒る陽向を宥め、静かにベッドに寝そべった。陽向は満足そうに、その隣に寝た。
――俺と密着するの、嫌なのかよ……はあ、前途多難ってやつだな。
疲れが溜まっていたのか、陽向は静かに寝息を立てていた。二人の肩や足が触れ合い、涼太は心臓は破裂しそうなぐらいに高鳴った。
陽向は背を向けて寝ており、静かに体が動いていた。涼太はその背中の丸みや、シーツを握る指先を見つめる。
「……やっぱ、エロいよな」
「……っつ!」
「ヤバっ……起こしたか」
「すう……んー」
「ふう……よかった」
涼太は横で眠る陽向の左耳を見つめ、ボソッと呟いた。すると陽向の声が聞こえてきたため、涼太は慌ててしまう。
しかし直ぐに寝息が聞こえてきたため、ホッと胸を撫で下ろした。そこで中学の時のことを思い出していた。
三年の時に、涼太は三日付き合った彼女に言われピアスを開けた。陽向は対抗意識からか、涼太に開けるように頼んできた。
冗談で左耳のホクロをエロいと告げ、陽向に睨まれてしまった。しかしその時、涼太は本気で告げていた。
まるで暗示をかけるかのように、その時から陽向を兄弟として扱うようになった。
二人はいつも一緒におり、無くてはいけない存在になった。陽向は自分が思っているよりずっと、モテてしまう。
涼太が付き合ってきた彼女は全員、陽向に気があった。そのため自分を好きになるように、仕向けていた。
自分でも最低だとは思っていたが、他の人に取られたくなかった。本当は分かっていたのだ。
自分の陽向に対する気持ちが、幼なじみや兄弟のそれとは違っていることに。
何故ならば、陽向のピアスを開けた時。瞳に涙を浮かべ、体を震わせていた。
耳を赤くし、涼太を見つめていた。夕日のせいで、情緒的に見えた。
自分の刻み込んだ印で、一喜一憂している。その姿を見て、喉の奥が焼け付くように乾いたからだ。
「そういえば、どうして疎遠になったんだ」
「……別に。同じクラスになってないからだろ」
「そっか」
二人は中学になってから、一度も同じクラスになっていなかった。涼太と佐伯は、三年間同じだった。
涼太は自分の感情を悟られないように、陽向に質問した。すると陽向は少しだけ悲しそうに、いつも通りの笑顔で返した。
涼太はその言葉の意味を理解できずに、何も言えなかった。しかし触れてはいけないのだと思い、それ以上は聞かなかった。
「あの時、お前がどんな顔でピアスの針を待っていたか……今なら分かる気がする」
「んっ!」
「あっ、ヤベッ」
「りょ……た」
「くう……こいつ、現実じゃなければ……もっと素直に可愛がれるのな」
涼太は陽向の左耳を食い入るように見つめ、ボソッと呟いた。少し起き上がり、陽向の鼻を摘む。
陽向の体がビクッとして、涼太は慌てている様子だ。しかし直ぐに寝息が聞こえてきて、涼太の名前を呼んでいた。
その様子を見つめ、一気に顔が真っ赤になっていた。全身が沸騰するような感覚に陥り、陽向の頭を撫でた。
涼太は優しく微笑み、陽向に背を向けて寝ることにした。寝息が聞こえてくると、静かに陽向は目を開けた。
――お前がいるから、正気を保っていられる。一人だったら、壊れていただろうな。恥ずかしいし、チョーシに乗るから言わないでおくが。
陽向は恥ずかしいから、寝たふりをしていただけだった。体を起こし、涼太の寝顔を見つめる。
嬉しそうに、幸せそうな笑顔を浮かべている。その表情を見つめ、微笑みながら泣いていた。
涼太の可愛いは、兄弟のことなのだと勘違いしていた。胸の奥が、張り裂けそうになった。
涼太の背中に静かに抱きついて、深呼吸をした。今度こそ、静かに眠りについた。
「……一つしかないベッドで押し問答の末、結局二人で寝る。三次元のBLにおいても……これほど古典的で、お約束なイベントはないよ……あー、耳栓してて良かった。供給が過多すぎて、尊死するかと思った」
隣の部屋から、佐伯が一人呟いた。二人の様子をモニターで確認していたが、メガネの奥の瞳はギラギラしていた。
恍惚とした表情を浮かべ、幸せそうに微笑んでいる。その隣では、上半身裸の彼氏が寝ていた。
「ひ〜な〜たっ! ふふっ」
「……きしょ」
「そんなこと言わずに〜頑張ろうぜ〜」
「だあ! 朝からうるせー!」
翌朝、陽向が目を覚ますと上機嫌の涼太に顔を覗かれていた。目が悪い陽向は、睨むように見つめる。
反対に涼太は寝起きから、清々しい顔を浮かべていた。陽向は本気で、気持ちが悪いと思った。
陽向が上半身を起こすと、涼太は抱きついてきた。悪態をつかれても、満面の笑みを浮かべていた。
陽向は流石に、キレてしまった。涼太の顔をグイッと力強く押したが、涼太は満面の笑みを浮かべていた。
――変な奴。
涼太をうっとおしいと感じても、本気で拒むことはできない。胸の高鳴りを悟られないようにするのが、精一杯だった。
涼太に全てを見透かされており、彼は少しだけ不貞腐れていた。頬を膨らませ、両手を後ろで組んでいた。
涼太はその様子を見て、呆れるのと同時に妙な感覚に陥った。彼のことが異様に、可愛く見えたのだ。
「お前が、ベッドで寝ろ。俺は床で寝るから」
「こんなとこで、風邪引いても知らねーからな。病院に行けなくて、悪化したらどうすんだっ!」
「分かったよ。そんな興奮すんな」
「ふんっ」
冷静になった二人は、とある事実に気がついた。それぞれに机や本棚があるが、肝心なものが一つしかなかった。
部屋の中央には、大きなベッドが鎮座していた。陽向は顔を真っ赤にて、見ないようにしていた。
涼太はそれを見つめ、意を決したように話しかけた。部屋の外から不気味な声や這いずる音が聞こえる。
陽向は顔色を悪くし、涼太を見つめる。耳を真っ赤にして、頬を掻きながらそれっぽいことを告げた。
涼太は怒る陽向を宥め、静かにベッドに寝そべった。陽向は満足そうに、その隣に寝た。
――俺と密着するの、嫌なのかよ……はあ、前途多難ってやつだな。
疲れが溜まっていたのか、陽向は静かに寝息を立てていた。二人の肩や足が触れ合い、涼太は心臓は破裂しそうなぐらいに高鳴った。
陽向は背を向けて寝ており、静かに体が動いていた。涼太はその背中の丸みや、シーツを握る指先を見つめる。
「……やっぱ、エロいよな」
「……っつ!」
「ヤバっ……起こしたか」
「すう……んー」
「ふう……よかった」
涼太は横で眠る陽向の左耳を見つめ、ボソッと呟いた。すると陽向の声が聞こえてきたため、涼太は慌ててしまう。
しかし直ぐに寝息が聞こえてきたため、ホッと胸を撫で下ろした。そこで中学の時のことを思い出していた。
三年の時に、涼太は三日付き合った彼女に言われピアスを開けた。陽向は対抗意識からか、涼太に開けるように頼んできた。
冗談で左耳のホクロをエロいと告げ、陽向に睨まれてしまった。しかしその時、涼太は本気で告げていた。
まるで暗示をかけるかのように、その時から陽向を兄弟として扱うようになった。
二人はいつも一緒におり、無くてはいけない存在になった。陽向は自分が思っているよりずっと、モテてしまう。
涼太が付き合ってきた彼女は全員、陽向に気があった。そのため自分を好きになるように、仕向けていた。
自分でも最低だとは思っていたが、他の人に取られたくなかった。本当は分かっていたのだ。
自分の陽向に対する気持ちが、幼なじみや兄弟のそれとは違っていることに。
何故ならば、陽向のピアスを開けた時。瞳に涙を浮かべ、体を震わせていた。
耳を赤くし、涼太を見つめていた。夕日のせいで、情緒的に見えた。
自分の刻み込んだ印で、一喜一憂している。その姿を見て、喉の奥が焼け付くように乾いたからだ。
「そういえば、どうして疎遠になったんだ」
「……別に。同じクラスになってないからだろ」
「そっか」
二人は中学になってから、一度も同じクラスになっていなかった。涼太と佐伯は、三年間同じだった。
涼太は自分の感情を悟られないように、陽向に質問した。すると陽向は少しだけ悲しそうに、いつも通りの笑顔で返した。
涼太はその言葉の意味を理解できずに、何も言えなかった。しかし触れてはいけないのだと思い、それ以上は聞かなかった。
「あの時、お前がどんな顔でピアスの針を待っていたか……今なら分かる気がする」
「んっ!」
「あっ、ヤベッ」
「りょ……た」
「くう……こいつ、現実じゃなければ……もっと素直に可愛がれるのな」
涼太は陽向の左耳を食い入るように見つめ、ボソッと呟いた。少し起き上がり、陽向の鼻を摘む。
陽向の体がビクッとして、涼太は慌てている様子だ。しかし直ぐに寝息が聞こえてきて、涼太の名前を呼んでいた。
その様子を見つめ、一気に顔が真っ赤になっていた。全身が沸騰するような感覚に陥り、陽向の頭を撫でた。
涼太は優しく微笑み、陽向に背を向けて寝ることにした。寝息が聞こえてくると、静かに陽向は目を開けた。
――お前がいるから、正気を保っていられる。一人だったら、壊れていただろうな。恥ずかしいし、チョーシに乗るから言わないでおくが。
陽向は恥ずかしいから、寝たふりをしていただけだった。体を起こし、涼太の寝顔を見つめる。
嬉しそうに、幸せそうな笑顔を浮かべている。その表情を見つめ、微笑みながら泣いていた。
涼太の可愛いは、兄弟のことなのだと勘違いしていた。胸の奥が、張り裂けそうになった。
涼太の背中に静かに抱きついて、深呼吸をした。今度こそ、静かに眠りについた。
「……一つしかないベッドで押し問答の末、結局二人で寝る。三次元のBLにおいても……これほど古典的で、お約束なイベントはないよ……あー、耳栓してて良かった。供給が過多すぎて、尊死するかと思った」
隣の部屋から、佐伯が一人呟いた。二人の様子をモニターで確認していたが、メガネの奥の瞳はギラギラしていた。
恍惚とした表情を浮かべ、幸せそうに微笑んでいる。その隣では、上半身裸の彼氏が寝ていた。
「ひ〜な〜たっ! ふふっ」
「……きしょ」
「そんなこと言わずに〜頑張ろうぜ〜」
「だあ! 朝からうるせー!」
翌朝、陽向が目を覚ますと上機嫌の涼太に顔を覗かれていた。目が悪い陽向は、睨むように見つめる。
反対に涼太は寝起きから、清々しい顔を浮かべていた。陽向は本気で、気持ちが悪いと思った。
陽向が上半身を起こすと、涼太は抱きついてきた。悪態をつかれても、満面の笑みを浮かべていた。
陽向は流石に、キレてしまった。涼太の顔をグイッと力強く押したが、涼太は満面の笑みを浮かべていた。
――変な奴。
涼太をうっとおしいと感じても、本気で拒むことはできない。胸の高鳴りを悟られないようにするのが、精一杯だった。

