涼太が少し痛いと感じるぐらいに、力強かった。声は震えているし、顔色が少し優れなかった。
涼太はそんな様子を見て、優しそうにしている。掴まれていない方の腕は、少しだけ震えていた。
階段には灯りがなく、窓からの月明かりのみだった。そのためか、異様に怖く映っていた。
涼太は陽向の頭を撫で、それが少し冷たかった。それが火照ったうなじに触れる度、心臓が跳ね上がるような錯覚に陥った。
逆に陽向の体温は高く、指先まで熱かった。歩く暖房器具のようで、腕からは体温がダイレクトに伝わっていた。
そのせいか、涼太の冷静な理性をじりじりと焼き切っていく。怖がる陽向を、涼太は熱い眼差しで見つめていた。
「ふう〜無事に到着」
「意外と簡単だったな」
「怖くて、ちびった癖によく言うよ」
「ちびってねーよ! 漏らしそうにはなったが」
「意外と素直だな」
「疲れただろ。汗を流して、さらに汗を流そう」
「何言ってんだ……こいつ」
「深く考えないほうがいいと思う」
陽向は涼太にしがみつきながら、屋上へと到着した。陽向は何もないと分かると、偉そうにしていた。
両手を腰に当て、大きな口を叩いている。涼太はホッと胸を撫で下ろし、陽向を揶揄っていた。
涼太がおそるおそる扉を開けると、そこには佐伯が立っていた。二人を見つめ、無機質な笑みを浮かべていた。
意味深なことを言っており、二人は引いていた。その様子を見つめ、佐伯は嬉しそうに微笑んでいた。
「これ! 楽しいぞ! お前もやってみろ!」
「……ぜっ! …………たいっ! にっ! 嫌だ!」
「そこまで強調しなくてもな〜」
「てめーは、呑気すぎる!」
「まあ、ミッションもひとまず終わったし? まあ、気張っていてもしゃーないだろっ」
「……ったく、人の気も知らねーで」
校舎から出ると、二人は校門に向かった。どうして早く来なかったのかと、二人はため息をついた。
涼太は塀を飛び越えたが、空から降るように元の校庭に着地してしまう。涼太は楽しむが、陽向は怖がっていた。
涼太は面白半分に陽向を揶揄うが、陽向は顔を真っ青にして怯えている。その様子を見つめ、涼太は不思議な感覚に陥った。
彼を見つめ、頬を染めていた。怯え方が子鹿のように思えて、後頭部を掻いた。
「さてと……あの建物なんだろうな〜」
「あれは、寮だよ。別名、愛の巣とも言う」
「どわ! いきなり出てきて、何言ってんだ!」
「そんなことよりも、早く行った方がいいよ。この天国から、早く出たいんでしょ。どの道、ここは全寮制だしね」
陽向は涼太に、的確なツッコみをされた。涼太は呆れたように、頭を抱えていた。
横を向くと、大きな建物が目に入ってきた。そのため彼は、適当に流した。
数年前に新しくされた校舎には、不釣合いの古びた洋館だった。現実にあったはずのプレハブの合宿所は消え、代わりに鎮座していた。
蔦の絡まる外壁は、まるで獲物を締め上げる血管のように見えた。陽向は思わず、涼太の腕を強く掴んだ。
そこに突如、佐伯が顔を出した。彼氏はいないようで、またもや無機質な様子だった。
目は笑っていないが、口調は穏やかだった。メガネをクイっと上げており、キラッと光っていた。
それが返って不気味に見えて、二人は固まってしまう。佐伯の様子だけでなく、いつの間にか全寮制になっていた。
学校の敷地外は、黒い靄がかかったようになっていた。そのため、二人はここが異世界だと認めざるを得なかった。
「ベッドルームか」
「待て……何か聞こえないか」
「あっ! んっ」
「……行こう」
「だな……はあ」
二人は佐伯に案内され、寮へとやってきた。そこには、無数のベッドルームとお風呂まで準備されていた。
陽向は疑いもせずに、扉を開けようとした。しかし涼太は異様さに気がつき、彼の手を止めた。
彼は不思議そうに、涼太の顔を見つめる。中からは、男の甘美な声が聞こえてきた。
思春期の二人には、些か刺激が強すぎた。顔を真っ赤にして、そそくさとその場を後にした。
案内してくれている佐伯の表情は、何一つ変わらなかった。寮の中を、ひと通り案内してくれた。
その間、先程の出来事については触れなかった。終始顔は真っ赤で、お互いの顔を見ることはできなかった。
「……はあ」
「……なんだよ。そんなに不安なら、一緒に入るか?」
「おまっ! そんなことしたら……あの、何とかっていう化け物の思う壷だろうが!」
「……観察する影な……覚えとけよ」
「うるさいっ! 影だかハゲだか知らねーけど、そんな変態の餌食になるのは御免だっ!」
シャワー室にやってきた。個室のお風呂もあるようだが、流石にハードルが高すぎたようだ。
ガラス張りで脱衣所との仕切りが薄く、丸見えになっている。陽向はその様子を見つめ、静かにため息をついた。
ミッションでかいた嫌な汗を流せるのはありがたいが、どこか落ち着かない。
涼太は脱衣所の鏡の前でシャツのボタンを外し、背後で固まっている陽向を鏡越しに一瞥した。
いつもの意地悪な笑みを浮かべた、ただの冗談のつもりだった。だが、陽向は顔を真っ赤にして跳ね上がる。
涼太は呆れたように肩をすくめたが、内心では自分の心臓がうるさく跳ねるのを感じていた。
真っ赤な耳を隠すように顔を背ける陽向。その首筋に残る汗の滴が、脱衣所の淡い灯りに照らされた。
お互いの裸など見飽きているはずなのに、心臓の鼓動が鳴り止まない。涼太はそれを穴が空くほどに見つめ、網膜に焼き付いた。
「はあ……あいつ、あんなこと平気で言いやがって……心臓に悪いんだよ」
陽向は一人、シャワーを浴びていた。ボソッと呟いたが、シャワーの音でかき消された。
顔を真っ赤にし、声を震わせていた。いつもの威勢はなく、年相応の好きな人を思う少年の姿だった。
「……一緒に浴びるなんて、正気かよ俺。断られて助かったわ」
一方、その頃の涼太は……自分の発言を悔いていた。シャワーを浴びながら、隣の個室の陽向のことを考えていた。
揶揄うことが目的だったが、完全に墓穴を掘ってしまった。頬や耳、肩などを真っ赤に染めていた。
「……おい、勝手に動き回るなよ」
「わーてるよっ! 子供じゃねーよ!」
「……言いたいことはあるが、まあいいや」
佐伯に案内され、二人は寮の部屋に入った。最早、一緒の部屋だったことにツッコむ気すら起きなかった。
涼太は陽向が動き回る前に、先手を打った。彼は悪態をついたが、走り回る気満々だった。
涼太はそんな様子を見て、優しそうにしている。掴まれていない方の腕は、少しだけ震えていた。
階段には灯りがなく、窓からの月明かりのみだった。そのためか、異様に怖く映っていた。
涼太は陽向の頭を撫で、それが少し冷たかった。それが火照ったうなじに触れる度、心臓が跳ね上がるような錯覚に陥った。
逆に陽向の体温は高く、指先まで熱かった。歩く暖房器具のようで、腕からは体温がダイレクトに伝わっていた。
そのせいか、涼太の冷静な理性をじりじりと焼き切っていく。怖がる陽向を、涼太は熱い眼差しで見つめていた。
「ふう〜無事に到着」
「意外と簡単だったな」
「怖くて、ちびった癖によく言うよ」
「ちびってねーよ! 漏らしそうにはなったが」
「意外と素直だな」
「疲れただろ。汗を流して、さらに汗を流そう」
「何言ってんだ……こいつ」
「深く考えないほうがいいと思う」
陽向は涼太にしがみつきながら、屋上へと到着した。陽向は何もないと分かると、偉そうにしていた。
両手を腰に当て、大きな口を叩いている。涼太はホッと胸を撫で下ろし、陽向を揶揄っていた。
涼太がおそるおそる扉を開けると、そこには佐伯が立っていた。二人を見つめ、無機質な笑みを浮かべていた。
意味深なことを言っており、二人は引いていた。その様子を見つめ、佐伯は嬉しそうに微笑んでいた。
「これ! 楽しいぞ! お前もやってみろ!」
「……ぜっ! …………たいっ! にっ! 嫌だ!」
「そこまで強調しなくてもな〜」
「てめーは、呑気すぎる!」
「まあ、ミッションもひとまず終わったし? まあ、気張っていてもしゃーないだろっ」
「……ったく、人の気も知らねーで」
校舎から出ると、二人は校門に向かった。どうして早く来なかったのかと、二人はため息をついた。
涼太は塀を飛び越えたが、空から降るように元の校庭に着地してしまう。涼太は楽しむが、陽向は怖がっていた。
涼太は面白半分に陽向を揶揄うが、陽向は顔を真っ青にして怯えている。その様子を見つめ、涼太は不思議な感覚に陥った。
彼を見つめ、頬を染めていた。怯え方が子鹿のように思えて、後頭部を掻いた。
「さてと……あの建物なんだろうな〜」
「あれは、寮だよ。別名、愛の巣とも言う」
「どわ! いきなり出てきて、何言ってんだ!」
「そんなことよりも、早く行った方がいいよ。この天国から、早く出たいんでしょ。どの道、ここは全寮制だしね」
陽向は涼太に、的確なツッコみをされた。涼太は呆れたように、頭を抱えていた。
横を向くと、大きな建物が目に入ってきた。そのため彼は、適当に流した。
数年前に新しくされた校舎には、不釣合いの古びた洋館だった。現実にあったはずのプレハブの合宿所は消え、代わりに鎮座していた。
蔦の絡まる外壁は、まるで獲物を締め上げる血管のように見えた。陽向は思わず、涼太の腕を強く掴んだ。
そこに突如、佐伯が顔を出した。彼氏はいないようで、またもや無機質な様子だった。
目は笑っていないが、口調は穏やかだった。メガネをクイっと上げており、キラッと光っていた。
それが返って不気味に見えて、二人は固まってしまう。佐伯の様子だけでなく、いつの間にか全寮制になっていた。
学校の敷地外は、黒い靄がかかったようになっていた。そのため、二人はここが異世界だと認めざるを得なかった。
「ベッドルームか」
「待て……何か聞こえないか」
「あっ! んっ」
「……行こう」
「だな……はあ」
二人は佐伯に案内され、寮へとやってきた。そこには、無数のベッドルームとお風呂まで準備されていた。
陽向は疑いもせずに、扉を開けようとした。しかし涼太は異様さに気がつき、彼の手を止めた。
彼は不思議そうに、涼太の顔を見つめる。中からは、男の甘美な声が聞こえてきた。
思春期の二人には、些か刺激が強すぎた。顔を真っ赤にして、そそくさとその場を後にした。
案内してくれている佐伯の表情は、何一つ変わらなかった。寮の中を、ひと通り案内してくれた。
その間、先程の出来事については触れなかった。終始顔は真っ赤で、お互いの顔を見ることはできなかった。
「……はあ」
「……なんだよ。そんなに不安なら、一緒に入るか?」
「おまっ! そんなことしたら……あの、何とかっていう化け物の思う壷だろうが!」
「……観察する影な……覚えとけよ」
「うるさいっ! 影だかハゲだか知らねーけど、そんな変態の餌食になるのは御免だっ!」
シャワー室にやってきた。個室のお風呂もあるようだが、流石にハードルが高すぎたようだ。
ガラス張りで脱衣所との仕切りが薄く、丸見えになっている。陽向はその様子を見つめ、静かにため息をついた。
ミッションでかいた嫌な汗を流せるのはありがたいが、どこか落ち着かない。
涼太は脱衣所の鏡の前でシャツのボタンを外し、背後で固まっている陽向を鏡越しに一瞥した。
いつもの意地悪な笑みを浮かべた、ただの冗談のつもりだった。だが、陽向は顔を真っ赤にして跳ね上がる。
涼太は呆れたように肩をすくめたが、内心では自分の心臓がうるさく跳ねるのを感じていた。
真っ赤な耳を隠すように顔を背ける陽向。その首筋に残る汗の滴が、脱衣所の淡い灯りに照らされた。
お互いの裸など見飽きているはずなのに、心臓の鼓動が鳴り止まない。涼太はそれを穴が空くほどに見つめ、網膜に焼き付いた。
「はあ……あいつ、あんなこと平気で言いやがって……心臓に悪いんだよ」
陽向は一人、シャワーを浴びていた。ボソッと呟いたが、シャワーの音でかき消された。
顔を真っ赤にし、声を震わせていた。いつもの威勢はなく、年相応の好きな人を思う少年の姿だった。
「……一緒に浴びるなんて、正気かよ俺。断られて助かったわ」
一方、その頃の涼太は……自分の発言を悔いていた。シャワーを浴びながら、隣の個室の陽向のことを考えていた。
揶揄うことが目的だったが、完全に墓穴を掘ってしまった。頬や耳、肩などを真っ赤に染めていた。
「……おい、勝手に動き回るなよ」
「わーてるよっ! 子供じゃねーよ!」
「……言いたいことはあるが、まあいいや」
佐伯に案内され、二人は寮の部屋に入った。最早、一緒の部屋だったことにツッコむ気すら起きなかった。
涼太は陽向が動き回る前に、先手を打った。彼は悪態をついたが、走り回る気満々だった。

