誘われて事故物件に暮らしはじめました。

でも今日ここにきたのは、これを頼むためで……。
僕はソファ席の横に置いておいたトートバッグからサイン色紙とマジックを取り出した。
「サインが欲しいんだ」
思い切ってそういうとアキトはキョトンとした表情になってテーブルの上のサイン色紙を見つめた。
真っ白な色紙が目に眩しい。
「えっと……俺のサイン?」
「そ、そう。母親が大ファンなんだ」
依頼は受けない上にサインが欲しいだなんて都合がいいことばかり言っていることは僕だってわかっている。
だけど今朝僕を送り出す母親が並々ならぬ期待を寄せていることがわかっているから、断ることができなかったのだ。
「あぁ、そうなんだ。もちろんいいよ」