誘われて事故物件に暮らしはじめました。

トモの布団を少しめくって額に手を当ててみると、まだ熱が高いままだ。
苦しそうな呼吸をしているトモの頭の下に氷枕を置いて、また布団をかぶせた。
明日には少しでもよくなっているといいけれど。
僕はそう願いながら自分のベッドへと戻ったのだった。

黒いもの

「嘘つき」
そんな声がして振り向いた。
だけど周りは暗闇に包まれていて声の主を目視することはできなかった。
「嘘つき」
また声がした。
今度は僕の右側からだ。
すぐに顔を向けたけれど、やっぱりなにも見えない。
自分の手に視線を落としてみたけれど、それも見えないほどの暗闇だ。
僕の呼吸音しか聞こえてこない静寂の暗闇。