「ね~え、お父さん。あの人の葬式は終わったの?」
布団の中から弱々しい声を出しているのは、女房の佐智子だ。
佐智子は、俺と同い年なのに、あの一件で一気に老け込んでしまった。
十歳は年取ったように見える。それも一晩で。黒い部分の残っていない、真っ白な髪は、細く、薄くなった。しわだらけの顔も、特殊メイクみたいだ。体も、力が入らなくて、一人では起き上がれない。
毎日、そこら辺に出かけてはお茶のみしていたのが信じられない、別人の姿だ。これで55歳――早生まれだから――とは、ただただ衝撃だ。
――ずっと同い年、と思っていたのに、体も心も年の取り方は違うんだな。
誕生日の過ぎた俺は56歳になったが、まだまだ現役で仕事してる。毎日二十分、徒歩で通勤してるから、体も丈夫だ。「退職したら、一緒に旅行しようね」なんて話してたのに。とても実現できそうにない。
