放課後、先輩のことが気になって、俺は手当たり次第に先輩がいそうな場所を探す。教室には行きづらいから、二年生が使う階段下を通るふりをしながら先輩が降りてくるのを待ったけど、なかなか降りてこない。もしや、もう帰ってしまったのでは? と思って靴を確認しにいくと、先輩の靴箱にはすでに上履きがきちんと並んで置かれていた。
「帰るのはっや!」
思わず呟いてしまう。
「やっぱりもう帰ったかー!」
突然、後ろから俺と同じようにガッカリしたような声がするから、驚いて振り返った。
立っていたのは、白衣姿のボサボサ長髪に黒縁メガネの先生。手になにかプリントのような紙を持って愕然としている。
「あれ? もしかして君は一年生の千羽くんじゃないか?」
「え! あ、はい」
俯いた顔、長い前髪で表情が見えなかったけど、パッと顔を上げて髪をかき上げると、露わになった顔は整いすぎていて、間違いなくイケメンだ。怪しい雰囲気から一変して、妖しさを感じる。
「君、確か学生寮に入っていたよね?」
「はい、入っています、けど」
かき上げた手を離すと、前髪はまた顔を隠して表情が見えなくなった。
「これを矢橋くんに渡してくれないかな」
「……え」
先生は俺に一枚のプリントを差し出してくる。先輩の忘れ物かと思って、すぐに受け取ろうと手を出しかけて、動きを止めた。
視線の先。先生の手元にあるプリントは、たぶんというか、絶対に学校の勉強で使うものではない。
紙いっぱいに、よくわからない文字が並ぶ。そして、円の中にも数字のような摩訶不思議な文字。とっさに、昨日矢橋先輩の部屋で見た掛け軸を思い出す。それともまた違うこの謎の文字や数字らしきものが描かれた紙。
俺は受け取ることを拒むように手が動かない。
「あ、大丈夫だよー! ぜんっぜん怪しいものじゃないから」
いや、陽気に陰気な姿で言うから、思い切り怪しいんですけど!
「今の彼にはこれを持っていてもらわないと、ちょっと危険な気がするんだよね。今朝会った時からなにか気配を感じてしまって」
「え……先生も、視えるんですか!?」
「ん?」
先輩と同じように、霊とかが視える人なのかと、怖いけど聞いてしまう。
「いや? まったく視えないよ」
ケラケラと笑っているから、じゃあこのプリントはなんなんだと言いたくなる。
「でもね、感じるんだ。なにか良くない気配を……」
ずいっと顔を寄せてきて、先生が低く暗い声で言うから、背筋がピキンと凍る気がした。
「君も気をつけな。矢橋くんいろんなの引き連れてるから。僕はそんな彼の助けになってあげたい、ただのおせっかい教師さ」
フッと笑って、先生は俺の手にプリントを持たせた。
「頼むよー、相棒」
白衣を翻して後ろ向きで手を振る。
颯爽と行ってしまう背中をいつまでも見送って、俺は手元に視線を落とした。
不可解な文字の羅列。
なんなんだ、これは。
持っているのも怖くなって四つ折りにする。とにかく一刻も早くこれを先輩に渡さなければと、外に飛び出した。
「帰るのはっや!」
思わず呟いてしまう。
「やっぱりもう帰ったかー!」
突然、後ろから俺と同じようにガッカリしたような声がするから、驚いて振り返った。
立っていたのは、白衣姿のボサボサ長髪に黒縁メガネの先生。手になにかプリントのような紙を持って愕然としている。
「あれ? もしかして君は一年生の千羽くんじゃないか?」
「え! あ、はい」
俯いた顔、長い前髪で表情が見えなかったけど、パッと顔を上げて髪をかき上げると、露わになった顔は整いすぎていて、間違いなくイケメンだ。怪しい雰囲気から一変して、妖しさを感じる。
「君、確か学生寮に入っていたよね?」
「はい、入っています、けど」
かき上げた手を離すと、前髪はまた顔を隠して表情が見えなくなった。
「これを矢橋くんに渡してくれないかな」
「……え」
先生は俺に一枚のプリントを差し出してくる。先輩の忘れ物かと思って、すぐに受け取ろうと手を出しかけて、動きを止めた。
視線の先。先生の手元にあるプリントは、たぶんというか、絶対に学校の勉強で使うものではない。
紙いっぱいに、よくわからない文字が並ぶ。そして、円の中にも数字のような摩訶不思議な文字。とっさに、昨日矢橋先輩の部屋で見た掛け軸を思い出す。それともまた違うこの謎の文字や数字らしきものが描かれた紙。
俺は受け取ることを拒むように手が動かない。
「あ、大丈夫だよー! ぜんっぜん怪しいものじゃないから」
いや、陽気に陰気な姿で言うから、思い切り怪しいんですけど!
「今の彼にはこれを持っていてもらわないと、ちょっと危険な気がするんだよね。今朝会った時からなにか気配を感じてしまって」
「え……先生も、視えるんですか!?」
「ん?」
先輩と同じように、霊とかが視える人なのかと、怖いけど聞いてしまう。
「いや? まったく視えないよ」
ケラケラと笑っているから、じゃあこのプリントはなんなんだと言いたくなる。
「でもね、感じるんだ。なにか良くない気配を……」
ずいっと顔を寄せてきて、先生が低く暗い声で言うから、背筋がピキンと凍る気がした。
「君も気をつけな。矢橋くんいろんなの引き連れてるから。僕はそんな彼の助けになってあげたい、ただのおせっかい教師さ」
フッと笑って、先生は俺の手にプリントを持たせた。
「頼むよー、相棒」
白衣を翻して後ろ向きで手を振る。
颯爽と行ってしまう背中をいつまでも見送って、俺は手元に視線を落とした。
不可解な文字の羅列。
なんなんだ、これは。
持っているのも怖くなって四つ折りにする。とにかく一刻も早くこれを先輩に渡さなければと、外に飛び出した。



