「うちの母から届いた食材で美味しいもの作って食べましょう」
届いた荷物の中には、母が作ってくれた煮物や簡単に作れるスープや麺類。ばあちゃんの育てた野菜や米も入っている。
中身を取り出していると、矢橋先輩が腕まくりをして隣に立った。
「俺も手伝うよ」
シンクで手を洗って、にこやかな笑顔を向ける矢橋先輩が眩しい。俺は嬉しさについ大きな声で頭を下げた。
「よろしくお願いしますっ!」
「うん」
あははと笑いながら、二人でカレーを作ることに決めてさっそく料理に取り掛かった。
ばあちゃんの畑の特大じゃがいもとにんじん。玉ねぎを切るけど、目に染みて涙が出てくる。そんな俺を見て、矢橋先輩は涙が出ない技があると、水に潜るみたいに息を吸い込み、止めた。
そして、そのままの状態で勢いよく玉ねぎを切っていく。息を止めているから、玉ねぎから飛び出るエキスを吸い込むことがなく、涙が出ないらしい。
でも、豚肉を切り、玉ねぎと一緒に鍋で炒めているうちに、立ち上った湯気が目に染みてきた。結局、矢橋先輩までグスグスと涙目になってしまっているから、おかしくて笑ってしまった。
「ずっと息止めてるとかマジ無理。泣かないで玉ねぎと戦う方法が知りたい!」
真面目に玉ねぎを睨んでいるから、俺はまた矢橋先輩の面白い一面が見れて嬉しくなった。
とっぷり日は暮れて、ご飯が炊き上がる。カレーもいい感じに煮込まれた。
お皿にご飯をよそって、完成したカレールーをかける。
部屋に置かれた小さなローテーブルに向かい合って腰を下ろすと、スプーンを手に持ち目を合わせた。
「いただきます」
「いただきます」
俺が言うのに続いて、矢橋先輩も言う。そして、ひと口掬って食べた。
「美味っ!!」
安心したのと、お腹が減っていたことを思い出したのとで、二人で食べる勢いが止まらない。
あっという間に完食して、おかわりをとりに立ち上がった。
「矢橋先輩もおかわり要ります?」
「うん、お願い」
きれいに食べたお皿を渡してくれる矢橋先輩の目が、潤んで見えた。
「ごめん。ほんと、美味しくて。嬉しくて。俺、今までずっと一人でいたから、こんなふうにして笑ってご飯食べるとか、めちゃくちゃ嬉しくて……」
矢橋先輩のお皿にご飯をよそい、ルーをかける。そして、そっと先輩の前に差し出した。
「俺がこれからも先輩のそばにいますから。一緒に学校行くし、ご飯も食べるし、なんならもうこの部屋で一緒に住んだっていいんですからね」
「……千羽くん」
俺は、矢橋先輩に憧れて桜花高校に入った。目的は矢橋先輩だ。それ以外にはない。やりたい部活もないし、勉強もそれなり。
矢橋先輩みたいになりたいから、矢橋先輩を目標にして、前向きに高校生活を頑張っていきたいと思っている。
「じゃあ、お言葉に甘えて、これからはずっと一緒にいてもいい?」
カレー皿を受け取ると、矢橋先輩は笑顔になる。
「ご飯や家事は俺がするから、千羽くんは張り切って学校へ行っておいでね。友達もたくさん作るんだよ。それと、変な霊がいたら俺が守るからね」
うきうきと語り出す矢橋先輩に、俺も自分の皿にご飯とルーを盛る。
「もう変な霊は出てこないことを祈りたいです」
もうこりごりだ。
でも、ここに住んでいる以上、避けられないのかもしれない。なにより、矢橋先輩が憑かれやすい体質だ。
また、何か起きるのかもしれないけど、まぁ、その時はその時だ。
あんまり、矢橋先輩が無闇にかわいそう、かわいそうと哀れんだり、よけいな優しさを発動させなければ、きっと平和に過ごせるだろう。
うん。そう思うことにしよう。
俺は矢橋先輩と一緒に居られることが、何よりも嬉しいから。
届いた荷物の中には、母が作ってくれた煮物や簡単に作れるスープや麺類。ばあちゃんの育てた野菜や米も入っている。
中身を取り出していると、矢橋先輩が腕まくりをして隣に立った。
「俺も手伝うよ」
シンクで手を洗って、にこやかな笑顔を向ける矢橋先輩が眩しい。俺は嬉しさについ大きな声で頭を下げた。
「よろしくお願いしますっ!」
「うん」
あははと笑いながら、二人でカレーを作ることに決めてさっそく料理に取り掛かった。
ばあちゃんの畑の特大じゃがいもとにんじん。玉ねぎを切るけど、目に染みて涙が出てくる。そんな俺を見て、矢橋先輩は涙が出ない技があると、水に潜るみたいに息を吸い込み、止めた。
そして、そのままの状態で勢いよく玉ねぎを切っていく。息を止めているから、玉ねぎから飛び出るエキスを吸い込むことがなく、涙が出ないらしい。
でも、豚肉を切り、玉ねぎと一緒に鍋で炒めているうちに、立ち上った湯気が目に染みてきた。結局、矢橋先輩までグスグスと涙目になってしまっているから、おかしくて笑ってしまった。
「ずっと息止めてるとかマジ無理。泣かないで玉ねぎと戦う方法が知りたい!」
真面目に玉ねぎを睨んでいるから、俺はまた矢橋先輩の面白い一面が見れて嬉しくなった。
とっぷり日は暮れて、ご飯が炊き上がる。カレーもいい感じに煮込まれた。
お皿にご飯をよそって、完成したカレールーをかける。
部屋に置かれた小さなローテーブルに向かい合って腰を下ろすと、スプーンを手に持ち目を合わせた。
「いただきます」
「いただきます」
俺が言うのに続いて、矢橋先輩も言う。そして、ひと口掬って食べた。
「美味っ!!」
安心したのと、お腹が減っていたことを思い出したのとで、二人で食べる勢いが止まらない。
あっという間に完食して、おかわりをとりに立ち上がった。
「矢橋先輩もおかわり要ります?」
「うん、お願い」
きれいに食べたお皿を渡してくれる矢橋先輩の目が、潤んで見えた。
「ごめん。ほんと、美味しくて。嬉しくて。俺、今までずっと一人でいたから、こんなふうにして笑ってご飯食べるとか、めちゃくちゃ嬉しくて……」
矢橋先輩のお皿にご飯をよそい、ルーをかける。そして、そっと先輩の前に差し出した。
「俺がこれからも先輩のそばにいますから。一緒に学校行くし、ご飯も食べるし、なんならもうこの部屋で一緒に住んだっていいんですからね」
「……千羽くん」
俺は、矢橋先輩に憧れて桜花高校に入った。目的は矢橋先輩だ。それ以外にはない。やりたい部活もないし、勉強もそれなり。
矢橋先輩みたいになりたいから、矢橋先輩を目標にして、前向きに高校生活を頑張っていきたいと思っている。
「じゃあ、お言葉に甘えて、これからはずっと一緒にいてもいい?」
カレー皿を受け取ると、矢橋先輩は笑顔になる。
「ご飯や家事は俺がするから、千羽くんは張り切って学校へ行っておいでね。友達もたくさん作るんだよ。それと、変な霊がいたら俺が守るからね」
うきうきと語り出す矢橋先輩に、俺も自分の皿にご飯とルーを盛る。
「もう変な霊は出てこないことを祈りたいです」
もうこりごりだ。
でも、ここに住んでいる以上、避けられないのかもしれない。なにより、矢橋先輩が憑かれやすい体質だ。
また、何か起きるのかもしれないけど、まぁ、その時はその時だ。
あんまり、矢橋先輩が無闇にかわいそう、かわいそうと哀れんだり、よけいな優しさを発動させなければ、きっと平和に過ごせるだろう。
うん。そう思うことにしよう。
俺は矢橋先輩と一緒に居られることが、何よりも嬉しいから。



