「記事によれば、遺体はあの場所からだいぶ離れた川の下流で数日後に発見されたって」
「彼女の未練は彼なんだと思う。俺にも何度も会いたいって訴えかけてきた」
「会いたいって……お互い霊同士ならそんなの簡単に出来そうだけど」
俺みたいに霊感のない人間だったら難しいのかもしれないけど、お互いもう亡くなっているんだ。
「これは、俺の憶測だけど……」
先輩は胸に置いていた手を離し、今度は頭を抑えた。
「二人は互いが亡くなっていることを知らないんじゃないかって。生きているはずなのに、なんで会いに来ないんだって、思っているんじゃないかなって……」
「え……」
「そうだとすれば、彼の言い分も分かる気がするんだ。怒っている理由も。悲しむ理由も」
シンっと、一瞬だけ辺りは静寂に包まれる。ひんやりとした風が体をすり抜けていく。
「でもそれじゃあ、俺がした約束は……」
「果たせない」
どうしようもなくなった。
先輩を守るとか言って、霊に果たせるはずのない約束なんて取り決めて、何してんだ俺。毎回毎回、やっぱり俺って何も出来ないじゃん。
自分の無力さに力が抜ける。呆れているのに笑いすら出てこない。もう。なす術なし。
「かわいそうすぎるよな。仲が良かったんだって。大きくなったら結婚しようって。小さいうちからそこまで誓い合えるなんてすごいよ。なのに、こんなことになって……」
矢橋先輩が肩を震わせて泣き始めるから、霊を呼び寄せてしまわないかと俺は慌てる。
「先輩、あんまり悲観的になるとあの霊が……って、あれ、待って」
霊を、呼びよせる?
「先輩! ここに呼べばいいんじゃないですか? 二人とも!」
「は?」
俺のナイスアイデアの提案に、先輩は間の抜けた声を出す。
「そうだよ、呼び寄せてお互いに事情を説明し合ったらいいと思いません?」
「……あのねぇ、千羽くん。そんな友達うちに呼んで仲直りさせるとか、人間でも厄介なのに相手霊だよ? そんな簡単じゃないよ? 実体ないからね? ちゃんと現実を見て?」
しらっとした顔で先輩が諭すように俺に言うから、癪に触る。
「だってじゃあ他にどうするんですか! これじゃあ俺たち完全に詰みですよ!」
あせる俺に対して、先輩は考え込むように難しい顔をする。
「万が一、彼女が彼の死を受け入れてくれたら、もしかしたら彼に寄り添って近づけることができるかもしれない。でも、俺には彼がもう亡くなっているなんて事実、とてもじゃないけど、悲しくて辛くて、伝えるなんて無理だ。分かるでしょ? 俺の気持ち」
うわぁんと泣くふりをする先輩。実際本当にそのことを伝えるとなったら、本気でこの人は泣きかねない。悲しみと辛さに負けて倒れてしまうかもしれない。想像だけでだいたいの見当がつく。
「そこは別にかわいそうだって思わない俺が伝えても良いですけど」
かわいそうはかわいそうだけど、先輩みたいに感情を揺さぶられるほど心には入り込まない自信はある。
あれ? 俺って無慈悲なのかな。え、自分が怖い。
「彼女の未練は彼なんだと思う。俺にも何度も会いたいって訴えかけてきた」
「会いたいって……お互い霊同士ならそんなの簡単に出来そうだけど」
俺みたいに霊感のない人間だったら難しいのかもしれないけど、お互いもう亡くなっているんだ。
「これは、俺の憶測だけど……」
先輩は胸に置いていた手を離し、今度は頭を抑えた。
「二人は互いが亡くなっていることを知らないんじゃないかって。生きているはずなのに、なんで会いに来ないんだって、思っているんじゃないかなって……」
「え……」
「そうだとすれば、彼の言い分も分かる気がするんだ。怒っている理由も。悲しむ理由も」
シンっと、一瞬だけ辺りは静寂に包まれる。ひんやりとした風が体をすり抜けていく。
「でもそれじゃあ、俺がした約束は……」
「果たせない」
どうしようもなくなった。
先輩を守るとか言って、霊に果たせるはずのない約束なんて取り決めて、何してんだ俺。毎回毎回、やっぱり俺って何も出来ないじゃん。
自分の無力さに力が抜ける。呆れているのに笑いすら出てこない。もう。なす術なし。
「かわいそうすぎるよな。仲が良かったんだって。大きくなったら結婚しようって。小さいうちからそこまで誓い合えるなんてすごいよ。なのに、こんなことになって……」
矢橋先輩が肩を震わせて泣き始めるから、霊を呼び寄せてしまわないかと俺は慌てる。
「先輩、あんまり悲観的になるとあの霊が……って、あれ、待って」
霊を、呼びよせる?
「先輩! ここに呼べばいいんじゃないですか? 二人とも!」
「は?」
俺のナイスアイデアの提案に、先輩は間の抜けた声を出す。
「そうだよ、呼び寄せてお互いに事情を説明し合ったらいいと思いません?」
「……あのねぇ、千羽くん。そんな友達うちに呼んで仲直りさせるとか、人間でも厄介なのに相手霊だよ? そんな簡単じゃないよ? 実体ないからね? ちゃんと現実を見て?」
しらっとした顔で先輩が諭すように俺に言うから、癪に触る。
「だってじゃあ他にどうするんですか! これじゃあ俺たち完全に詰みですよ!」
あせる俺に対して、先輩は考え込むように難しい顔をする。
「万が一、彼女が彼の死を受け入れてくれたら、もしかしたら彼に寄り添って近づけることができるかもしれない。でも、俺には彼がもう亡くなっているなんて事実、とてもじゃないけど、悲しくて辛くて、伝えるなんて無理だ。分かるでしょ? 俺の気持ち」
うわぁんと泣くふりをする先輩。実際本当にそのことを伝えるとなったら、本気でこの人は泣きかねない。悲しみと辛さに負けて倒れてしまうかもしれない。想像だけでだいたいの見当がつく。
「そこは別にかわいそうだって思わない俺が伝えても良いですけど」
かわいそうはかわいそうだけど、先輩みたいに感情を揺さぶられるほど心には入り込まない自信はある。
あれ? 俺って無慈悲なのかな。え、自分が怖い。



