そうしていると、一人になれる席を探していたらしい道蓮様が鬼壱さんの隣しか空いていない事と、その空席の目の前に居る私を見て眉を寄せた。
「どーれん! 早く座れ~!」
促して道蓮様を無理矢理座らせたマキリさんが、明るい口調で続けた。
「そんじゃ、最強のヲ組の作戦会議でもするか! 同じヲ組同士! がんばろーな!」
その言葉に食堂内の談笑が止み、視線が突き刺さる。
居心地の悪い空気の中、ひそひそと笑いまじりの侮蔑が聞こえてきた。
「……ヲ組って、最下位の?」
「うわぁ……。開始時に最下位とか、将来終わったな……」
「あいつ蘆屋道蓮じゃないか? 天狗寺の次男も居る」
「家柄だけ良くても、実力はそんなに~ってヤツ?」
嘲笑う声に、鬼壱さんは震えて涙目になっていた。けど、マキリさんは気にせずお椀を両手で持ってお味噌汁を飲んでいたし、道蓮様は周囲の雑音に構わず黙々とグラタンを口に運んでいた。
御霊府君は鼻息も荒く文句を連ねている。
『フン! 下僕どもと儂の灯子を一緒にするな!』
黙り込んだ私たちにマキリさんが励ますように言う。
「大丈夫だぞ! 今はドベだとしても、昨日の自分より成長できるよーにガンバればいい!」
胸を張るマキリさんに鬼壱さんは暗い表情で首を振った。
「キーチは暗ぇーな! そんなんだからドベのヲ組なんだ!」
「君も同じヲ組じゃないか!」
「とりあえず、同じ班として、改めて自己紹介でもしようよ」
じゃれあう二人を見て、このまま空気を変えようと提案する。
「僕は安倍 燈次郎。陰陽師になりたくて、地方から出てきたんだ。よろしくね」
まずは自分からと、教官たちが用意してくれた名前を名乗ると、マキリさんと鬼壱さんも改めて自己紹介してくれた。
「賀茂 マキリだ! 十三歳な! とーちゃんみてーな陰陽術も使える漢になりたくて此処に来たんだ!」
「ぼ、ぼくは天狗寺 鬼壱……。じゅ、十六歳……。此処に来たのは、家族に言われたから……。足だけは引っ張らないように努力するね……」
道蓮様は自己紹介の順番が来ても黙っていたけれど、隣のマキリさんに肘でつつかれて、仕方なさげに口を開いた。
「……蘆屋 道蓮。十八」
「どーれん、それだけか? 将来のユメとかキボーとかシュミとか言わねーと。ボッチのままだぞ?」
「知るか。お前も話しかけるな。鬱陶しい」
マキリさんは道蓮様に拒絶されても平然とご飯を食べていた。
そんなマキリさんとは裏腹に、鬼壱さんは食が進んでいない。顔色も悪そうに見えた。
「……苦手な食べ物でもあるの?」
気になって声をかける。鬼壱さんは苦笑してお腹を撫でた。
「……ぼく、少しでも緊張すると、すぐに食欲がなくなっちゃって……ダメな奴だよね……」
彼はきっと、飛び抜けて繊細なのだろう。
「……鬼壱君、ちょっと待っててくれる?」
私は鬼壱さんに声をかけると厨房に急ぎ、調理の女性達に声をかけた。
事情を汲んでくれた彼女達に丁重にお礼を伝えて、受け取ったものを手に鬼壱さんの元に戻る。
「鬼壱君、これ良かったら」
そう言って、お粥の入ったお茶碗を差し出す。
「え……、ど、どうして……?」
鬼壱さんが驚いた様子で私を見るので、説明を加えた。
「しんどい時は、温かいものをゆっくり食べると元気になれるらしいよ。君は十分、頑張っていると思う。だから、もっと自分に優しくしてあげてね」
「……!」
鬼壱さんは驚いたように私を見つめる。
続けて持ってきた匙を手渡すと、おずおずとお粥を口に運び始めた。お粥が相当に美味しかったのだろうか。鬼壱さんはいつの間にか泣きそうな顔になっていた。
ふと顔を上げると、それまで無関心そうにしていた道蓮様が私を見つめていた。
「……」
あまりにも凝視されるので、上擦った声で問いかける。
「どーれん! 早く座れ~!」
促して道蓮様を無理矢理座らせたマキリさんが、明るい口調で続けた。
「そんじゃ、最強のヲ組の作戦会議でもするか! 同じヲ組同士! がんばろーな!」
その言葉に食堂内の談笑が止み、視線が突き刺さる。
居心地の悪い空気の中、ひそひそと笑いまじりの侮蔑が聞こえてきた。
「……ヲ組って、最下位の?」
「うわぁ……。開始時に最下位とか、将来終わったな……」
「あいつ蘆屋道蓮じゃないか? 天狗寺の次男も居る」
「家柄だけ良くても、実力はそんなに~ってヤツ?」
嘲笑う声に、鬼壱さんは震えて涙目になっていた。けど、マキリさんは気にせずお椀を両手で持ってお味噌汁を飲んでいたし、道蓮様は周囲の雑音に構わず黙々とグラタンを口に運んでいた。
御霊府君は鼻息も荒く文句を連ねている。
『フン! 下僕どもと儂の灯子を一緒にするな!』
黙り込んだ私たちにマキリさんが励ますように言う。
「大丈夫だぞ! 今はドベだとしても、昨日の自分より成長できるよーにガンバればいい!」
胸を張るマキリさんに鬼壱さんは暗い表情で首を振った。
「キーチは暗ぇーな! そんなんだからドベのヲ組なんだ!」
「君も同じヲ組じゃないか!」
「とりあえず、同じ班として、改めて自己紹介でもしようよ」
じゃれあう二人を見て、このまま空気を変えようと提案する。
「僕は安倍 燈次郎。陰陽師になりたくて、地方から出てきたんだ。よろしくね」
まずは自分からと、教官たちが用意してくれた名前を名乗ると、マキリさんと鬼壱さんも改めて自己紹介してくれた。
「賀茂 マキリだ! 十三歳な! とーちゃんみてーな陰陽術も使える漢になりたくて此処に来たんだ!」
「ぼ、ぼくは天狗寺 鬼壱……。じゅ、十六歳……。此処に来たのは、家族に言われたから……。足だけは引っ張らないように努力するね……」
道蓮様は自己紹介の順番が来ても黙っていたけれど、隣のマキリさんに肘でつつかれて、仕方なさげに口を開いた。
「……蘆屋 道蓮。十八」
「どーれん、それだけか? 将来のユメとかキボーとかシュミとか言わねーと。ボッチのままだぞ?」
「知るか。お前も話しかけるな。鬱陶しい」
マキリさんは道蓮様に拒絶されても平然とご飯を食べていた。
そんなマキリさんとは裏腹に、鬼壱さんは食が進んでいない。顔色も悪そうに見えた。
「……苦手な食べ物でもあるの?」
気になって声をかける。鬼壱さんは苦笑してお腹を撫でた。
「……ぼく、少しでも緊張すると、すぐに食欲がなくなっちゃって……ダメな奴だよね……」
彼はきっと、飛び抜けて繊細なのだろう。
「……鬼壱君、ちょっと待っててくれる?」
私は鬼壱さんに声をかけると厨房に急ぎ、調理の女性達に声をかけた。
事情を汲んでくれた彼女達に丁重にお礼を伝えて、受け取ったものを手に鬼壱さんの元に戻る。
「鬼壱君、これ良かったら」
そう言って、お粥の入ったお茶碗を差し出す。
「え……、ど、どうして……?」
鬼壱さんが驚いた様子で私を見るので、説明を加えた。
「しんどい時は、温かいものをゆっくり食べると元気になれるらしいよ。君は十分、頑張っていると思う。だから、もっと自分に優しくしてあげてね」
「……!」
鬼壱さんは驚いたように私を見つめる。
続けて持ってきた匙を手渡すと、おずおずとお粥を口に運び始めた。お粥が相当に美味しかったのだろうか。鬼壱さんはいつの間にか泣きそうな顔になっていた。
ふと顔を上げると、それまで無関心そうにしていた道蓮様が私を見つめていた。
「……」
あまりにも凝視されるので、上擦った声で問いかける。



