明治あやかし恋綺譚 ~式神に愛された男装令嬢~

 我ながら効果は覿面だと自負している。
 味について何か言われたこともあるが、薬膳というものは効きさえすれば良いと思っている。

 なので、薬膳カフェーはどうかと話してみたのだが――マキリさんと鬼壱さんが瞬時に目を逸らした。

 えっ……?

 「おう……あれ、効くけど……マズィーからな……」
 「ま、不味くないよ! でもほら、あれは、ぼくらだけの特権ってことで……」

 でも道蓮様だけは賛成してくれた。

 「別に良いんじゃないか? 陰陽師を目指す者なら、誰でも力はつけたいだろう」

 そんな道蓮様の上着をマキリさんが引っ張り、死んだ魚のような目を向けた。

 「でもトージロのメシ、マズィズィーぞ……? お前食ったことないのか?」

 かつてない覇気の無さで告げるマキリさん。
 そんな騒がしい場に教官と雨多子様が姿を見せた。

 「まだ出し物が決まらんのか」

 教官は散らばった意見書を見て眉間を寄せる。
 そこで教官が私の日月剣を見て、口を開いた。

 「安倍、その剣は封印したまま絶対に使うんじゃないぞ」

 それは御霊府君からも言われていたけれど、何故かと思っていたら、教官の広い背中から狂火様が、ひょこっと顔を出した。そして扇子で口元を隠しながら、つまらなさそうに告げる。

 「燈次郎クンの剣と道蓮クンの天誅殺は、どちらも呪剣ですからねぇ。剣には親バカな式神が憑いてますしぃ? それにまさか小生が渡した天誅殺を道蓮クンが使いこなしちゃうとは、小生にも予想がつきませんでしたよ。あぁ、つまらないつまらない」

 そんな狂火さんを雨多子さんが舌打ちしながら告げる。

 「狂火兄さんって、ホント無理! 将雪兄さんを見習ってよね」

 その言葉に御霊府君が引いている。

 『全然似ておらぬのに兄妹……じゃと?』

 教官が咳払いをし、狂火様が笑う。

 「狂火と私は双子だ。雨多子は年の離れた妹でな」
 「おにいと雨多ちゃんとは、小生、全然似てませんよねぇ~?」

 だから今回の騒動も身内の不始末だと、教官は方々に謝り倒したらしい。
 御霊府君がそこで怒りだした。

 『何じゃ! やっぱり狂火とやらが元凶ではないか! 恩着せがましく燈次郎の後見人になぞなりおって!』

 既に狂火様は姿を消してしまったけれど、私は日月剣を見つめて思いだす。

 山奥の屋敷で一人、遊んでいた時に声をかけてくれた青年の声を。

 家宝の日月剣を封印している御殿で、雪色の美しい式神が手を差し伸べてくれた、あの日の記憶を。

 『何じゃ、儂の姿が見えるのか? 稀有な小娘じゃのう~』

 そう言って、ずっと傍に居てくれた貴方。

 回想していると、御霊府君が微笑んでくれていた。
 それから、道蓮様や鬼壱さん、マキリさんが声をかけてくる。

 「燈次郎、出し物を決めるぞ」
 「お兄様もいるし、今度こそ真面目に決めようね!」
 「おう! トージロ! 案出せ!」

 微笑む皆の輪の中に私も戻る。
 いつか、本当の私に戻って、皆と関われる日を夢見て。