◆◆◆
道蓮様の自宅での出来事から数日が経過した。
例の老人はあの後、拘束された陰陽寮の牢の中で突然発狂し、廃人となったと聞く。
今は会話もままならない状態になって、苦悶のような声を上げ続けているのだとか。
本当に御霊府君が呪ったのかと思ったけど、本人は『儂は知らんぞ。狂火とかいう変態の所為ではないのかえ』と、本当に知らないみたいだ。
鬼を解放した代償なのか、はたまた野望がついえたショックからなのだろうか……?
彼の暗躍が土御門壊滅の原因となった件は、今後も陰陽寮と八咫鴉が協力して調べていくと教官から聞いた。
心配だったのは道蓮様の方だ。
長年、共に居た存在の裏切りに傷ついていないのかと案じた。
けれど、引きずり苦しむのは相手の思うつぼ、今は前を向いて歩きだす事しか考えていないのだと教えてくれた。
道蓮様がそう考えられるようになったのは、ヲ組の皆や、将雪おじ様、雨多子様という味方が居てくれることに気づいたのが大きかったのだろう。
そんな一連の騒動の後、私達ヲ組は来たる學園祭に向けて準備に勤しんでいた。
(急がないと……!)
私は空き教室に木箱を運び込みながら焦っていた。
組ごとに出しものをすると決まっているのだが……ヲ組の全員、やりたい事がバラバラでなかなか纏まらない。
なので、他の班よりも準備が遅れていたのだ。
今も教室内では三人が窓際で揉めている。
マキリさんが椅子の上に立って跳びはねながら、道蓮様や鬼壱さんに熱弁している。
「どーれん、キーチ! 食い物の店やるぞ! そしたら食い放題だ!」
そんなマキリさんに対して、道蓮様は律儀にノートをとり、鬼壱さんは椅子の背もたれに寄りかかるようにしている。
「マキリ、方針は既に決まっている。灯子に捧げる装飾品と着物の展示」
「ちょ、そのお店、道蓮君は幸せになるだろうけどさ……。ここは呪具や御札の展示がいいんじゃない? それで、お兄様に実演してもらうとか!」
三人ともアイデアを出し合っているが、お互い譲る気はなさそうだ。
それを見ていた御霊府君は窓の桟に腰かけ、尻尾を振りながら呆れた声を出した。
『何じゃ、つまらぬ案ばかりじゃのう。阿呆しかおらぬではないか」
御霊府君はヲ組の皆の前では実体化するようになっていた。
それは彼が自身の姿を見せてもいいと思えるくらい、皆に信頼を抱くようになったからだと思う。
私にとってもこれは嬉しい変化だった。
あまりにも企画が纏まらない中、三人はついに私に意見を聞いてきた。
「燈次郎、お前も意見を出せ。何かやりたいものはないのか」
「トージロ! 食い物の店が嫌なら、ウナギの店な!」
「お兄様がやりたいものなら、ぼくは何でも大歓迎だよ!」
私が好きなのは野草や木の実を使った薬膳料理だ。
道蓮様の自宅での出来事から数日が経過した。
例の老人はあの後、拘束された陰陽寮の牢の中で突然発狂し、廃人となったと聞く。
今は会話もままならない状態になって、苦悶のような声を上げ続けているのだとか。
本当に御霊府君が呪ったのかと思ったけど、本人は『儂は知らんぞ。狂火とかいう変態の所為ではないのかえ』と、本当に知らないみたいだ。
鬼を解放した代償なのか、はたまた野望がついえたショックからなのだろうか……?
彼の暗躍が土御門壊滅の原因となった件は、今後も陰陽寮と八咫鴉が協力して調べていくと教官から聞いた。
心配だったのは道蓮様の方だ。
長年、共に居た存在の裏切りに傷ついていないのかと案じた。
けれど、引きずり苦しむのは相手の思うつぼ、今は前を向いて歩きだす事しか考えていないのだと教えてくれた。
道蓮様がそう考えられるようになったのは、ヲ組の皆や、将雪おじ様、雨多子様という味方が居てくれることに気づいたのが大きかったのだろう。
そんな一連の騒動の後、私達ヲ組は来たる學園祭に向けて準備に勤しんでいた。
(急がないと……!)
私は空き教室に木箱を運び込みながら焦っていた。
組ごとに出しものをすると決まっているのだが……ヲ組の全員、やりたい事がバラバラでなかなか纏まらない。
なので、他の班よりも準備が遅れていたのだ。
今も教室内では三人が窓際で揉めている。
マキリさんが椅子の上に立って跳びはねながら、道蓮様や鬼壱さんに熱弁している。
「どーれん、キーチ! 食い物の店やるぞ! そしたら食い放題だ!」
そんなマキリさんに対して、道蓮様は律儀にノートをとり、鬼壱さんは椅子の背もたれに寄りかかるようにしている。
「マキリ、方針は既に決まっている。灯子に捧げる装飾品と着物の展示」
「ちょ、そのお店、道蓮君は幸せになるだろうけどさ……。ここは呪具や御札の展示がいいんじゃない? それで、お兄様に実演してもらうとか!」
三人ともアイデアを出し合っているが、お互い譲る気はなさそうだ。
それを見ていた御霊府君は窓の桟に腰かけ、尻尾を振りながら呆れた声を出した。
『何じゃ、つまらぬ案ばかりじゃのう。阿呆しかおらぬではないか」
御霊府君はヲ組の皆の前では実体化するようになっていた。
それは彼が自身の姿を見せてもいいと思えるくらい、皆に信頼を抱くようになったからだと思う。
私にとってもこれは嬉しい変化だった。
あまりにも企画が纏まらない中、三人はついに私に意見を聞いてきた。
「燈次郎、お前も意見を出せ。何かやりたいものはないのか」
「トージロ! 食い物の店が嫌なら、ウナギの店な!」
「お兄様がやりたいものなら、ぼくは何でも大歓迎だよ!」
私が好きなのは野草や木の実を使った薬膳料理だ。



