明治あやかし恋綺譚 ~式神に愛された男装令嬢~

 将雪、狂火、雨多子は兄妹である。

 双子の将雪と狂火、そして少し年が離れた雨多子。
 しかし三人が三人とも似ていない。

 狂火が陰陽學寮の職員室で、扇子を扇ぎながらボヤく。

 「あぁ~。毎日つまらないですねぇ。道蓮クンは大人しいしぃ? 燈次郎クンの正体でもバラしてしまいたくなりますよ~。ねえ? おにい~」

 それを聞いた将雪がギロリと睨み、雨多子はお茶(出涸らし)をドン! と狂火の前に置く。

 「狂火兄さん、道蓮君や燈次郎君に手を出したら、一生口きかないからね」
 「そんなぁ~。雨多ちゃん、相手してくださいよぉ~」
 「狂火兄さんって、ホント無理!」

 雨多子がプイと、そっぽを向くと職員室の入り口に居た燈次郎と鬼壱が目を丸くしていた。

 「え……」
 「教官達って、兄妹だったんですか……?」

 驚く二人に狂火は扇子で口元を隠しつつ、燈次郎に楽し気に近づく。

 「あれあれ~? ご存知なかったんですかぁ? いけない子ですねぇ~」

 そこで御霊府君が燈次郎に乗り移り、守るように威嚇する。

 『うぬらの家族構成なぞ一寸も興味なぞないわ! それより、儂の燈次郎に近づくでない!』

 それを聞いた雨多子がウットリする。

 「美形式神(執着激強)×美少年(美少女)って、いいわよねぇ、将雪兄さん! 全人類の好みよね♥」
 「主語が大きいぞ、雨多子」

 そうこうしている内に、道蓮とマキリもやってきた。

 「呼ばれたから、来てやったぞ」
 「とーちゃん! タコ! キョーカ! 何か美味いモノでもくれるのか?」

 集まったヲ組に将雪が立ち上がる。

 「お前達を呼んだのは他でもない」

 ゴクリ……と皆が息を飲む中、将雪が告げた。

 「雨多子と狂火のあしらい方を伝授しておく」
 「おにい~?」
 「ちょっと将雪兄さん! あたしと狂火兄さんを一緒にしないでよ!」

 しかし将雪の話を聞いた御霊府君は燈次郎の体のまま頷く。

 『それは重要じゃな! 寮に戻る度に、そのおなごに抱きつかれて燈次郎が部屋に戻れぬ!』

 他のヲ組の面子、道蓮も鬼壱も頷く。(マキリは狂火の茶を奪って飲んでいた)

 「早く教えろ」
 「お兄様がいつも狂火様や雨多子さんに絡まれてるもんね……」

 特にヲ組が絡まれることを案じて将雪は皆を呼んだらしい。
 将雪が告げる。

 「基本、無視しろ」

 そのガツンとした言いざまに、御霊府君、道蓮、鬼壱が繰り返す。

 『無視じゃと!』
 「無視!?」
 「無視ですか!?」

 繰り返す生徒達に将雪は頷く。

 「そうだ。相手をすれば、いつまでも調子にのって話しかけてくる! 最初から無視していろ」

 そんな将雪に狂火と雨多子がブーイングする。

 「おにい、酷いですよぉ~」
 「そうよ将雪兄さん! 狂火兄さんはともかく、あたしは寮母でもあるのよ!」

 そう言いながら狂火と雨多子が燈次郎にハグをしてスリスリしているのを御霊府君は死んだ魚の目で告げる。

 『……確かに、これを無視するのは、骨が折れるのう……』

 更に鬼壱が「ずるい! ぼくもお兄様にスリスリしたいよ!」と抱きついて来る。
 それを見たマキリも「何か知らねーが、たのしそーだな!」と道蓮も巻き込んで燈次郎に抱きつく。

 「燈次郎クンはカワイイですねぇ~(呪いが)食べちゃいたいくらいです♥」
 「ちょっと! 狂火兄さん! あたしの燈次郎君から離れなさいよ!」
 「そうだよ! お兄様に軽々しく抱きつかないでよ!」
 「トージロと、どーれん、目が死んでっぞ~」

 将雪の目の前では、燈次郎を中心とした抱擁の楽園が出来ていた……。

 将雪は眉間を抑えつつ、問題児なのは弟妹だけでなく、ヲ組全体であるのを改めて理解するのだった……