二人は世界を手に入れた気分だった。
「ハル、誕生日おめでとう。」
私がいいなと羨ましがったネックレス。
今日は私の誕生日だから愛美と一緒に過ごした。
何かくれるのかなと前日からワクワクした。これでお揃いだと嬉しくなった。
向かい合わせで愛美は私にネックレスを付けてくれた。
私には可愛すぎるデザインだと少しだけ不安になった。
「似合ってる。」
愛美の喜びと安堵に似たほほえみは私を安心させてくれた。
それが最後の二人だけの会話だった。
愛美は私の前で膨らんで散った。
「嘘……やだ、やだよ……」
力が抜けて座り込んだ下のアスファルトはいつものように冷たくて、流れついた体温の色が私を包んだ。
裂け目の向こうから、異形が静かに浮かび上がった。
海月のように透きとおる層が、まるでドレスのように揺れている。
青の光がドレスの縁を走り、光の輪郭を描く。
嫌なほど綺麗で、まるで、愛美の理想が形を得たかのようだった。
私が形づくってきたものは、すべて崩れ、ただ異形の静かな暴力に晒されるままだった。
体が拒絶しているのか、心が拒絶しているのか、もう分からなかった。
どれほどの時間が過ぎたのかもわからない。
懺悔だけが残り、それが風船のように膨らんで破れた瞬間、異形の姿は、まるで最初から存在しなかったかのように消えた。
いくつもの星が、くだらない私を照らしている。
私はまだ生きてしまっていることを、いやおうなく確認させられる。
雨が染み込んだアスファルトに、涙を溶かした。
「てめえええええええ!!」
澪の叫喚が、ネオンの光を揺らした。
私は顔を上げなかった。
「ゲートを放置すると明日にはこの世界がどうなってんのかわかんねーんだぞ!」
澪の言葉は届かなかった。
世界がどうなろうと、もうどうでもよかった。
私のたった一人の友人はもういない。
「友達だったんだよ! たった一人の! 」
声にならないものが、そのまま外に出る。
「親友だったんだよ……」
「それで『はいそうですか。仕方ないですね』なんてなんねぇだろうが!」
何かが、胸の奥に当たる。
痛い。
「だって……」
言葉を探す。見つからない。
「……がんばってるんだもん……わたしだって……普通に……」
事務員を二ヶ月で辞めても、デリヘルが続かなくても、どうにか生きてきた。
誰にも認められなくても、価値がないと言われても、それでも生きようとしてきた。
それなのに、どこまでも世界は冷たい。
「そうやって他者承認ばっか気にして何もできねぇなら本末転倒だろうが。これまでてめえは誰かに承認されて、てめぇ自身は何か変わったか? 一瞬の安心を繰り返してそのまま死ぬわけ!?」
澪の言葉は容赦なく私を抉った。
その言葉は、私の本質を突いていた。
私は何も変わっていない。
親に金を渡して認められようとした子供の頃から、何一つ成長していない。
ただ、承認される方法が変わっただけ。
「なんで……なんで私じゃないんだ……」
澪の声には、深い後悔が滲んでいた。
「あと少しで、すべてのゲートが開きます。」
澪の声が震えていた。
「もういいです。私とニュンニュンで対処します。短い間ですがお疲れ様でした。」
澪は背を向けた。
彼女は私を見限った。当然だと思った。
「ハル、誕生日おめでとう。」
私がいいなと羨ましがったネックレス。
今日は私の誕生日だから愛美と一緒に過ごした。
何かくれるのかなと前日からワクワクした。これでお揃いだと嬉しくなった。
向かい合わせで愛美は私にネックレスを付けてくれた。
私には可愛すぎるデザインだと少しだけ不安になった。
「似合ってる。」
愛美の喜びと安堵に似たほほえみは私を安心させてくれた。
それが最後の二人だけの会話だった。
愛美は私の前で膨らんで散った。
「嘘……やだ、やだよ……」
力が抜けて座り込んだ下のアスファルトはいつものように冷たくて、流れついた体温の色が私を包んだ。
裂け目の向こうから、異形が静かに浮かび上がった。
海月のように透きとおる層が、まるでドレスのように揺れている。
青の光がドレスの縁を走り、光の輪郭を描く。
嫌なほど綺麗で、まるで、愛美の理想が形を得たかのようだった。
私が形づくってきたものは、すべて崩れ、ただ異形の静かな暴力に晒されるままだった。
体が拒絶しているのか、心が拒絶しているのか、もう分からなかった。
どれほどの時間が過ぎたのかもわからない。
懺悔だけが残り、それが風船のように膨らんで破れた瞬間、異形の姿は、まるで最初から存在しなかったかのように消えた。
いくつもの星が、くだらない私を照らしている。
私はまだ生きてしまっていることを、いやおうなく確認させられる。
雨が染み込んだアスファルトに、涙を溶かした。
「てめえええええええ!!」
澪の叫喚が、ネオンの光を揺らした。
私は顔を上げなかった。
「ゲートを放置すると明日にはこの世界がどうなってんのかわかんねーんだぞ!」
澪の言葉は届かなかった。
世界がどうなろうと、もうどうでもよかった。
私のたった一人の友人はもういない。
「友達だったんだよ! たった一人の! 」
声にならないものが、そのまま外に出る。
「親友だったんだよ……」
「それで『はいそうですか。仕方ないですね』なんてなんねぇだろうが!」
何かが、胸の奥に当たる。
痛い。
「だって……」
言葉を探す。見つからない。
「……がんばってるんだもん……わたしだって……普通に……」
事務員を二ヶ月で辞めても、デリヘルが続かなくても、どうにか生きてきた。
誰にも認められなくても、価値がないと言われても、それでも生きようとしてきた。
それなのに、どこまでも世界は冷たい。
「そうやって他者承認ばっか気にして何もできねぇなら本末転倒だろうが。これまでてめえは誰かに承認されて、てめぇ自身は何か変わったか? 一瞬の安心を繰り返してそのまま死ぬわけ!?」
澪の言葉は容赦なく私を抉った。
その言葉は、私の本質を突いていた。
私は何も変わっていない。
親に金を渡して認められようとした子供の頃から、何一つ成長していない。
ただ、承認される方法が変わっただけ。
「なんで……なんで私じゃないんだ……」
澪の声には、深い後悔が滲んでいた。
「あと少しで、すべてのゲートが開きます。」
澪の声が震えていた。
「もういいです。私とニュンニュンで対処します。短い間ですがお疲れ様でした。」
澪は背を向けた。
彼女は私を見限った。当然だと思った。
