少女は廻る星を憶う

母は遊園地に来てはくれなかった。癇癪を起こすと、私を叩いた。

そのたびに、母を求めた。

愛情なのか、恐怖なのか、今ではもう判別がつかない。

幼い私にとって、世界は家族の中だけにあった。

父は、母の暴力を見て見ぬふりをした。

二人は金を賭け、私は孤独を賭けた。いま、父は私の横で冷たく横たわっている。

「ママ……」
小さな身体から震えた声で求めた。

折り重なる雨の音が、わずかな希望をかき消していく。

すべては、音の中で消えた。

静かに近づく絶望の音と終焉で、暗闇の底に、わずかな光が差した。

天から降りた光明が、異形の影を射抜いた。

世界を一瞬だけ白く染め、天使と私だけが残った。

「怪我はない?」
天使は、包み込むような声で私に語りかけた。

「私がずっと見守ってるからね」
彼女の優しい一言を母に重ねた。

私は必死に頷いた。頷くことしかできなかった。

言葉が、喉の奥で石のように固まり、声にならない。

緘黙症──それが私を定義する全てだった。

それでも彼女は微笑んでくれた。

けれど、光は儚く消えていく。

いつだってそうだった。

希望は、いつも私の手が届く直前で霧散してしまう。

そして私は、また一人取り残される。