少女は廻る星を憶う

静かな丘。

風が、花の匂いを運んでいた。

墓標の前で、私は両手を合わせた。

その向こうに、花畑が広がっていた。

振り返ると、愛美が立っていた。

あの日と同じ笑顔で。

「またね」

その声は、花の揺れる音にほどけて消えた。

私は追わなかった。

背後で、澪が何か言った。

うまく聞き取れなかった。

ただ、現実だけが、いつもみたいに手加減なくそこにあった。

丘の下で、街がいつも通りに息をしている。

誰かが今日を終わらせようとしている。

私がつないでしまった、開けきった世界は黙ってまた続く。

私は一度だけ、墓標に触れた。

石は冷たくて、少しだけ正気に戻った。

それから、振り返った。

まだ、うまく歩ける気はしなかった。

それでも、この丘を下りるくらいのことならできそうだった。