眉間にしわを寄せた蒼司の口から、小さなため息が零れた。
「町娘と町人にでも扮していけば、まあ、なんとかなるか」
「──本当!?」
「凛の願いなら仕方あるまい」
苦笑しながらも頷く顔を見て、思わず、蒼司の首へ手をかけるようにして抱き着いた。
「──凛!?」
「蒼司さん、ありがとう。楽しみにしてるね!」
「……まったく、そなたは」
蒼司の口からこぼれた声は呆れるようで、どこか甘やかす優しさを含んでいる。
背中に回された両手から、薄い寝巻を通して温もりが伝わってきた。
「凛、そなたの国では伴侶への思いをどう伝えるのだ?」
「──え?」
「そなたが欲しい言葉で、この思いを伝えたい」
大きな手が頬に触れた。
夏の夜風が、火照った頬と首筋を撫でていく。
「愛しています」
するりと出た言葉に、蒼司の瞳が見開かれる。
「私、蒼司さんとここで生きていきます。だから、あなたの愛を全部、私にくれますか?」
「愛か……」
戸惑う様子を見て、ああやっぱりここは江戸時代によく似ているんだって感じた。
そもそも、愛って概念は明治以降に伝わったものだし、現代日本だって「愛してる」なんて恥ずかしくていえない人も多いもんね。逆にぽんぽんいえちゃう最低男もいっぱいいるけど。
ちょっとワガママすぎたかな。でも一生懸命、私に応えようとしてくれる蒼司の様子が嬉しくて、それだけで満足できた。言葉が違っても、きっと気持ちは同じだろうし。
「慣れない言葉だよね。ごめんね、無理に──」
「そうではない。欲にまみれた私の心すら、凛は受け止めるというのかと思うてな」
「……欲?」
いわれて気付いた。そういえば、江戸時代までは愛って執着心や欲求を表すものだったっけ。
ぐんっと強く抱き寄せられて、押し付けられた熱を感じてしまった。
「凛、そなたを愛しておる。そなたの愛も、全て私のものだ」
顎を押し上げられ、薄暗い中、覆いかぶさるようにして蒼司の顔が近づいてくる。
寝巻から漂う甘い香りは、焚き染められたお香だろうか。そんなことをぼんやり考えながら、唇へ触れた優しい吐息に逸る鼓動を鎮めようとした。
熱に浮かされ瞳を閉じれば、どこか遠くから、ホトトギスの鳴く声が聞こえてきた。
「町娘と町人にでも扮していけば、まあ、なんとかなるか」
「──本当!?」
「凛の願いなら仕方あるまい」
苦笑しながらも頷く顔を見て、思わず、蒼司の首へ手をかけるようにして抱き着いた。
「──凛!?」
「蒼司さん、ありがとう。楽しみにしてるね!」
「……まったく、そなたは」
蒼司の口からこぼれた声は呆れるようで、どこか甘やかす優しさを含んでいる。
背中に回された両手から、薄い寝巻を通して温もりが伝わってきた。
「凛、そなたの国では伴侶への思いをどう伝えるのだ?」
「──え?」
「そなたが欲しい言葉で、この思いを伝えたい」
大きな手が頬に触れた。
夏の夜風が、火照った頬と首筋を撫でていく。
「愛しています」
するりと出た言葉に、蒼司の瞳が見開かれる。
「私、蒼司さんとここで生きていきます。だから、あなたの愛を全部、私にくれますか?」
「愛か……」
戸惑う様子を見て、ああやっぱりここは江戸時代によく似ているんだって感じた。
そもそも、愛って概念は明治以降に伝わったものだし、現代日本だって「愛してる」なんて恥ずかしくていえない人も多いもんね。逆にぽんぽんいえちゃう最低男もいっぱいいるけど。
ちょっとワガママすぎたかな。でも一生懸命、私に応えようとしてくれる蒼司の様子が嬉しくて、それだけで満足できた。言葉が違っても、きっと気持ちは同じだろうし。
「慣れない言葉だよね。ごめんね、無理に──」
「そうではない。欲にまみれた私の心すら、凛は受け止めるというのかと思うてな」
「……欲?」
いわれて気付いた。そういえば、江戸時代までは愛って執着心や欲求を表すものだったっけ。
ぐんっと強く抱き寄せられて、押し付けられた熱を感じてしまった。
「凛、そなたを愛しておる。そなたの愛も、全て私のものだ」
顎を押し上げられ、薄暗い中、覆いかぶさるようにして蒼司の顔が近づいてくる。
寝巻から漂う甘い香りは、焚き染められたお香だろうか。そんなことをぼんやり考えながら、唇へ触れた優しい吐息に逸る鼓動を鎮めようとした。
熱に浮かされ瞳を閉じれば、どこか遠くから、ホトトギスの鳴く声が聞こえてきた。

