「此度、大奥でよからぬ動きがあると聞き、我ら陰陽師が、召喚の間にて儀を執り行いました」
「そ、そんな、勝手な……それに、お祈りをするだけなら結婚なんて必要ないですよね?」
「それも習わしです。この月江戸で不自由なく過ごして頂くため、巫女様にはそれ相応のお屋敷で過ごして頂くことになります。此度は、少々事情があり、当家にて婚姻を結んでいただくこととなりました」
「……事情?」
「具体的な話は後日、大奥取締役の清方殿より伺うことになりましょう。今宵は、ゆっくりとお休みください」
そんなことをいわれても、まだ頭の中が整理できない。ゆっくり休める気が微塵もしない。
「蒼司、巫女様に失礼のないように」
「心得ております」
父親の言葉に頷き、蒼司は私に向かって頭を下げる。
な、なんか……結婚する間柄じゃないわよね、この空気。結婚なんてお断りだけど、この堅苦しい空気でずっと生活するのも嫌だな。
「……あの、一つお願いがあるんですけど」
「なんなりとお申し付けください」
「その、私のことは『巫女様』ではなく、凛と呼んでください。堅苦しいのは苦手だし、そう畏まられても困りますし」
おずおずと頼むと、顔を上げた蒼司は驚いた様子で父親と顔を見合った。
変なお願いしちゃったのかな。いやでも、息がつまる生活は嫌だし、名前で呼ぶのが普通だよね。
「巫女様──凛様は気さくなお人柄のご様子。今後は言葉にも気をつけましょう。では明朝、迎えに参ります」
まだ固い気がするし、様付けもいらないんだけどな。また明日、もう少し気楽にお願いします、てお願いしようかな。
座敷に残され、蒼司と二人きり。
会ったばかりの男性と、なにを話したらいいっていうの。共通になる趣味とか聞いてみるべきか。まるでお見合いの席で「後は若いお二人で」と残されたような状況だ。
でも、この世界の流行りごとなんて知らないし、逆に、転生前の話をしたって伝わる訳もないよね。会話ってどうすればいいんだろう。
まるで、卒業まで残り半年のクラスに転校して放り込まれた気がしてきた。
周りの人たちは状況をわかっているのに、私だけがなにもわからなくて不安を感じている。ううん、卒業間近の学生生活ならまだいいわね。卒業後っていう希望があるもの。そもそも、文化や認識は同じなんだし。
だけど、今の私は行く場所がない上、環境も今までとは全く違う。こんな状況で、二人っきりにさせられたら……悶々と考えていると、重大なことにふと気付いてしまった。
「そ、そんな、勝手な……それに、お祈りをするだけなら結婚なんて必要ないですよね?」
「それも習わしです。この月江戸で不自由なく過ごして頂くため、巫女様にはそれ相応のお屋敷で過ごして頂くことになります。此度は、少々事情があり、当家にて婚姻を結んでいただくこととなりました」
「……事情?」
「具体的な話は後日、大奥取締役の清方殿より伺うことになりましょう。今宵は、ゆっくりとお休みください」
そんなことをいわれても、まだ頭の中が整理できない。ゆっくり休める気が微塵もしない。
「蒼司、巫女様に失礼のないように」
「心得ております」
父親の言葉に頷き、蒼司は私に向かって頭を下げる。
な、なんか……結婚する間柄じゃないわよね、この空気。結婚なんてお断りだけど、この堅苦しい空気でずっと生活するのも嫌だな。
「……あの、一つお願いがあるんですけど」
「なんなりとお申し付けください」
「その、私のことは『巫女様』ではなく、凛と呼んでください。堅苦しいのは苦手だし、そう畏まられても困りますし」
おずおずと頼むと、顔を上げた蒼司は驚いた様子で父親と顔を見合った。
変なお願いしちゃったのかな。いやでも、息がつまる生活は嫌だし、名前で呼ぶのが普通だよね。
「巫女様──凛様は気さくなお人柄のご様子。今後は言葉にも気をつけましょう。では明朝、迎えに参ります」
まだ固い気がするし、様付けもいらないんだけどな。また明日、もう少し気楽にお願いします、てお願いしようかな。
座敷に残され、蒼司と二人きり。
会ったばかりの男性と、なにを話したらいいっていうの。共通になる趣味とか聞いてみるべきか。まるでお見合いの席で「後は若いお二人で」と残されたような状況だ。
でも、この世界の流行りごとなんて知らないし、逆に、転生前の話をしたって伝わる訳もないよね。会話ってどうすればいいんだろう。
まるで、卒業まで残り半年のクラスに転校して放り込まれた気がしてきた。
周りの人たちは状況をわかっているのに、私だけがなにもわからなくて不安を感じている。ううん、卒業間近の学生生活ならまだいいわね。卒業後っていう希望があるもの。そもそも、文化や認識は同じなんだし。
だけど、今の私は行く場所がない上、環境も今までとは全く違う。こんな状況で、二人っきりにさせられたら……悶々と考えていると、重大なことにふと気付いてしまった。

