月の導きで眼帯の陰陽師と結婚させられました

 戸張家からの抗議の文書が届いたり、十五年前の附子騒動を再調査する動きになったり。大奥でも、雨宮──あめさんが処罰されたことに対する抗議の声が上がったらしい。桜さんも、嘆いていたと聞いている。

 桜さんには本当のことを教えたらいいのに。そういったら、あめさん自身が「ご迷惑になりますから」と秘匿にすることを願ったんだよね。清方様も、雨宮は死んだことにした方が、なにかと都合がいいっていって、雨宮という女中は重罪人となったわけだけど。

 御三家の争いがなくなれば、本当のことを話せる日が来るのかな。

 花見なんて思い付かないくらい、忙しかった日々を思い返しながら開いた蓮の花を眺め、そっとため息をついた。

「無理をいって起こしてしまったな。すまなかった」

 私のため息をなんだと思ったのか、蒼司は申し訳なさそうな顔をした。

「なんで謝るの?」
「凛も疲れているだろう。なのに、暗い時間に起こしてしまったからな」
「そんなの平気だよ。でも、着付けを手伝ってくれたあめさんに、悪いことしちゃったね」
「野々宮姉か……」

 私が苦笑するのを見て、蒼司は居心地悪そうな顔をした。
 あめさんは今、私付きの女中となっている。彼女を戸張家から守るなら私の側が一番だって、蒼司と義父にお願いしたのだ。最初は反対されたし、蒼司は今でも快く思っていないだろう。いくら私に殺意がなかったといっても、毒を盛った事実は変わらないわけだし。

 私だって、蒼司の下で野々宮晴真が働くことになったのを心配している。きっと、気持ちは同じなんだろう。だけど──

「もうそんな顔をしないで!」
「……うむ」

 蒼司の手を握りしめ、風にゆらめく蓮池を眺めた。

 どんな事情があっても、あめさんは罪人に変わりない。そんな女中を側に置きたいと聞いて、とりわけ義父は強く反対した。それを、蒼司は苦虫を噛み潰したような顔で説得してくれたのだ。顔に「不本意だ」と書かれているようだったのは、今思い出しても、申し訳なさとおかしさが込み上げてくる。
 蒼司は本当に、私に甘いんだよね。

「ありがとう。私のわがままを聞いてくれて」
「……凛の望みはすべて叶えると決めているからな」
「でも、本当は嫌だったんでしょ?」

 握っていた指が強く握り返される。

「今でも不愉快だ」
「ふふっ、知ってるよ。私だって本音をいったら、蒼司さんの側に野々宮晴真がいるの嫌なんだよ」

 蒼司の戸惑う様子が、握り合う手を伝ってわかる。きっと振り返れば、驚いて目を見開いている顔があるのだろう。
 昇り始めた朝日に照らされる蓮池を眺めながら、その葉に隠れる池へと目を移した。

「蓮の花は泥水でしか咲かないって知ってる?」
「……仏法に、泥中(でいちゅう)の蓮という言葉があったな」
「仏法?」
「ああ。いくら穢れた環境に身を置いても、その穢れに染まらず清く生きよといった意味だ。──その話ではないのか?」