なにもできず、あめさんが弟の頬を撫でる様子を見つめていると、背後でどさっと音がした。
驚いて振り返ると、欄干に項垂れるようにして蒼司が倒れていた。
「蒼司さん!?」
駆け寄ると、左目を押さえた蒼司の指の間から、真っ赤な血が滴り落ちて着物を濡らしていた。
気を失ってはいないけど、凄く苦しそうに息をしている。
そういえば、前も左目を使った時に痛そうな顔をしていた。今回は、あの時よりも左目の力をいっぱい使ったから、こんな苦しんでいるのかな。
私に心配をかけたくないのか、平静を装うとする蒼司だけど、額には暗がりでもわかる玉の汗が浮かんでいた。
「問題ない」
「そんな、だって血が……」
血に濡れる手に触れようとすると、蒼司は欄干を掴んでいた手を放し、私の手首を掴んだ。
「穢れてしまう」
「なにをいってるの。早く、手当をしないと!」
「問題ない。直に治まる」
「強がらないでよ!」
呻く蒼司の手を振り払うと、蒼司は口を開きかけたまま私を凝視した。
「私、蒼司さんの妻でしょ? 心配くらい、させてよ。なにもできないけど……」
血に触ったくらいで、穢れる訳ないじゃない。どうして、好きな人の心配ひとつしちゃいけないの?
赤い指先に手を重ねる。
どうして痛みを癒せないのか。どうにかして、助けたいのに。それだけを思った。強く、ただ蒼司のことを思った。
その瞬間、夜空から銀の光が降ってきた。まるで粉雪のようにキラキラと。
光が蒼司の瞳へと落ちていく。
しばらくすると、肩を揺らすほど荒かった息が落ち着き始めた。
血に濡れた手が左眼から離れると、蒼司はゆっくりと瞬いた。
「……痛みが引いた」
驚いた顔で呟くと、私を見つめる。
「月の加護かもね。頑張った蒼司さんに、女神様がご褒美をくれたのかもしれないよ」
血に汚れる頬を着物の袖で拭うと、蒼司は「汚れてしまう」といって私の手を掴んだ。だけど、そのまま腕の中に引き入れて私を抱きしめる。
耳元で「ありがとう」と静かな声が響いた。
驚いて振り返ると、欄干に項垂れるようにして蒼司が倒れていた。
「蒼司さん!?」
駆け寄ると、左目を押さえた蒼司の指の間から、真っ赤な血が滴り落ちて着物を濡らしていた。
気を失ってはいないけど、凄く苦しそうに息をしている。
そういえば、前も左目を使った時に痛そうな顔をしていた。今回は、あの時よりも左目の力をいっぱい使ったから、こんな苦しんでいるのかな。
私に心配をかけたくないのか、平静を装うとする蒼司だけど、額には暗がりでもわかる玉の汗が浮かんでいた。
「問題ない」
「そんな、だって血が……」
血に濡れる手に触れようとすると、蒼司は欄干を掴んでいた手を放し、私の手首を掴んだ。
「穢れてしまう」
「なにをいってるの。早く、手当をしないと!」
「問題ない。直に治まる」
「強がらないでよ!」
呻く蒼司の手を振り払うと、蒼司は口を開きかけたまま私を凝視した。
「私、蒼司さんの妻でしょ? 心配くらい、させてよ。なにもできないけど……」
血に触ったくらいで、穢れる訳ないじゃない。どうして、好きな人の心配ひとつしちゃいけないの?
赤い指先に手を重ねる。
どうして痛みを癒せないのか。どうにかして、助けたいのに。それだけを思った。強く、ただ蒼司のことを思った。
その瞬間、夜空から銀の光が降ってきた。まるで粉雪のようにキラキラと。
光が蒼司の瞳へと落ちていく。
しばらくすると、肩を揺らすほど荒かった息が落ち着き始めた。
血に濡れた手が左眼から離れると、蒼司はゆっくりと瞬いた。
「……痛みが引いた」
驚いた顔で呟くと、私を見つめる。
「月の加護かもね。頑張った蒼司さんに、女神様がご褒美をくれたのかもしれないよ」
血に汚れる頬を着物の袖で拭うと、蒼司は「汚れてしまう」といって私の手を掴んだ。だけど、そのまま腕の中に引き入れて私を抱きしめる。
耳元で「ありがとう」と静かな声が響いた。

