月の導きで眼帯の陰陽師と結婚させられました

 毒を浄化できるとはいえ、だいぶ体力を使うようだ。
 丸一日、私は目を覚ますことなく(うな)されていたらしく、目を覚ましたものの体に力が入らず、かれこれ三日ほど布団の上で過ごしていた。
 あの後、大奥はどうなったのか気になるし、早く元気になって桜の方をお祝いに行きたいのだけど。

 ようやっと縁側まで歩けるようになった四日目の昼下がり。
 庭を眺めていると蒼司が手紙を持ってきた。

「姉上からだ」
「桜さんから?」

 手紙を開くと、和歌が綴られていた。

「鴬の待ちかてにせし梅が花、散らずありこそ思ふ子がため……?」

 意味は「鴬が待ちかねていた梅の花よ、散らないでほしい。思い慕う子のために」といった感じかな。首を傾げていると、横に座る蒼司は庭にある梅の木を指差した。

「私たちにとって、梅の木は慈しむ家族……姉上も、凛が倒れたことを心配しているのだろう」
「家族……桜さんこそ、悪阻が酷くて辛い時期なのに」
「それは大丈夫だろう。東雲から追加で女中を送ったからな」
「前の時と一緒ね」
「ああ。今度は男児であるとよいな」
 
 いいながら私の手を握る蒼司は、庭から視線を逸らし、その優しい微笑みを私に向けた。
 うんと頷きながら、指を握り返す。

「それにしても、将軍様の奥泊まりがないと清方様はおっしゃっていたが、全くなかったわけではなかったのだな」
「そうだね……外には漏らせないとかあったのかな」
「懐妊がはっきりわかるまでは、毒を盛られぬよう気を張り詰めていたのだろう」

 なるほど、それはありそうだ。特に、雨宮は対立する家門の女中なわけだし、清方様が疑って警戒するのもおかしくないわ。

「そっか……でも、なんかおかしくない?」
「おかしい?」
「私は妊娠したことないし、妊娠した人を知らないからわからなかったけど……雨宮さんが気付かなかったなんてこと、あるのかなって」

 桜の方が雨宮を遠ざけてはいなかったし、あれで妊娠に気づかないなんてことがあるのかな。

「清方様が上手く隠したのではないか? 体が弱いことで誤魔化しとおしたとか」
「そうなのかな……雨宮さんが元々仕えていた雪の方様の妊娠だって見てるんでしょ? だったら、悪阻に気づくんじゃないかな……」
「それはそうだが……雪の方様のことがあって、手を下せなかったのではないか?」
「うーん、それはありそうかも。桜さんとだいぶ仲がよかったみたいだし」

 頷きながらも、どうしてか違和感が残る。