「……ありがとうございます」
ほどよい温かさの湯呑を手にし、喉に流し込んだ。
白餡と一緒に喉へと流れていくお茶の中に、なにか、ざらりとしたものを感じた。まるで、溶け切っていない粉薬が舌に残るような感覚だ。和菓子を食べた時にはなかった。
鼓動が早くなり、お腹の奥が熱を持ち始めた。行き場のないそれに、息が苦しくなる。
「凛様、どうかされましたか?」
「……雨宮、さん?」
優しく響く声を仰ぎ見る。そこには欠片も笑顔のない静かな顔があり、感情の読めない瞳が私をじっと観察していた。
「お茶、熱かったですか?」
湯呑を取り上げられても、私は動くことができずにいた。まるで、金縛りにあったようだ。指先が痺れて動けない。
「少し冷ましたものがございますので、こちらをどうぞ」
「い、いえ……もう、お茶は……」
「どうぞ」
湯呑を持たされ、そのまま口元へと押し付けられる。
私は毒を飲んでも大丈夫。大丈夫だけど──喉の奥に流れ込むお茶の味なんてわからず、ごくりと嚥下する。二度、喉を鳴らした直後、身体がひくりと動いた。
無意識だった。湯呑を払い除けると、着物の合わせに残ったお茶がかかり、じわりと熱を持つ。
「──ゴホッ、ケホッ」
喉が熱い。お腹の中にも熱が広がっていく。
胸元を握りしめ、畳に爪を立てながら雨宮を見上げた。
「申し訳ありません、お召し物を汚してしまいましたね」
手拭いを出す雨宮はいっさいの迷いがない。慌てる様子もなく、私に手を伸ばす。
もしかして、その手拭いに毒が含まれてるとかじゃないでしょうね。
手を払い除け、立ち上がる。
「凛様、どうされましたか? そのようにふらつかれて、危のうございますよ」
「……近づかないで」
口をついて出た声は、ろれつが回っていなかった。
この場から逃げないと。そう思った直後、目の前が霞んだ。
まずい。このままだと毒の証拠を手に入れられない。どうにかしないと。
目の前にいる雨宮の足元が、ふと目についた。そこに転がるのは、さっき口にした湯呑だ。どうにかして、あれを手に入れないと。
浅い息を繰り返していると、遠くから「凛様!」と清方様の声が聞こえてきた。その瞬間、雨宮がわずかに顔色を変え、私から視線をそらした。
その一瞬を見逃さなかった。
私は雨宮に向かって倒れ込み、どさくさに紛れて掴んだ湯呑を袖の中へ落とした。
ほどよい温かさの湯呑を手にし、喉に流し込んだ。
白餡と一緒に喉へと流れていくお茶の中に、なにか、ざらりとしたものを感じた。まるで、溶け切っていない粉薬が舌に残るような感覚だ。和菓子を食べた時にはなかった。
鼓動が早くなり、お腹の奥が熱を持ち始めた。行き場のないそれに、息が苦しくなる。
「凛様、どうかされましたか?」
「……雨宮、さん?」
優しく響く声を仰ぎ見る。そこには欠片も笑顔のない静かな顔があり、感情の読めない瞳が私をじっと観察していた。
「お茶、熱かったですか?」
湯呑を取り上げられても、私は動くことができずにいた。まるで、金縛りにあったようだ。指先が痺れて動けない。
「少し冷ましたものがございますので、こちらをどうぞ」
「い、いえ……もう、お茶は……」
「どうぞ」
湯呑を持たされ、そのまま口元へと押し付けられる。
私は毒を飲んでも大丈夫。大丈夫だけど──喉の奥に流れ込むお茶の味なんてわからず、ごくりと嚥下する。二度、喉を鳴らした直後、身体がひくりと動いた。
無意識だった。湯呑を払い除けると、着物の合わせに残ったお茶がかかり、じわりと熱を持つ。
「──ゴホッ、ケホッ」
喉が熱い。お腹の中にも熱が広がっていく。
胸元を握りしめ、畳に爪を立てながら雨宮を見上げた。
「申し訳ありません、お召し物を汚してしまいましたね」
手拭いを出す雨宮はいっさいの迷いがない。慌てる様子もなく、私に手を伸ばす。
もしかして、その手拭いに毒が含まれてるとかじゃないでしょうね。
手を払い除け、立ち上がる。
「凛様、どうされましたか? そのようにふらつかれて、危のうございますよ」
「……近づかないで」
口をついて出た声は、ろれつが回っていなかった。
この場から逃げないと。そう思った直後、目の前が霞んだ。
まずい。このままだと毒の証拠を手に入れられない。どうにかしないと。
目の前にいる雨宮の足元が、ふと目についた。そこに転がるのは、さっき口にした湯呑だ。どうにかして、あれを手に入れないと。
浅い息を繰り返していると、遠くから「凛様!」と清方様の声が聞こえてきた。その瞬間、雨宮がわずかに顔色を変え、私から視線をそらした。
その一瞬を見逃さなかった。
私は雨宮に向かって倒れ込み、どさくさに紛れて掴んだ湯呑を袖の中へ落とした。

