会いにいった目的は女中たちの文字を集めることだったけど、そのこと抜きで楽しい勉強会だった。また勉強会をしましょうと約束までして、すっかり打ち解けることができた気がする。
戻った梅御殿の座敷で、持ち帰ってきた何枚もの半紙を文机に置く。大伴家持が詠んだ和歌を書く女中たちの姿を思い浮かべると、つい口許が緩んだ。
どんな時代でも、恋の話はいいものね。私も、そんなキラキラする恋がしたい。素敵な人と時間をすごしたいってずっと思ってきた。
半紙を一枚ずつ捲り、ふと自分のこれまでを脳裏によぎらせた。
高校一年の時、初めて付き合った彼はマザコンでモラハラ男だった。
初めこそ、お母さん想いの優しい人だと思ってたけど、事あるごとに「俺の母さんだったら」「俺の母さんはできるのに」と比べられた。その上、私ができないことを見つけると「こんなの常識だろ」と説教を始める。一年と持たずに別れたら、私をビッチ扱いして悪い噂を流す始末だった。とんだ初恋だった。
二人目の彼氏は、学校の外で出会った年上だった。年上といっても同じ高校生で、最初の彼と真反対で勉強が苦手なタイプ。
私を可愛い可愛いといって甘やかしてくれた。好きになるより好かれた方が幸せだと友人からいわれ、なんとなく付き合うようになった。それから束縛が始まった。位置情報アプリで常に居場所を確認された。彼の知らない男子──たとえクラスメイトだとしても──と一緒にいただけでお説教。SNSを監視され始め、パスワードを教えろとまでいい出し……怖くなって逃げた。
やっぱり真面目な人じゃないとと思って、大学に入ってから付き合ったのは、真面目そうに見えたのに二枚舌で浮気性。女の子をアクセサリーかなんかと勘違いしている人だった。
少し思い返しただけでも、見事な男運のなさだわ。男を見る目がなさすぎる自分にも呆れる。
大伴家持みたいに、和歌で気持ちを届けてほしいわけじゃない。でも、相手を思って言葉を綴るような優しさや、情の深さみたいなのを持ち合わせた人と恋をしたかったものね。
ぼんやりと半紙を眺めていたら「待たせてしまったか」と声をかけられた。
振り返ると、女中をつれた蒼司が縁側に立っていた。
「お義父様とのお話は終わったの?」
「ああ、そのことで話したいんだが、その前にこっちで少し茶を飲まないか?」
いいながら、蒼司は縁側に腰を下ろした。すると、女中が持っていたお盆を下ろした。そこには小皿と湯呑が並んでいる。
文箱にもらってきた半紙の束を入れ、いそいそと縁側に出た。
戻った梅御殿の座敷で、持ち帰ってきた何枚もの半紙を文机に置く。大伴家持が詠んだ和歌を書く女中たちの姿を思い浮かべると、つい口許が緩んだ。
どんな時代でも、恋の話はいいものね。私も、そんなキラキラする恋がしたい。素敵な人と時間をすごしたいってずっと思ってきた。
半紙を一枚ずつ捲り、ふと自分のこれまでを脳裏によぎらせた。
高校一年の時、初めて付き合った彼はマザコンでモラハラ男だった。
初めこそ、お母さん想いの優しい人だと思ってたけど、事あるごとに「俺の母さんだったら」「俺の母さんはできるのに」と比べられた。その上、私ができないことを見つけると「こんなの常識だろ」と説教を始める。一年と持たずに別れたら、私をビッチ扱いして悪い噂を流す始末だった。とんだ初恋だった。
二人目の彼氏は、学校の外で出会った年上だった。年上といっても同じ高校生で、最初の彼と真反対で勉強が苦手なタイプ。
私を可愛い可愛いといって甘やかしてくれた。好きになるより好かれた方が幸せだと友人からいわれ、なんとなく付き合うようになった。それから束縛が始まった。位置情報アプリで常に居場所を確認された。彼の知らない男子──たとえクラスメイトだとしても──と一緒にいただけでお説教。SNSを監視され始め、パスワードを教えろとまでいい出し……怖くなって逃げた。
やっぱり真面目な人じゃないとと思って、大学に入ってから付き合ったのは、真面目そうに見えたのに二枚舌で浮気性。女の子をアクセサリーかなんかと勘違いしている人だった。
少し思い返しただけでも、見事な男運のなさだわ。男を見る目がなさすぎる自分にも呆れる。
大伴家持みたいに、和歌で気持ちを届けてほしいわけじゃない。でも、相手を思って言葉を綴るような優しさや、情の深さみたいなのを持ち合わせた人と恋をしたかったものね。
ぼんやりと半紙を眺めていたら「待たせてしまったか」と声をかけられた。
振り返ると、女中をつれた蒼司が縁側に立っていた。
「お義父様とのお話は終わったの?」
「ああ、そのことで話したいんだが、その前にこっちで少し茶を飲まないか?」
いいながら、蒼司は縁側に腰を下ろした。すると、女中が持っていたお盆を下ろした。そこには小皿と湯呑が並んでいる。
文箱にもらってきた半紙の束を入れ、いそいそと縁側に出た。

