「……この目は、ここにあらぬモノとの繋がりを視ることができる」
「繋がり……?」
「そうだ。……運命の赤い糸という言葉を知っているか?」
「左手の小指に結ばれてるっていう?」
小首を傾げると、蒼司は少し驚いた顔をして「凛の故郷ではそうなのか」と呟いた。
「月江戸では足に結ばれているとされるが、それと似て、物事にはあらゆる繋がりがあるものだ。私の目はその繋がりを視ることができる」
「……よくわからないけど、それでこれを送ってきた人を探そうとしたの?」
眼帯をつけ直しながら、蒼司は苦笑を浮かべた。
「ああ、術者を暴いてやろうと思ったが、どうやら私の目を知っているようだ。見事に痕跡が散り散りとなっている」
「焼けたから、なくなっちゃったの?」
「なくなってはいないが、糸が絡まっているようで探れん……この屋敷に持ち込むまでに、人と方角をずいぶん変えて運んだのだろう」
話を聞きながら、差出人名がないスパムメールを思い出した。
陰陽術にも、発信元を隠して配信するメールみたいなやり口があるってことかな。あるいは乗っ取りDMみたいに、他人のを使ったり──あれって発信源つきとめるとか難しいんだよね。情報開示請求だってすぐできる訳じゃないらしいし。
そんな感じのことを、蒼司は一人でやろうとしてるのか。陰陽術がどのくらい凄いか知らないけど大変そうだな。なにか手助けできたらいいんだけど。
どうにかして術者を見つける手助けができたらいいんだけど。
私にはどうしたらいいか見当もつかず、眉間にしわを寄せて考えていると、蒼司が「どうしたものか」と呟いた。
「術者と繋がる者が見つかればよいのだが……」
「仲間ってこと?」
「そうでなくとも、例えば、この文を届けた者や──」
考えながら眼帯に触れる蒼司の横顔を見つめていると、彼は急に黙り込んだ。
しとしとと降る雨が少し強くなってきた。
手を止めて黙ってしまった蒼司だが、しばらくするとなにか思い出したようで、低く「そういえば」と呟いた。
「郭公の文字だけが蠱毒の混ざる墨だったな」
「そうなの?」
「ああ。この和歌からは異なる色が見える。郭公の文字を書いた者が術者で、他は別の者が書いたのであろう」
焼け落ちた郭公の文字がどんなだったか思い出せないけど、残る文字を見てなるほどと思った。
「女の人が書きそうな文字だよね」
「凛もそう思うか?」
「うん。筆使いがしなやかっていうのかな……」
「しなやか……郭公の文字は呪詛を込めたからか、力のあるものだった」
そんなところまで見ていたのか。
手紙をじっと見る蒼司に感心しながら、焼け焦げた和歌をもう一度見た。
「どうして和歌だったのかな。別に、和歌じゃなくても呪いの言葉を書けばよかったんじゃない?」
「それでは文の中身を確かめた者が、私に届け──」
いいかけて、蒼司は口を噤んだ。
「繋がり……?」
「そうだ。……運命の赤い糸という言葉を知っているか?」
「左手の小指に結ばれてるっていう?」
小首を傾げると、蒼司は少し驚いた顔をして「凛の故郷ではそうなのか」と呟いた。
「月江戸では足に結ばれているとされるが、それと似て、物事にはあらゆる繋がりがあるものだ。私の目はその繋がりを視ることができる」
「……よくわからないけど、それでこれを送ってきた人を探そうとしたの?」
眼帯をつけ直しながら、蒼司は苦笑を浮かべた。
「ああ、術者を暴いてやろうと思ったが、どうやら私の目を知っているようだ。見事に痕跡が散り散りとなっている」
「焼けたから、なくなっちゃったの?」
「なくなってはいないが、糸が絡まっているようで探れん……この屋敷に持ち込むまでに、人と方角をずいぶん変えて運んだのだろう」
話を聞きながら、差出人名がないスパムメールを思い出した。
陰陽術にも、発信元を隠して配信するメールみたいなやり口があるってことかな。あるいは乗っ取りDMみたいに、他人のを使ったり──あれって発信源つきとめるとか難しいんだよね。情報開示請求だってすぐできる訳じゃないらしいし。
そんな感じのことを、蒼司は一人でやろうとしてるのか。陰陽術がどのくらい凄いか知らないけど大変そうだな。なにか手助けできたらいいんだけど。
どうにかして術者を見つける手助けができたらいいんだけど。
私にはどうしたらいいか見当もつかず、眉間にしわを寄せて考えていると、蒼司が「どうしたものか」と呟いた。
「術者と繋がる者が見つかればよいのだが……」
「仲間ってこと?」
「そうでなくとも、例えば、この文を届けた者や──」
考えながら眼帯に触れる蒼司の横顔を見つめていると、彼は急に黙り込んだ。
しとしとと降る雨が少し強くなってきた。
手を止めて黙ってしまった蒼司だが、しばらくするとなにか思い出したようで、低く「そういえば」と呟いた。
「郭公の文字だけが蠱毒の混ざる墨だったな」
「そうなの?」
「ああ。この和歌からは異なる色が見える。郭公の文字を書いた者が術者で、他は別の者が書いたのであろう」
焼け落ちた郭公の文字がどんなだったか思い出せないけど、残る文字を見てなるほどと思った。
「女の人が書きそうな文字だよね」
「凛もそう思うか?」
「うん。筆使いがしなやかっていうのかな……」
「しなやか……郭公の文字は呪詛を込めたからか、力のあるものだった」
そんなところまで見ていたのか。
手紙をじっと見る蒼司に感心しながら、焼け焦げた和歌をもう一度見た。
「どうして和歌だったのかな。別に、和歌じゃなくても呪いの言葉を書けばよかったんじゃない?」
「それでは文の中身を確かめた者が、私に届け──」
いいかけて、蒼司は口を噤んだ。

