「彩葉、凛殿は叔父上のお嫁さんですよ」
「……りんしゃま?」
「はい、凛です。彩葉姫様、よろしくお願いします」
彩葉姫のつたない喋り方が微笑ましくて、思わず口元をほころばせると、ふっくらとした小さな顔に笑みが広がった。
本当に可愛いな。なんだか小動物みたいだし、きっと将軍様も可愛がっているに違いない。
「凛殿、東雲家はどうですか?」
「……まだ嫁いで日が浅いので、梅御殿の中を覚えるので精いっぱいです」
正直に打ち明けると、桜の方は小さく「まあ、そうなの」と応えながら微笑んでくれた。本当に優しさが滲んでくる人だ。もしかしたら将軍様も、彼女のたおやかさに惹かれたのかもしれない。
「そんな時に、挨拶に来て下さったのね。ありがとう」
「桜様……義姉上様の体調が優れぬとお聞きして、少しでも気晴らしになれないかと思いました」
「まあ、凛殿は優しいのね」
優しい微笑みが眩しすぎて、わずかな罪悪感を抱いた。
すみません。本当は貴女から大奥のことを訊き出そうとしています。心の内で謝罪をしながら、差し出されたお茶を一口飲んだ。
爽やかな風味に、特別な違和感はない。
来たばかりの客人に毒を入れるなんてことはないだろうけど。なにか違和感があれば、こぼすふりをして裾にかけ、それを蒼司に調べてもらおうと思ったけど……杞憂だったみたい。
「厄介な家に嫁いでしまったと思いかしら?」
「そ、そんなことはないです」
私が黙ってしまったたからか。桜の方は少し眉をひそめて笑った。
図星を指された気分で、つい顔を引きつらせた。
家というよりも月江戸そのものが厄介なんだけど。まさか、ここでそんな話をするわけにもいかず、口籠って視線を逸らしてしまった。すると、桜の方は小さく笑って「厄介な家よね」と囁いた。
「東雲家は武家でありながら、当主は代々将軍家にお仕えする筆頭陰陽師。その嫡男も家業を継ぐべく陰陽師としてお勤めをしている。姉は大奥入りをして側室になってるなんて、私だったら、そんな家に嫁ぎたくないわ」
これは頷いていいのだろうか。
桜の方は変わらずに優しく微笑んでいるけど、正解がわからず、思わず俯いた。すると「でも大丈夫」と優しい声がかけられた。
「蒼司は優しい子ですもの」
「……はい」
「なにか困ったことがあれば、相談に乗りますからね。色々と、わからないことが多くてお困りでしょう?」
意味深な物言いにどきっとした。
「……りんしゃま?」
「はい、凛です。彩葉姫様、よろしくお願いします」
彩葉姫のつたない喋り方が微笑ましくて、思わず口元をほころばせると、ふっくらとした小さな顔に笑みが広がった。
本当に可愛いな。なんだか小動物みたいだし、きっと将軍様も可愛がっているに違いない。
「凛殿、東雲家はどうですか?」
「……まだ嫁いで日が浅いので、梅御殿の中を覚えるので精いっぱいです」
正直に打ち明けると、桜の方は小さく「まあ、そうなの」と応えながら微笑んでくれた。本当に優しさが滲んでくる人だ。もしかしたら将軍様も、彼女のたおやかさに惹かれたのかもしれない。
「そんな時に、挨拶に来て下さったのね。ありがとう」
「桜様……義姉上様の体調が優れぬとお聞きして、少しでも気晴らしになれないかと思いました」
「まあ、凛殿は優しいのね」
優しい微笑みが眩しすぎて、わずかな罪悪感を抱いた。
すみません。本当は貴女から大奥のことを訊き出そうとしています。心の内で謝罪をしながら、差し出されたお茶を一口飲んだ。
爽やかな風味に、特別な違和感はない。
来たばかりの客人に毒を入れるなんてことはないだろうけど。なにか違和感があれば、こぼすふりをして裾にかけ、それを蒼司に調べてもらおうと思ったけど……杞憂だったみたい。
「厄介な家に嫁いでしまったと思いかしら?」
「そ、そんなことはないです」
私が黙ってしまったたからか。桜の方は少し眉をひそめて笑った。
図星を指された気分で、つい顔を引きつらせた。
家というよりも月江戸そのものが厄介なんだけど。まさか、ここでそんな話をするわけにもいかず、口籠って視線を逸らしてしまった。すると、桜の方は小さく笑って「厄介な家よね」と囁いた。
「東雲家は武家でありながら、当主は代々将軍家にお仕えする筆頭陰陽師。その嫡男も家業を継ぐべく陰陽師としてお勤めをしている。姉は大奥入りをして側室になってるなんて、私だったら、そんな家に嫁ぎたくないわ」
これは頷いていいのだろうか。
桜の方は変わらずに優しく微笑んでいるけど、正解がわからず、思わず俯いた。すると「でも大丈夫」と優しい声がかけられた。
「蒼司は優しい子ですもの」
「……はい」
「なにか困ったことがあれば、相談に乗りますからね。色々と、わからないことが多くてお困りでしょう?」
意味深な物言いにどきっとした。

