月の導きで眼帯の陰陽師と結婚させられました

 てことは、近世ヨーロッパみたいな煌びやかなファンタジー世界に……それならここに現れるのは、ドレス姿の女神様が定番よね。私の前に現れた絶世の美女は、どう見たってヨーロピアンな感じじゃないわよ。

 輝く着物姿の女神様なんて聞いたことないんだけど。

 観察するように私を見るおそらく女神様は、困惑する私の髪に触れてきた。顎のラインで内巻きにしているボブカットは、つい三日前に切ったばかりだ。

「見た目はまあ、悪くないの。少しばかり短い髪は見劣りするが……日が経てば伸びよう」
「──は?」
「どれ、そなたに相応しい着物をあつらえてやろう」

 透き通る白さの指がひらりと返され、その掌に輝く星が集まる。ふうっと息が吹きかけられると、キラキラとした光が私を包み込んだ。
 眩しさに一度、目を閉ざした。直後、きゅうっと胸周りが締め付けられる。なにが起きたのかと慌てて目を開けると、私はまるで神社の巫女さんみたいな恰好をしていた。

「それに、色々と身体も強化しておいてやるかの」
「強化って? むきむきの筋肉質は嫌なんですけど……」
「そうではない。危ないものを口にしても、大概のものは浄化できる体にしておいてやろう」
「あ、危ないもの?」

 ただならぬ気配を感じ、顔が引きつった。

「そなたのいた世界と少し違うからの。せっかくのセカンドライフ 、毒でも口にしたら大変であろう?」
「待って、そんな危険な世界なの!?」

 女神様の手が再び翻ると、銀色の光が集まってきた。それに再び、女神様の息がふっとかけられると、私に光がまとわりつき、今度は染み込むように入り込んできた。まるで、カラカラのスポンジが水を吸うみたいに。

「な、なにこれ!?」

 胸が熱くなり、心臓が激しく鳴った直後、体の中でなにかが弾けたような気がした。それと同時に、身体がふっと軽くなった。

「これで、悪しきものが体内に入っても、そなたを滅ぼすことは叶わぬ。男運がなかったことは忘れ、新しい生を楽しむことじゃ」
「……え?」
「そなたが望んだ、優しくて気遣いのできる(おのこ)の元へ送ってやろう」
「は? それってどういう意味──!?」

 それにどうして、男運がないって知っているの。疑問を投げかけようとした瞬間、目の前が真っ白になった。

「待って。待ってよ、女神様!」

 私の声は虚しくも光に飲み込まれ、あまりの眩さに目を閉ざすしかなかった。
 ああ、本当についてない。
 男運どころじゃなくて、私の人生そのものがついていなかった。死んだ上、よくわからない世界に飛ばされるなんて。