大奥といえば、世継ぎ問題を解決する場所だから、確かに大問題よね。
「さらに、ここのところ将軍の奥泊まりがなく、懸念しておりました」
奥泊まり──正室や側室と夜をすごすってことよね。
大奥といえば美女が何百人もいるから、将軍様のお手付きなんかもあるもんだと思ってたけど、案外、お盛んな訳じゃないのね。なんて俗っぽいことを考えていたら、ため息が聞こえてきた。
「御子を授かれないのは将軍家の一大事にございます。殿が奥入りをしない理由に、体調が優れぬと申されることもございます。ゆえに、なにか怪しい術でもかけられたのではないかと、将軍家お抱えの筆頭陰陽師であられる東雲殿に相談した次第にございます」
「あの、つまり……呪いとか災いだとしたら、巫女の力で解決して欲しい……そういうことですか?」
「ご理解が早くて助かります」
ほっと安堵の表情を浮かべた清方様に反し、私の顔は引きつるばかりだ。思わず、祈るような視線を跳ね除けるように「無理です!」と大きな声を上げてしまった。
突き放したような私の物言いに、この場にいた誰もが目を丸くした。
私の「無理です!」断言に困惑する清方様が、静かに口を開いた。
「……なにゆえですか?」
「それは、その……私には神通力とか特別な力がある訳じゃないんです。この世界に呼び出されて、わからないことばかりで。そんな急に、呪いとかいわれても困ります!」
話を聞くとはいったし、私にできることなら手を貸したいって気持ちもある。でも、私が女神様にもらったのは毒とか異物に対する耐性だもの。ちょっと体が丈夫なだけで、呪いを解いたり災いを跳ね除けるようなことはできない。
「それに……祈るだけなら、それこそ陰陽師の皆さんのお仕事です!」
きっぱりいうと、蒼司が小さく笑った。その横で義父と清方様は、まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
なにか変なことをいってしまったのだろうか。
少しばかり不安になって蒼司を見ると、小さく咳払いした彼は清方様を真っ向から見据えた。
「清方様、あまり巫女様を試すような発言はおやめください」
「ふふっ……その様ですね。失礼をいたいしました、巫女様」
清方様の目じりにしわができ、その赤い唇が少し弧を描いた。怖そうな人だと思ったけど、微笑むと温かい母親のように見える。
なにが起きたのかわからず戸惑っていると、清方様は「ご無礼をお許しください」といって頭を下げた。
「さらに、ここのところ将軍の奥泊まりがなく、懸念しておりました」
奥泊まり──正室や側室と夜をすごすってことよね。
大奥といえば美女が何百人もいるから、将軍様のお手付きなんかもあるもんだと思ってたけど、案外、お盛んな訳じゃないのね。なんて俗っぽいことを考えていたら、ため息が聞こえてきた。
「御子を授かれないのは将軍家の一大事にございます。殿が奥入りをしない理由に、体調が優れぬと申されることもございます。ゆえに、なにか怪しい術でもかけられたのではないかと、将軍家お抱えの筆頭陰陽師であられる東雲殿に相談した次第にございます」
「あの、つまり……呪いとか災いだとしたら、巫女の力で解決して欲しい……そういうことですか?」
「ご理解が早くて助かります」
ほっと安堵の表情を浮かべた清方様に反し、私の顔は引きつるばかりだ。思わず、祈るような視線を跳ね除けるように「無理です!」と大きな声を上げてしまった。
突き放したような私の物言いに、この場にいた誰もが目を丸くした。
私の「無理です!」断言に困惑する清方様が、静かに口を開いた。
「……なにゆえですか?」
「それは、その……私には神通力とか特別な力がある訳じゃないんです。この世界に呼び出されて、わからないことばかりで。そんな急に、呪いとかいわれても困ります!」
話を聞くとはいったし、私にできることなら手を貸したいって気持ちもある。でも、私が女神様にもらったのは毒とか異物に対する耐性だもの。ちょっと体が丈夫なだけで、呪いを解いたり災いを跳ね除けるようなことはできない。
「それに……祈るだけなら、それこそ陰陽師の皆さんのお仕事です!」
きっぱりいうと、蒼司が小さく笑った。その横で義父と清方様は、まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
なにか変なことをいってしまったのだろうか。
少しばかり不安になって蒼司を見ると、小さく咳払いした彼は清方様を真っ向から見据えた。
「清方様、あまり巫女様を試すような発言はおやめください」
「ふふっ……その様ですね。失礼をいたいしました、巫女様」
清方様の目じりにしわができ、その赤い唇が少し弧を描いた。怖そうな人だと思ったけど、微笑むと温かい母親のように見える。
なにが起きたのかわからず戸惑っていると、清方様は「ご無礼をお許しください」といって頭を下げた。

