月の導きで眼帯の陰陽師と結婚させられました

「わからないことばかりだと思います。ですが、私がお守りします」
「……守るって、巫女の務めってそんなに危険なんですか? その、妖怪と戦ったりするんですか?」

 おずおずと訊けば、蒼司はまた目を見開いた。その直後、ぷっと小さく噴き出して笑う。今まで静かな物言いをしていた彼が笑いを堪えて肩を震わせる姿に驚き、きょとんとしていると「すみません」と震えを堪える声がした。

「私……変なこと訊きましたか?」
「いいえ、なにも。ただ……ずいぶんと(きも)の据わったお方だと思いまして」
「そうでしょうか?」
「ええ。ご安心ください。荒事は私たち陰陽師の仕事です」
「……てことは、やっぱり妖怪はいるんですね」
「いると思えばおりますが、ないと思えばおらぬものです」

 まるで謎かけのようなことをいうわね。
 静かに「寝ますか」といった蒼司は、行燈の灯火をそっと消した。

 行燈の灯火が消えると、部屋は一瞬にして暗闇に覆われた。
 慣れない箱のついた枕を押しのけて横になると、暗闇の中で「凛様」と私を呼ぶ声がした。

「ご家族と引き離してしまったこと、心よりお詫びいたします」

 静かな声に、ずきっと胸が痛んだ。

 私がお風呂に入っている間、もしかして、ずっと考えていてくれたのかな。

「私が夫ではご不満でしょうが、凛様に不便がないよう尽くさせていただきます」
「……それなら、まずはその喋り方を止めてもらっていいですか?」
「喋り方、ですか?」
「だって蒼司さんの喋り方、私のことを同等に見てないですもの。距離を感じます」
「距離……」

 小さく呟いた蒼司から返事はない。ややあって「凛様」と私を呼ぶ声がした。そう、距離を感じるっていうのは、まずそこよ。特に様付けが嫌すぎる。
 もやっとして口を(つぐ)んでいると、もう一度名を呼ばれた。

「凛様、寝てしまわれましたか?」
「……喋り方。それに、様付けも嫌です」

 寝返りを打って蒼司の方を向くと、窓から差し込む月明かりを浴びた綺麗な顔がうっすらと見えた。また困った顔をしている。
 さっきから、私は彼を困らせてばかりみたい。でも、これだけは譲れない。

「契約結婚は受け入れます。その代わり、私のことは凛って呼んでください。丁寧な言葉もなしですよ」

 語気を強めにいうと、小さなため息が聞こえた。

「異世界の女性とは、我が強いのだな」