贅沢に湯の張られた檜の湯船で深く息をついた。
木戸の向こうで案内をしてくれた女中が待っている。体を洗いますといって中まで入ろうとしたが、さすがに止めた。二十歳も過ぎているのに、体を洗ってもらうなんて恥ずかしいじゃない。それも、赤の他人にだ。
もう一度、長く息を吐きながら、色々なことが起きすぎたなと改めて思う。
「成仏した方が楽だったのかな」
湯気が昇っていく天井を見上げて、ぽつりと呟く。だけど、バスに轢かれて死ぬのは嫌だし、失恋ばかりの残念な気持ちで死んでいくのも悲しすぎる。
「……女神様、恋する相手を見つけるチャンスとか、ないんですか?」
ここにはいない女神様に問いかけてみるも、当然、返事はない。
顔の半分まで湯船に浸り、ぶくぶくと息を吐き出しながら、蒼司の綺麗な顔を思い出す。
こんな形の出会いじゃなかったら、恋に落ちていたかもしれない。そう簡単に出会えるレベルの顔じゃないわ。眼帯をしてるからミステリアスな雰囲気もあって、平凡な私には不釣り合いなイケメンだった。
みっともなく泣いた自分を思い出し、部屋に戻るのが恥ずかしくなってきた。
わかってるよ。ここで生きていくしかないことくらい。
「物語のヒロインみたいに、決断するのって難しいな……」
私が異世界恋愛の主人公なら、思い切ってこの屋敷を飛び出して月江戸でスローライフをしてみるとか?
でも、私には料理スキルもお薬を作る才能もない。
じゃあ、思い切って大奥に飛び込んで将軍様とラブロマンスを狙ってみる?
いやいや、どう考えたって陰謀渦巻くお城なんて苦労が絶えないでしょう。全力回避ルートだわ。それなら契約結婚の方がまだ安全だ。
ドラマみたいに、花街で花魁になって一花咲かせるみる?
恋愛もしてないのに、身売りするって、もう詰んでるよね。体の関係から始まる恋とか、苦労しか想像できない。
「……もっとラノベ読んでおけばよかった」
いや、それが参考になるかはわからないけど。
「月江戸か……江戸幕府みたいなら、上流階級では結婚相手を選べないのが常識よね」
恋愛結婚をしたいだなんて、このご時世で許されるはずもないだろう。だとしたら、蒼司に向けた私の言動は八つ当たりも同じだ。
申し訳ないことをしちゃったな。
少しのぼせて熱くなった息を吐き、おもむろに湯船から上がった。
薄い着物を着せられた後、女中に私の部屋となる座敷へ案内してもらった。
木戸の向こうで案内をしてくれた女中が待っている。体を洗いますといって中まで入ろうとしたが、さすがに止めた。二十歳も過ぎているのに、体を洗ってもらうなんて恥ずかしいじゃない。それも、赤の他人にだ。
もう一度、長く息を吐きながら、色々なことが起きすぎたなと改めて思う。
「成仏した方が楽だったのかな」
湯気が昇っていく天井を見上げて、ぽつりと呟く。だけど、バスに轢かれて死ぬのは嫌だし、失恋ばかりの残念な気持ちで死んでいくのも悲しすぎる。
「……女神様、恋する相手を見つけるチャンスとか、ないんですか?」
ここにはいない女神様に問いかけてみるも、当然、返事はない。
顔の半分まで湯船に浸り、ぶくぶくと息を吐き出しながら、蒼司の綺麗な顔を思い出す。
こんな形の出会いじゃなかったら、恋に落ちていたかもしれない。そう簡単に出会えるレベルの顔じゃないわ。眼帯をしてるからミステリアスな雰囲気もあって、平凡な私には不釣り合いなイケメンだった。
みっともなく泣いた自分を思い出し、部屋に戻るのが恥ずかしくなってきた。
わかってるよ。ここで生きていくしかないことくらい。
「物語のヒロインみたいに、決断するのって難しいな……」
私が異世界恋愛の主人公なら、思い切ってこの屋敷を飛び出して月江戸でスローライフをしてみるとか?
でも、私には料理スキルもお薬を作る才能もない。
じゃあ、思い切って大奥に飛び込んで将軍様とラブロマンスを狙ってみる?
いやいや、どう考えたって陰謀渦巻くお城なんて苦労が絶えないでしょう。全力回避ルートだわ。それなら契約結婚の方がまだ安全だ。
ドラマみたいに、花街で花魁になって一花咲かせるみる?
恋愛もしてないのに、身売りするって、もう詰んでるよね。体の関係から始まる恋とか、苦労しか想像できない。
「……もっとラノベ読んでおけばよかった」
いや、それが参考になるかはわからないけど。
「月江戸か……江戸幕府みたいなら、上流階級では結婚相手を選べないのが常識よね」
恋愛結婚をしたいだなんて、このご時世で許されるはずもないだろう。だとしたら、蒼司に向けた私の言動は八つ当たりも同じだ。
申し訳ないことをしちゃったな。
少しのぼせて熱くなった息を吐き、おもむろに湯船から上がった。
薄い着物を着せられた後、女中に私の部屋となる座敷へ案内してもらった。

