月の導きで眼帯の陰陽師と結婚させられました

「────えっと、巫女ってどういうことですか?」
「じゃから、お主に妾の恩恵を与え、月江戸で巫女になってもらうことにした」

 白無垢のように真っ白で、金色の刺繍が施された絢爛豪華な着物を身にまとう絶世の美女が、妖艶な笑みをたたえた。
 待って、意味がわからない。

 さっきまで私は、頼まれて出た合コンの帰り道、一人寂しく繁華街の歩道を歩いていたのよ。

 過去に付き合った男は、モラハラ男子や浮気男ばかり。自他とも認める男運マイナスな人生の中、やっと見つけたと思った気遣いと優しさみたいな彼は、道路を挟んだむこうの歩道で、私の親友とイチャイチャしながら歩いていた。
 やっと心惹かれる人が現れた。また恋愛してみようかな……と思っていた矢先に、失恋確定だなんて。

 衝撃で頭が真っ白になった。そこに突っ込んできた路線バス。眩しいヘッドライトと悲鳴、喧噪──誰かが「危ない!」って叫んだけど、私の足は動かなかった。

 どうしてここまで運がないの。男運がないだけでも散々だっていうのに、なんで、最期に見るのがバスのヘッドライトなのよ。
 そうして、光が強くなってしばらくしたら、この真っ白な空間にいた。

 着ている服はそのままだ。合コンのために頑張っておしゃれをしたラベンダーピンクのワンピース。でも、持っていたバッグは見当たらない。ああ、バッグに読みかけの時代小説があったのに。主人公の葛葉はちゃんと思いを告げられたのかな。
 失恋確定だけじゃなくて、物語の結末を知ることもできずに死ぬとか、運がないどころの話じゃない。

 色々思い出して憂鬱になっていると「月宮凛、妾の巫女になるか?」と絶世の美女が聞いてきた。

「選択肢があるの?」
「それくらいはの。一つは、妾の巫女となり月江戸にゆく」
「月、江戸?……もう一つは?」
「元の世界に戻って昇天することじゃな」
「昇天……死ぬってこと!? そんなの選択肢っていわないでしょ!」

 どう考えたって一択じゃない。
 理不尽さに身を震わせていると、絶世の美女が私に近づいてくる。長い髪や睫毛まで銀色で、本当に綺麗な女の人だ。
 金色に輝く瞳がじっと私を見つめて「戻るかの?」と尋ねてきた。

「……巫女になるって、なにするのよ」
「なに、巫女を呼び寄せる者のところで、手を貸すだけじゃ」
「呼び寄せるって……」

 もしかして、それってラノベによくある異世界転生とか召喚って話かしら。