宮古馬

 方策を聞き出そうとした清隆によせられたのは妙案ではなくため息だった。ここからはお前が頭を捻るんだ、ということらしい。店主は清隆以上に拓三のことを知っている。旧知の仲というやつだ。彼がこのような言い方をするからには、拓三自身心の中では揺れているのかもしれない。
「俺にできることならなんだってやる。清隆にだって譲れない想いがあるんだろ。あとちょっとだけでも、粘ってみないか」

 酔っ払った拓三を無理やりタクシーに詰め込んで帰した後、清隆はインターネットに転がっている宮古馬の情報を漁ってみた。いくつか動画がアップロードされていたので、実物を知っている彼だったが一応目につくものは確認してみる。
 動画のいくつかには繁体字や韓国語で書かれたタイトルもあり、主にアジアの外国人からこの馬に関心が寄せられているらしかった。さらに動画内では見慣れた農場が映し出されていること何度かあり、それは拓三の農場であった。
 翻訳アプリを駆使しながら編集された動画の内容を確かめていった清隆は、調べるほどに頭を抱える羽目になる。全体を通して、宮古馬ではなく飼い主である拓三を非難する意見が寄せられていたからだ。
「乗馬させてくれなかった」
「販売所の卵の購入を拒否された」
「何もしていないのにいきなり怒鳴られた」
 ネガティブな意見ばかりである。中には英語を話す外国人の動画もあって、動画内で若い男性の声が敷地内を歩き回る馬についてこう語っていた。
「あの馬はかわいそうだ。だって硬い岩が散らばった場所を歩かされているのだから。離れた場所からは観察できないが、きっと蹄はぼろぼろだろう。体も小さく、その割に頭が大きくて歪だ。まるで奇形児のよう。あの馬を解放できる者はいないのか」
 アメリカへ視察にも行ったことのある清隆は多少なりとも英語の心得があった。顔は映っていないにせよ男性の声は随分悲壮的だったので、それも加味して翻訳してみるとこのようになった。
 これらの意見のほとんど全ては、推測でしかないものの外国人観光客による筋違いの文句であるように感じる。乗馬については言わずもがな、卵の購入拒否については画面の端に割れた殻が散乱しているところから食べ物を粗末に扱ったのが原因だろうし、何もしていないのに怒鳴られたというものに至っては、拓三が現れる直前に撮影者の子供が馬の脚を殴りつけている場面が見られた。この最後のものに関しては撮影者の顔も映されていて、若い母親と五歳ごろの娘というところからするに拓三が話していたあの親子かもしれない。