馬の話はそれきりとなり、後の時間は全て楽しい食事に費やされることになる。二人は馴染みの店ということも手伝って上機嫌、隣の席に座った若い夫婦に絡むくらいには酒に酔っていた。ここは勝手知ったる自慢の店なんです、などよく訳のわからないことを喋り続け、普段は酔っ払いのブレーキ役に徹する清隆ですら今宵は顔を赤らめげらげら笑っているのであった。仕事以外で拓三に会うのは久しぶりという特別感がそうさせたのかもしれなかった。
食事が済んでも二人は延々談笑をした。仕事のことや、家族の愚痴などを漏らした。とは言っても清隆は独身なので、家庭環境についてはおおかた拓三だけが話を広げていった。息子夫婦が子供を作る気がなく、孫の顔も拝めずにこのままくたばるのではないかと彼は心配そうに語る。その頃には落ち着きを取り戻していた清隆は、だから馬にこだわるのではないかと邪推したりしていた。
閉店までにはまだ時間があったものの、これ以上席を独占していては流石に迷惑だろうということで二人は会計を済ませることにした。もうまともに会話もできなくなり畳の上でいびきをかく拓三の代わりに、清隆がレジに向かう。蛍光灯の光を頭に受けて反射させている店主にも、長居をしてしまって申し訳なかったと謝る。店主は入店した時と変わらずの笑顔で問題ないとだけ返した。
「謝りたいのはそれだけじゃないんです。開店前から話し合いのための席を貸してくれて助かりました。おかげで、落ち着いて話し合えました」
「そのくらい構わないさ。準備している間に、勝手に喋ってる程度じゃどうしたって迷惑にはならんよ」
そのうちに何か礼をさせてほしいとだけ残し拓三のところへ戻ろうとした時、店主が清隆を呼び止めた。
「お前、拓三の宮古馬を使って農業祭を盛り上げようとしてるんだってな」
「そうです。拓三さんの反応を見るに、駄目かもしれませんが」
そんなことはない、と店主は首を振った。
「拓三は馬が好きだし、子供も好きだ。馬はもとより、近所の学童と連携して食育のために畑を貸すくらいには子供が好きだ。それにお前からの頼みとあっては、農業祭に馬を連れてくるくらいなんの問題もなく受け入れるだろうよ」
「でも断られました。外国人が来るだろうという理由で」
「そうだな、外国人観光客の行動が無視できない問題になっているのは全国どこでも同じだ。俺のこの店だってそうさ。だがアメリカに馬を連れて行こうって話じゃないんだし、工夫を施せばあいつを動かすなんて造作もないはずだ」
「具体的に、どうやったら良いんですか?」
食事が済んでも二人は延々談笑をした。仕事のことや、家族の愚痴などを漏らした。とは言っても清隆は独身なので、家庭環境についてはおおかた拓三だけが話を広げていった。息子夫婦が子供を作る気がなく、孫の顔も拝めずにこのままくたばるのではないかと彼は心配そうに語る。その頃には落ち着きを取り戻していた清隆は、だから馬にこだわるのではないかと邪推したりしていた。
閉店までにはまだ時間があったものの、これ以上席を独占していては流石に迷惑だろうということで二人は会計を済ませることにした。もうまともに会話もできなくなり畳の上でいびきをかく拓三の代わりに、清隆がレジに向かう。蛍光灯の光を頭に受けて反射させている店主にも、長居をしてしまって申し訳なかったと謝る。店主は入店した時と変わらずの笑顔で問題ないとだけ返した。
「謝りたいのはそれだけじゃないんです。開店前から話し合いのための席を貸してくれて助かりました。おかげで、落ち着いて話し合えました」
「そのくらい構わないさ。準備している間に、勝手に喋ってる程度じゃどうしたって迷惑にはならんよ」
そのうちに何か礼をさせてほしいとだけ残し拓三のところへ戻ろうとした時、店主が清隆を呼び止めた。
「お前、拓三の宮古馬を使って農業祭を盛り上げようとしてるんだってな」
「そうです。拓三さんの反応を見るに、駄目かもしれませんが」
そんなことはない、と店主は首を振った。
「拓三は馬が好きだし、子供も好きだ。馬はもとより、近所の学童と連携して食育のために畑を貸すくらいには子供が好きだ。それにお前からの頼みとあっては、農業祭に馬を連れてくるくらいなんの問題もなく受け入れるだろうよ」
「でも断られました。外国人が来るだろうという理由で」
「そうだな、外国人観光客の行動が無視できない問題になっているのは全国どこでも同じだ。俺のこの店だってそうさ。だがアメリカに馬を連れて行こうって話じゃないんだし、工夫を施せばあいつを動かすなんて造作もないはずだ」
「具体的に、どうやったら良いんですか?」


