午前0時、きみだけが知っている

「課題、今日までだっけ?!」

「そうだよー。昨日グルチャで締め切り明日だよって流れてたじゃん」

「寝てたかも。見落とした~!」


朝の教室は、あちこちから声が飛び交っていて落ち着かない。

でもそれがいつもの風景でもある。


(かなで)、おはよう。課題やってきた?」


ぼんやりと机の周りを眺めていたところに声が飛んできて、私は少し遅れて顔を上げた。


「……あ、おはよ。うん、やってきたよ」

「難しくなかった?」

「うん。ちょっと時間かかったけど」

「やっぱり?私途中で投げちゃった……お願い!ノート見せてください!」


両手を合わせて頭を下げるその勢いに、思わず笑ってしまう。


「私も間違ってるかもよ」

「いいのいいの!ありがと、お礼はジュースね」


一方的にまくしたてるようにしゃべって、彼女は私のノートを持って自分の席へと戻っていく。

彼女が離れた後、私は小さくため息をついた。

こういうやりとりも、珍しくはない。

断る理由がないわけでもないのに、結局いつも、そのまま渡してしまう。

だって、その方が、楽だから。

……たぶん。


私は窓の外を見た。

教室棟の向かい側の校舎、管理棟の屋上が目に入る。

一瞬だけ、視線が止まったけれど、すぐに、目を逸らした。

その時、隣の席の椅子が引かれた音がした。

音に反応して視線を向ける。

筆記用具を取り出しながら、彼が机の脇にカバンをかける。

その何気ない動きの途中で、ふと視線が重なった。

挨拶すらせずに私はパッと視線を外した。

隣の彼……瀬崎風雅(せざきふうが)君の事が、なんとなく、苦手だ。

友だちと話していると、ふと視線を感じることがある。

気になってそちらを見ると、大概瀬崎君と目が合う事が多い。

睨まれているわけではない。

……かといって、好意的なわけでもなくて。

ただ、見られている……それだけなのに、なぜか少し、怖い。

なんだか、心の中まで覗かれているみたいで。

瀬崎君は、あまり話さない。

話しかけられても、短く返すか、頷くだけのことが多い。

そのせいか、教室の中でもどこか浮いて見える。

そういうところがクールでカッコいいとかいう子もいるけれど、私はあまり得意じゃない。

だからできるだけ関わらないようにしていた。

目が合っているわけではないのに、隣にいるだけで左半身が無言の圧に負けそう。

私はスマホを取り出して、気を紛らわす事にした。