「わたしの物にしたい」
こんなに綺麗な瞳、初めて見た。
わたしは薄めだから大してはっきりしていないけど、天声《あまごえ》ちゃんのこの紫色の瞳は本当に宝石みたいで綺麗…。
もっと縛ってほしい。
もっと結んでほしい。
わたしだけを見ててほしい。
なんと強欲なのだろうか。
ただ元に戻ったひとの姿を見ただけで一瞬で虜にする天声《あまごえ》の瞳はダイヤモンドよりも輝かしく目の前にいる音羽《おとは》の心を夢中にさせるほどの強力な力が込められている。
「天声《あまごえ》ちゃん、もっとわたしを縛って」
興奮して息が荒く顔を真っ赤にするほど体温が熱く焚き火のように燃えて精一杯両手を伸ばしてくる音羽《おとは》に、天声《あまごえ》は首を横に振ってこう言った。
「わたしはあなたの物になれない」
そう言った瞬間、この真っ暗な空間に一つのピンクの羽が天声《あまごえ》の手に乗せられたことでバサッと大きなピンクの羽が埃を吹き飛ばすようにバサバサッと羽ばたき、まるで天にいるような色とりどりの花畑がズラーと無限に広がった。
二人は当然驚いた。
こんなに綺麗な花畑がこの空間から生まれたこと。
まるで二人の関係を祝福したように花冠が二人の頭に飾られたこと。
ここはまるで現実世界と惑わされる感じでどこを見渡しても花畑が風に揺られれば花が舞い踊り永遠にここにいたいと思わせる夢空間。
だが。
「わたしが元に戻ればこの空間はもっと夢が広がる」
だったら、音羽《おとは》が必要になる。
あなたの物になれなくても、わたしの物にできるなら、お互いの存在価値も上がる。
そう考えたら、ずっとここにいさせてもいいけど…今は。
紫色の瞳には今までと同じくいつも音羽《おとは》が映っている。
だから、自然と笑うことができる。
瞳の色が元に戻っただけでも及第点。
心からの笑顔ができなくても、今できるのは天使の微笑みだけ。
神秘的で全ての嘘を天使の羽ばたきで吹き消すほどの微笑みは天声《あまごえ》だからこそできること。
「ふふっ、今日はもう帰って。そして、明日も待ってる」
その微笑みに、音羽《おとは》も天使の微笑みのような温かな笑顔で頷き手を振った。
「うん! 明日も絶対に来るから待ってて!」
こうして、二人の天使はお互いの存在価値を天にも届くほどに高く飛び立つことを決めたのだった。
十月三十一日。
「よし、できた」
この日はハロウィン。
音羽《おとは》は歌姫になって初めてのイベントに参加する。
ドレスの主体となる色は黒。
銀色のリボンやビーズで棘のある羽を作り満遍なく飾り、なんと首輪をつけている。
天声《あまごえ》がくれた? 物ではなく、自分でデザインしたちょっと悪魔っぽく漆黒に青色の羽が小さく飾られた特別な代物。
髪はそのまま下ろしたまま。
これを着た羽音《はおん》はまさに悪魔。
ハロウィンの定番とも言える仮装の一つ。
あの時の悪魔ではなくハロウィンならではのイベントとしてこの悪魔という仮装を選んだらしい。
しかし、今日はステージには立たない。
それは何故か?
「おっ、羽音《はおん》ちゃんは悪魔にしたんだね。わたしはミイラにしたよ」
そう言って、羽音《はおん》の部屋に来たのは
「わあ~、花音《はなね》ちゃんのドレス、すごく可愛い!」
包帯を真っ白なリボンで表現しグルグルと巻きつけ、髪はお団子にして胸元には黒のドクロの飾りをつけた花音《はなね》は少し可愛らしいミイラの完成とも言える。
「ふふっ、褒めてくれて嬉しい! 実はね、このドレスは全部わたしがデザインしたの。すごいよね?」
自信満々に堂々と腕を組み鼻で笑う花音《はなね》を、羽音《はおん》は満面の笑みでパチパチと大きなた音を立てて拍手をする。
「うんうん、すごい! わたしにはないアイディアがあるんだね」
「ありがとう。まっ、わたしはこれくらいにして、そろそろ出て来たら?」
そう花音《はなね》が指を指した部屋の奥の方に何故か体を震わしてしゃがみ込むそらがいる。
「あっ、すみません。わたし、ちょっと今日はダメかもしれません」
一生懸命背中を向けて正面を向こうとしないそらに腹を立てた花音《はなね》が小さい体ではありながらも、その全ての力で強引にそらの手を引っ張り無理やり立たせたら。
「ああああああああああっ! 恥ずかしいー!」
可愛らしい黒猫になっている。
黄色の鈴がついた黒猫耳に、ドレスの裾全体に黄色の鈴がつき、腰部分にはかぎしっぽが飾られたクールな猫の完成? となった。
だが、そら本人はとても恥ずかしそうに今にも頭から大量の湯気が溢れるように熱く燃え上がり体に力が入らないらしい。
「こ、こ、こ、こここここここんな恥ずかしい姿で人前に出るなんて絶対に嫌ですーーーーーー!」
こんなに大声を上げて恥ずかしがるそらの姿はなんとも可愛らしく猫耳が跳ねて尻尾も上がったり下がったりと…まるで本物の猫みたいで愛らしく感じてしまうのは私だけでしょうか?
「ま、まあまあ、落ち着いてください」
「そうだよ」
そらの初めて見るこの可愛らしい姿に、羽音《はおん》と花音《はなね》は少しだけその可愛らしさに憧れてキラキラと瞳を輝かせ、肩を撫でたり頭を撫でてあげたりして落ち着かせる。
「ふふっ」
こんなに可愛いそらさんを初めて見た。
わたしもこうなりたい。
「ふっ」
わたしの可愛さとは違う新しい可愛さ…正直ちょっとは羨ましいかも。
そして、約十分後にそらは落ち着いて椅子に座り眼鏡を外して空音《そらね》に変わる。
「うふふふふふふふっ! どうだ、この我の姿は! 今までの我にはない新しいアイディアから生まれたこのドレスは我の誇りと言えるだろう!」
いつもの怪しく麗しく微笑みが、さっきまで恥ずかしがって部屋の奥の方に気配を消したとは思えないほどに自信満々に猫耳姿で腕を組む空音《そらね》。
そんな変わった姿を見た羽音《はおん》と花音《はなね》はこう思った。
「最初から眼鏡を外した方が良かったはず」
と、苦笑いを浮かべていたら。
「歌姫の皆さん出番です」
部屋の向こうからノックをしたスタッフの呼びかけに三人はそれぞれ王子様のエスコートで扉の中に入り生と死の間を通り抜ければそこはもうステージ。
今回は仮装をドレスで表した姿をファンに見せるだけで歌うことはない? はず。
三人の登場にファンは拍手を贈る。
「三人共超〜可愛い!」
「今年も気合い入ってる!」
「来年も楽しみ!」
この歓声を初めて聞いた羽音《はおん》はお決まりの天使の微笑みような温かな姿でお辞儀をしファンに手を振る…が?
「うふふふふふふふっ! わたくしたちを忘れないでくれるかしら!」
「そうですよ、わたしたちだって歌姫なんですよ」
「忘れられると悲しいじゃん」
そう言った三人の正体は。
魔女をイメージした紫色を主体にんがり帽子の本物ではないがクッキーを全体に撒き散らして珍しく裾が膝まで短くシマウマみたいに白黒デザインを履いているのは堂々と腕を組んで胸を張る華恋《かれん》。
「うっふふ」
ドラキュラのような尖った歯をつけマントを中は赤、外側を黒にリバーシブルにちょっと遊び心を注がれるデザインに、赤い血を真っ赤なリボンで小さく斜めに飾るのは星宙《ほしぞら》。
「綺麗…」
コウモリをイメージした背中に小さな羽の飾りをつけて羽音《はおん》とは少し違う漆黒に紺色が入り混じった色に、ドレスは五段に分けてヒラヒラのベールでさらにコウモリの羽を作り上げたのは翼《つばさ》。
「あっはは、今年も最高じゃん!」
まるで本物の主役は自分たちと少し偉そうに羽音、花音、空音の三人の肩を軽く叩いて後ろに下がらせて前に立つ華恋、星宙、翼の三人はヒーローみたいに遅れて登場? した。
さて、今年の仮装は毎年違っていて面白いですね。
それぞれの個性を生かしたデザインが見ている私も心躍りますね。
それは天声《あまごえ》も同じはずですよ、ね?
その様子を見ていた天声《あまごえ》は。
「へえー、今年は今までよりも面白い。特に羽音《はおん》はわたし好みにしてみたんだね…まあ、違うだろうけど」
紫色の瞳に映るのはいつも音羽《おとは》と羽音《はおん》。
きっとあなたが思っている通りかもしれませんよ?
「まあ、今日は歌うわけじゃないから、みんな集合したみたいだしこれで終わり」
そう言って、スクリーンから目を逸らした瞬間、ナニかが観客席の中で光った。
それは天声《あまごえ》だけに見えた秘密の光。
すぐにその光を見た時、ある人物が目に入った。
「あ、あれは誰…?」
見覚えがある。
確か…いや、思い出せない。
白のYシャツに緑のリボンで首に巻きつけ、下は見えないので分からないが、ただ一つだけ水色の瞳が美しくて目が離せない。
まるでそれがずっと支えになってくれた大切な存在であることは間違いないだろう。
だってこんなに頬を赤く染め上げ胸の鼓動がトランポリンのように激しく高く動くほどドキドキしている天声《あまごえ》はとても可愛らしいのだから。
「わたし、早く全ての記憶を思い出したい。思い出して、あの人の正体を知りたい」
そう気づいた時にはもうその人物のは消えて最初からそこには居なかったように静かに存在を隠してしまったようだ。
「また会いたい、な」
天声《あまごえ》の記憶は百年経った今少しずつではあるが、音羽《おとは》と羽音《はおん》のおかげで思い出すことができている。
それこそも及第点と言える。
「ふうー、楽しかった」
「そうだね」
「ええ、そうですね」
ドレスのお披露目会を終えた歌姫たちはそれぞれ部屋に戻って私服に着替えて音羽、はな、そらはは近くのカフェで食事することを決めて中に入り窓側の席に座ってメニューを開く。
「羽音《はおん》ちゃんのドレス素敵だったよ」
「ええ、デザインが完璧でしたね」
満面の笑みで両手を握って褒めてくれる親友二人に、音羽《おとは》も笑顔でその手の温もりを肌で感じ応える。
「ふふっ、ありがとうございます。初めてだったので、上手くできていたか不安だったんですけど、皆さんに褒めてもらえて自信が持てました」
こんなに綺麗な瞳、初めて見た。
わたしは薄めだから大してはっきりしていないけど、天声《あまごえ》ちゃんのこの紫色の瞳は本当に宝石みたいで綺麗…。
もっと縛ってほしい。
もっと結んでほしい。
わたしだけを見ててほしい。
なんと強欲なのだろうか。
ただ元に戻ったひとの姿を見ただけで一瞬で虜にする天声《あまごえ》の瞳はダイヤモンドよりも輝かしく目の前にいる音羽《おとは》の心を夢中にさせるほどの強力な力が込められている。
「天声《あまごえ》ちゃん、もっとわたしを縛って」
興奮して息が荒く顔を真っ赤にするほど体温が熱く焚き火のように燃えて精一杯両手を伸ばしてくる音羽《おとは》に、天声《あまごえ》は首を横に振ってこう言った。
「わたしはあなたの物になれない」
そう言った瞬間、この真っ暗な空間に一つのピンクの羽が天声《あまごえ》の手に乗せられたことでバサッと大きなピンクの羽が埃を吹き飛ばすようにバサバサッと羽ばたき、まるで天にいるような色とりどりの花畑がズラーと無限に広がった。
二人は当然驚いた。
こんなに綺麗な花畑がこの空間から生まれたこと。
まるで二人の関係を祝福したように花冠が二人の頭に飾られたこと。
ここはまるで現実世界と惑わされる感じでどこを見渡しても花畑が風に揺られれば花が舞い踊り永遠にここにいたいと思わせる夢空間。
だが。
「わたしが元に戻ればこの空間はもっと夢が広がる」
だったら、音羽《おとは》が必要になる。
あなたの物になれなくても、わたしの物にできるなら、お互いの存在価値も上がる。
そう考えたら、ずっとここにいさせてもいいけど…今は。
紫色の瞳には今までと同じくいつも音羽《おとは》が映っている。
だから、自然と笑うことができる。
瞳の色が元に戻っただけでも及第点。
心からの笑顔ができなくても、今できるのは天使の微笑みだけ。
神秘的で全ての嘘を天使の羽ばたきで吹き消すほどの微笑みは天声《あまごえ》だからこそできること。
「ふふっ、今日はもう帰って。そして、明日も待ってる」
その微笑みに、音羽《おとは》も天使の微笑みのような温かな笑顔で頷き手を振った。
「うん! 明日も絶対に来るから待ってて!」
こうして、二人の天使はお互いの存在価値を天にも届くほどに高く飛び立つことを決めたのだった。
十月三十一日。
「よし、できた」
この日はハロウィン。
音羽《おとは》は歌姫になって初めてのイベントに参加する。
ドレスの主体となる色は黒。
銀色のリボンやビーズで棘のある羽を作り満遍なく飾り、なんと首輪をつけている。
天声《あまごえ》がくれた? 物ではなく、自分でデザインしたちょっと悪魔っぽく漆黒に青色の羽が小さく飾られた特別な代物。
髪はそのまま下ろしたまま。
これを着た羽音《はおん》はまさに悪魔。
ハロウィンの定番とも言える仮装の一つ。
あの時の悪魔ではなくハロウィンならではのイベントとしてこの悪魔という仮装を選んだらしい。
しかし、今日はステージには立たない。
それは何故か?
「おっ、羽音《はおん》ちゃんは悪魔にしたんだね。わたしはミイラにしたよ」
そう言って、羽音《はおん》の部屋に来たのは
「わあ~、花音《はなね》ちゃんのドレス、すごく可愛い!」
包帯を真っ白なリボンで表現しグルグルと巻きつけ、髪はお団子にして胸元には黒のドクロの飾りをつけた花音《はなね》は少し可愛らしいミイラの完成とも言える。
「ふふっ、褒めてくれて嬉しい! 実はね、このドレスは全部わたしがデザインしたの。すごいよね?」
自信満々に堂々と腕を組み鼻で笑う花音《はなね》を、羽音《はおん》は満面の笑みでパチパチと大きなた音を立てて拍手をする。
「うんうん、すごい! わたしにはないアイディアがあるんだね」
「ありがとう。まっ、わたしはこれくらいにして、そろそろ出て来たら?」
そう花音《はなね》が指を指した部屋の奥の方に何故か体を震わしてしゃがみ込むそらがいる。
「あっ、すみません。わたし、ちょっと今日はダメかもしれません」
一生懸命背中を向けて正面を向こうとしないそらに腹を立てた花音《はなね》が小さい体ではありながらも、その全ての力で強引にそらの手を引っ張り無理やり立たせたら。
「ああああああああああっ! 恥ずかしいー!」
可愛らしい黒猫になっている。
黄色の鈴がついた黒猫耳に、ドレスの裾全体に黄色の鈴がつき、腰部分にはかぎしっぽが飾られたクールな猫の完成? となった。
だが、そら本人はとても恥ずかしそうに今にも頭から大量の湯気が溢れるように熱く燃え上がり体に力が入らないらしい。
「こ、こ、こ、こここここここんな恥ずかしい姿で人前に出るなんて絶対に嫌ですーーーーーー!」
こんなに大声を上げて恥ずかしがるそらの姿はなんとも可愛らしく猫耳が跳ねて尻尾も上がったり下がったりと…まるで本物の猫みたいで愛らしく感じてしまうのは私だけでしょうか?
「ま、まあまあ、落ち着いてください」
「そうだよ」
そらの初めて見るこの可愛らしい姿に、羽音《はおん》と花音《はなね》は少しだけその可愛らしさに憧れてキラキラと瞳を輝かせ、肩を撫でたり頭を撫でてあげたりして落ち着かせる。
「ふふっ」
こんなに可愛いそらさんを初めて見た。
わたしもこうなりたい。
「ふっ」
わたしの可愛さとは違う新しい可愛さ…正直ちょっとは羨ましいかも。
そして、約十分後にそらは落ち着いて椅子に座り眼鏡を外して空音《そらね》に変わる。
「うふふふふふふふっ! どうだ、この我の姿は! 今までの我にはない新しいアイディアから生まれたこのドレスは我の誇りと言えるだろう!」
いつもの怪しく麗しく微笑みが、さっきまで恥ずかしがって部屋の奥の方に気配を消したとは思えないほどに自信満々に猫耳姿で腕を組む空音《そらね》。
そんな変わった姿を見た羽音《はおん》と花音《はなね》はこう思った。
「最初から眼鏡を外した方が良かったはず」
と、苦笑いを浮かべていたら。
「歌姫の皆さん出番です」
部屋の向こうからノックをしたスタッフの呼びかけに三人はそれぞれ王子様のエスコートで扉の中に入り生と死の間を通り抜ければそこはもうステージ。
今回は仮装をドレスで表した姿をファンに見せるだけで歌うことはない? はず。
三人の登場にファンは拍手を贈る。
「三人共超〜可愛い!」
「今年も気合い入ってる!」
「来年も楽しみ!」
この歓声を初めて聞いた羽音《はおん》はお決まりの天使の微笑みような温かな姿でお辞儀をしファンに手を振る…が?
「うふふふふふふふっ! わたくしたちを忘れないでくれるかしら!」
「そうですよ、わたしたちだって歌姫なんですよ」
「忘れられると悲しいじゃん」
そう言った三人の正体は。
魔女をイメージした紫色を主体にんがり帽子の本物ではないがクッキーを全体に撒き散らして珍しく裾が膝まで短くシマウマみたいに白黒デザインを履いているのは堂々と腕を組んで胸を張る華恋《かれん》。
「うっふふ」
ドラキュラのような尖った歯をつけマントを中は赤、外側を黒にリバーシブルにちょっと遊び心を注がれるデザインに、赤い血を真っ赤なリボンで小さく斜めに飾るのは星宙《ほしぞら》。
「綺麗…」
コウモリをイメージした背中に小さな羽の飾りをつけて羽音《はおん》とは少し違う漆黒に紺色が入り混じった色に、ドレスは五段に分けてヒラヒラのベールでさらにコウモリの羽を作り上げたのは翼《つばさ》。
「あっはは、今年も最高じゃん!」
まるで本物の主役は自分たちと少し偉そうに羽音、花音、空音の三人の肩を軽く叩いて後ろに下がらせて前に立つ華恋、星宙、翼の三人はヒーローみたいに遅れて登場? した。
さて、今年の仮装は毎年違っていて面白いですね。
それぞれの個性を生かしたデザインが見ている私も心躍りますね。
それは天声《あまごえ》も同じはずですよ、ね?
その様子を見ていた天声《あまごえ》は。
「へえー、今年は今までよりも面白い。特に羽音《はおん》はわたし好みにしてみたんだね…まあ、違うだろうけど」
紫色の瞳に映るのはいつも音羽《おとは》と羽音《はおん》。
きっとあなたが思っている通りかもしれませんよ?
「まあ、今日は歌うわけじゃないから、みんな集合したみたいだしこれで終わり」
そう言って、スクリーンから目を逸らした瞬間、ナニかが観客席の中で光った。
それは天声《あまごえ》だけに見えた秘密の光。
すぐにその光を見た時、ある人物が目に入った。
「あ、あれは誰…?」
見覚えがある。
確か…いや、思い出せない。
白のYシャツに緑のリボンで首に巻きつけ、下は見えないので分からないが、ただ一つだけ水色の瞳が美しくて目が離せない。
まるでそれがずっと支えになってくれた大切な存在であることは間違いないだろう。
だってこんなに頬を赤く染め上げ胸の鼓動がトランポリンのように激しく高く動くほどドキドキしている天声《あまごえ》はとても可愛らしいのだから。
「わたし、早く全ての記憶を思い出したい。思い出して、あの人の正体を知りたい」
そう気づいた時にはもうその人物のは消えて最初からそこには居なかったように静かに存在を隠してしまったようだ。
「また会いたい、な」
天声《あまごえ》の記憶は百年経った今少しずつではあるが、音羽《おとは》と羽音《はおん》のおかげで思い出すことができている。
それこそも及第点と言える。
「ふうー、楽しかった」
「そうだね」
「ええ、そうですね」
ドレスのお披露目会を終えた歌姫たちはそれぞれ部屋に戻って私服に着替えて音羽、はな、そらはは近くのカフェで食事することを決めて中に入り窓側の席に座ってメニューを開く。
「羽音《はおん》ちゃんのドレス素敵だったよ」
「ええ、デザインが完璧でしたね」
満面の笑みで両手を握って褒めてくれる親友二人に、音羽《おとは》も笑顔でその手の温もりを肌で感じ応える。
「ふふっ、ありがとうございます。初めてだったので、上手くできていたか不安だったんですけど、皆さんに褒めてもらえて自信が持てました」



