それから音羽《おとは》は「王子様」に案内されるがままに約十五分歩いた先には天使の羽のような真っ白な羽をモチーフにした大きな飾りがつけられた一軒家三つ分の大きな館に着いた。
「ここが羽の館…」
思っていたよりも大きすぎる。
でも、ここでなにをするんだろう?
まだドレスのアレンジもしてないのに今日ステージに立つなんて、そんなこと一気にできるかな?
「うーん」
考えすぎて頭を抱えて一人棒立ちする音羽《おとは》に気づいた「王子様」が両手でそっと音羽《おとは》の右手を握ってキスをしこう言う。
「大丈夫です。あなたのステージはきっと成功します」
嘘でもないただ本心だけでそう言い切れる「王子様」の真っ直ぐな紫色の瞳が美しくてつい頷いた音羽《おとは》。
「うん、そうですよね。考えすぎても悩んでも仕方ない。ステージに立てばきっと運命が変わる。ふふっ、そう思えばなにも悩んだりしない」
なんだろう。
「王子様」の一つ一つの言葉がわたしに勇気をくれる。
本当におとぎ話のお姫様になった気分。
満面の笑みで楽しそうに心躍るように体を左右に揺らす可愛らしい音羽《おとは》の姿に「王子様」は。
「ははっ、可愛いですね。おっといけない。自己紹介を忘れていました」
「え?」
「僕は奏《かなで》と言います。年齢は二十六歳です」
「奏《かなで》…素敵な名前ですね!」
二十六歳って、結構年上。
でも、ちょっと少し年の離れたお兄さんって感じ…。
奏《かなで》の役目はただ一つ。
それは。
「さあ、行きましょう」
「えっ? どこに?」
「あなたが今日立つステージに。僕が案内しますよ、羽音《はおん》様」
そう言いながら、奏《かなで》は一度握っていた両手を離して今度は左手で羽音《はおん》の右手を握り走って館の中に入るとそこには。
「こ、これは」
ドレスがいっぱい!
そう、この館には歌姫専用に作られた色のない透明なドレスが数え切れないほど用意されている。
そしてその中央にあるのは。
「あっ! あのドレスは」
「ええ、天声《あまごえ》様から預かった羽音《はおん》様のデビュードレスです」
「すごい、嬉しい!」
天声《あまごえ》ちゃんがくれたドレスが今目の前にある。
「ふふっ、どうしよう。どんな風にアレンジしようかな」
「それなら、この中から選ぶのはどうでしょうか?」
そう言いながら、奏《かなで》が鏡台の引き出しから取り出した白い箱の中にはビーズやリボン、羽の形をした銀色の飾りがたくさん入っている。
アレンジするにはちょうどいい物ばかりが揃っている。
「お好きに選んでください。僕はそばで見ています」
「はい! ありがとうございます」
この館はすごい。
わたしの夢が詰まった素敵な空間。
「はああっ、どうしよう。迷っちゃう」
「ははっ、本当に可愛いですね」
「あっ…すいません、声に出ていました。恥ずかしい」
頬を真っ赤にしているのを必死に両手で隠す羽音《はおん》が可愛いすぎて、奏《かなで》はつい頭を撫でてしまう。
「あなたはとても可愛いですね。こんなに可愛い人間が居るなら、もっと早くに出会いたかったくらい悔しくなるのはなぜなのでしょうか…」
奏《かなで》の年齢は改めて言うと二十六歳。
小学校を卒業したばかりの十二歳の音羽《おとは》に対する気持ちは可愛いとか手離したくない…ほんの少しだけ特別感を持っているのかもしれない。
だが、それが叶うのかはまだ誰も分からない。
人生には人それぞれの色がある。
情熱に燃える赤。
水のように冷たい青。
優しさに包まれた緑。
陽だまりのような暖かさを持つ黄色。
他にも様々な色の世界がどんなところまでも広がっている。
人間一人一人に与えられた全ての色はきっと誰かの心にいつまでも残り続ける。
しかし、今のところは。
「よし、できた!」
完成したドレスは銀色の丸いビーズを外側に真っ直ぐにしたり斜めにつけたりして、胸元には薄紫色のちょっと小さく形を変えてつけた羽の飾りは少し遠慮して見えるが、羽音《はおん》のデビューステージに相応しい代物になっているのは間違いないだろう。
「ふふっ、早くこれを着てステージに立ちたい」
可愛らしくも本気の薄紫色の瞳が今まで以上に輝きを灯しているのはきっと羽音《はおん》のこれからの人生を変えることも間違いない。
「ははっ、素敵になりましたね。あなたのセンスは世界一でしょう」
ポンッと優しく羽音《はおん》の頭を撫でる奏《かなで》の顔はニコッと爽やかに笑っていて他人から見れば面白いとも言える。
「さあ、行きましょう。みんながあなたのステージを待っています」
「はい…って、ここからステージにどうやって行くんですか?」
こんな大きなドレスを手に持って外に行くのはちょっと目立つから嫌かも…うーん。
ドレスの大きさは羽音《はおん》の体よりも二倍以上で重さも以外とあって一人で持ち歩くには結構厳しいが。
羽音《はおん》がスーッと何度も歩き立ち止まって首を傾げて悩む姿に奏《かなで》は満面の笑みで予想外なことを言い出す。
「大丈夫ですよ。この館の奥に扉があり、そこに入って目を閉じて歩いた先にはステージが待っています。結構簡単なので、悩む必要はありませんよ」
奏《かなで》の優しくも愛おしさ溢れるまさに王子様の微笑みが羽音《はおん》の心の覚悟を決めさせてくれる。
「はい。 わたしのステージでたくさんの人たちの心に届く最高の形を作ります」
そう言った羽音《はおん》のとても楽しそうに嬉しそうにまさに幸せだというような可愛いらしい微笑みでもう後戻りすることのない危険な世界へと飛び立つ。
「着替えました」
着替えた羽音《はおん》の姿はアレンジした通りの本物の天使のような羽が特徴的で他の誰にも似合わないこのドレスは羽音《はおん》だけだからこそ似合う特別な一着。
だが、一つ忘れていることがある。
「羽音《はおん》、ティアラを頭に飾らなければステージには立てませんよ?」
「あっ! そうだった」
天声《あまごえ》から受け取った銀色のティアラを縮小した手の平サイズのクリップを鏡台に置いていたのを思い出してクリップを握った瞬間、クリップが自然と浮き上がりティアラに形を変えてそのまま羽音《はおん》の頭の上に飾られた。
「す、すごい」
クリップがティアラに形を変えたなんてすごい!
与えられたティアラこそが歌姫のステージを彩り同時に形を作り上げる。
奏《かなで》の言う通りティアラがなければステージには立てない。
天声《あまごえ》が作るティアラはガラスの欠片から心の音で完成する誰にも作れない世界にたった一つの特別な代物。
だから、簡単に壊れない。
「さあ、行きましょう。みんな待っていますよ」
左手を差し伸べた奏《かなで》の顔はおとぎ話に出てくるような本物王子様みたいに優しくてかっこよくて全てを任せられる笑顔を見たら誰だって。
「はい! わたしのステージ、奏《かなで》も見ててください」
そう言った羽音《はおん》の笑顔は誰にとっても忘れられないどんな運命でも乗り越えられる可愛さだけではない本気も覚悟も込めた暖かい姿。
そして、二人は手を握り合い歩き出した前には一つの館と同じようなちょっと小さめの真っ白な羽が描かれた水色の扉を奏《かなで》が右手で開けた同時に羽音《はおん》の視界が真っ黒になりなにも見えなくなったが。
「大丈夫ですよ。この扉の中に入った歌姫は視界が真っ黒になります」
「どうしてですか?」
「それは、王子様の僕たちがあなたたち歌姫を守るため、正しい道へと導くために必要なことです。ですが、不安にさせてしまうことは申し訳ありません。これも天声《あまごえ》様が決められたルールなので、どうか理解してください」
その言葉通り、これは天声《あまごえ》が決めた大切なルール。
だけど、それを分かった上で羽音《はおん》はこう言った。
「奏《かなで》がわたしを守ってくれるならなにも怖くない。だって、わたしの王子様はあなただけだから」
どんなことが待っていても、きっと羽音《はおん》はこの言葉通り奏《かなで》の全てを受け入れると願って、歩みを止めずに立ち止まった瞬間、大きな歓声と拍手が聞こえてくる。
「これって…」
「はい、みんながあなたを待っている証拠です。自信を持って、さあ、輝きを心に刻んで」
奏《かなで》の応援と共に視界が元に戻って気づいた時にはステージの上に立っている。
「えっ!? これがステージ…思っていた以上に大きい」
そう、このステージは約百人以上が入るほどのドームのようなデビューには相応しすぎるほどの記念の日。
観客席の中にはもちろん。
「お姉ちゃん! 頑張ってね!」
一番前の真ん中の席にはずっとそばにいてくれる大切な妹の音陽《ねひ》が両手に真っ白なペンライトを持って左右に揺らして満面の笑みで応援してくれている。
感動的でも嬉しいという言葉だけではない足りないくらいに最高のステージの上に立っていることを深く涙が溢れそうなくらいに噛み締めている羽音《はおん》。
「みんな、ありがとう」
あっ、そうだ。
今のわたしは歌姫。
お姫様でもあるから綺麗にお辞儀を披露してそれから…顔を上げて天声《あまごえ》ちゃんに合図の言葉を贈る。
「天使の羽が羽ばたく時、あなたの心に残るような素敵な時間を届けましょう」
そう言った瞬間、天声《あまごえ》の居る空間に大きなスクリーンが立ち上がり、その合図が聞こえたことで桃色の羽をそっと下に降ろしてその羽が羽音《はおん》のドレスに飾られたことで曲がかかり、歌い始める。
「ただ一人に贈る素敵な贈り物だけど、その贈り物はあなたに届かない。届かなくても、心に届くならわたしはその羽を心に届くように歌を歌う」
羽音《はおん》の歌声から一枚の小さな羽が宙に浮かび羽音《はおん》の体を一枚から十枚、五十、百枚と数を増やして囲んでいく。
その姿はまるで羽に意志があるように楽しそうに羽音《はおん》のデビューステージを祝福しているように見える。
「どうして、どうして。あなたはわたしの前に現れてくれないの? わたしはあなたに会いたい。あなたと愛し合いたい。ただ…それだけなのに」
この歌詞には羽音《はおん》のある人への想いが込められた切なくも「愛」を感じるような不思議な感覚を覚える幸せな一時。
羽音《はおん》が手を上げれは羽もそれに応えるようにその手に寄り添い離れることがないと思えば…ステージ全体に百枚を超える羽が真っ白なステージに水色の彩りを加えて、羽が一度羽音《はおん》の胸に集まり、その瞬間。
「きっと、きっと。わたしの想いはあなただけの物になる。それもきっと大切な贈り物」
水色の彩りが天使の羽に似たような羽ばたきを象徴させることで羽音《はおん》の歌声から溢れる百枚以上の羽が一つに合体し、ステージの中央にステージに収まりきらないほどの大きい羽が羽音《はおん》のドレスに羽の飾りがドレスをさらに色付けしていく。
虹色みたいに…。
ここで、最後に。
「やっと届く、あなたに届く。わたしたちの愛の贈り物」
両手を前に伸ばして同時に羽が天井から天使が舞い降りたような羽が舞い落ちて曲が終わり、羽音《はおん》のデビューステージは大大大成功に成し遂げた。
「やった。わたし、わたし、こんなに楽しいことがあるなんて、今までの人生の中で一番の後悔だけど、これからの人生にはもっとたくさんの楽しいことも幸せなことも、人と愛し合うこともあることを信じよう!」
このデビューステージは誰の心にもきっと永遠に残るであろう特別な時間になったことは間違いないだろう。
だって、デビューステージでこんなにもたくさんの羽を作った羽の歌姫は羽音《はおん》が初めてなのだから。
「新しい羽の歌姫。可愛い子、発見」
「ふふっ、我のライバルに相応しいぞ」
「これはまだまだ。でも、デビューステージ、おめでとう」
その様子を見ていた天声《あまごえ》は。
「これが羽音《はおん》のステージ…すごい。わたしの理想に近い…でも、これは始まり。もっと、羽音《はおん》の輝きわたしに見せて」
羽音《はおん》のデビューステージは近くにいる人も遠くにいる人にも届いた最高の一時。
自信があってもなくても関係ない。
ステージに立った瞬間から歌姫はその歌声で形を作りステージに色や飾りをつける。
それができれば大丈夫。
きっと、あの歌姫にもそう思えることがあるはずだから。
「ありがとう。わたし、もっと頑張るから。ちゃんと見ててね」
わたしのステージはまだ始まったばかり。
これからの人生でなにが起きるか、とっても楽しみ!
「ここが羽の館…」
思っていたよりも大きすぎる。
でも、ここでなにをするんだろう?
まだドレスのアレンジもしてないのに今日ステージに立つなんて、そんなこと一気にできるかな?
「うーん」
考えすぎて頭を抱えて一人棒立ちする音羽《おとは》に気づいた「王子様」が両手でそっと音羽《おとは》の右手を握ってキスをしこう言う。
「大丈夫です。あなたのステージはきっと成功します」
嘘でもないただ本心だけでそう言い切れる「王子様」の真っ直ぐな紫色の瞳が美しくてつい頷いた音羽《おとは》。
「うん、そうですよね。考えすぎても悩んでも仕方ない。ステージに立てばきっと運命が変わる。ふふっ、そう思えばなにも悩んだりしない」
なんだろう。
「王子様」の一つ一つの言葉がわたしに勇気をくれる。
本当におとぎ話のお姫様になった気分。
満面の笑みで楽しそうに心躍るように体を左右に揺らす可愛らしい音羽《おとは》の姿に「王子様」は。
「ははっ、可愛いですね。おっといけない。自己紹介を忘れていました」
「え?」
「僕は奏《かなで》と言います。年齢は二十六歳です」
「奏《かなで》…素敵な名前ですね!」
二十六歳って、結構年上。
でも、ちょっと少し年の離れたお兄さんって感じ…。
奏《かなで》の役目はただ一つ。
それは。
「さあ、行きましょう」
「えっ? どこに?」
「あなたが今日立つステージに。僕が案内しますよ、羽音《はおん》様」
そう言いながら、奏《かなで》は一度握っていた両手を離して今度は左手で羽音《はおん》の右手を握り走って館の中に入るとそこには。
「こ、これは」
ドレスがいっぱい!
そう、この館には歌姫専用に作られた色のない透明なドレスが数え切れないほど用意されている。
そしてその中央にあるのは。
「あっ! あのドレスは」
「ええ、天声《あまごえ》様から預かった羽音《はおん》様のデビュードレスです」
「すごい、嬉しい!」
天声《あまごえ》ちゃんがくれたドレスが今目の前にある。
「ふふっ、どうしよう。どんな風にアレンジしようかな」
「それなら、この中から選ぶのはどうでしょうか?」
そう言いながら、奏《かなで》が鏡台の引き出しから取り出した白い箱の中にはビーズやリボン、羽の形をした銀色の飾りがたくさん入っている。
アレンジするにはちょうどいい物ばかりが揃っている。
「お好きに選んでください。僕はそばで見ています」
「はい! ありがとうございます」
この館はすごい。
わたしの夢が詰まった素敵な空間。
「はああっ、どうしよう。迷っちゃう」
「ははっ、本当に可愛いですね」
「あっ…すいません、声に出ていました。恥ずかしい」
頬を真っ赤にしているのを必死に両手で隠す羽音《はおん》が可愛いすぎて、奏《かなで》はつい頭を撫でてしまう。
「あなたはとても可愛いですね。こんなに可愛い人間が居るなら、もっと早くに出会いたかったくらい悔しくなるのはなぜなのでしょうか…」
奏《かなで》の年齢は改めて言うと二十六歳。
小学校を卒業したばかりの十二歳の音羽《おとは》に対する気持ちは可愛いとか手離したくない…ほんの少しだけ特別感を持っているのかもしれない。
だが、それが叶うのかはまだ誰も分からない。
人生には人それぞれの色がある。
情熱に燃える赤。
水のように冷たい青。
優しさに包まれた緑。
陽だまりのような暖かさを持つ黄色。
他にも様々な色の世界がどんなところまでも広がっている。
人間一人一人に与えられた全ての色はきっと誰かの心にいつまでも残り続ける。
しかし、今のところは。
「よし、できた!」
完成したドレスは銀色の丸いビーズを外側に真っ直ぐにしたり斜めにつけたりして、胸元には薄紫色のちょっと小さく形を変えてつけた羽の飾りは少し遠慮して見えるが、羽音《はおん》のデビューステージに相応しい代物になっているのは間違いないだろう。
「ふふっ、早くこれを着てステージに立ちたい」
可愛らしくも本気の薄紫色の瞳が今まで以上に輝きを灯しているのはきっと羽音《はおん》のこれからの人生を変えることも間違いない。
「ははっ、素敵になりましたね。あなたのセンスは世界一でしょう」
ポンッと優しく羽音《はおん》の頭を撫でる奏《かなで》の顔はニコッと爽やかに笑っていて他人から見れば面白いとも言える。
「さあ、行きましょう。みんながあなたのステージを待っています」
「はい…って、ここからステージにどうやって行くんですか?」
こんな大きなドレスを手に持って外に行くのはちょっと目立つから嫌かも…うーん。
ドレスの大きさは羽音《はおん》の体よりも二倍以上で重さも以外とあって一人で持ち歩くには結構厳しいが。
羽音《はおん》がスーッと何度も歩き立ち止まって首を傾げて悩む姿に奏《かなで》は満面の笑みで予想外なことを言い出す。
「大丈夫ですよ。この館の奥に扉があり、そこに入って目を閉じて歩いた先にはステージが待っています。結構簡単なので、悩む必要はありませんよ」
奏《かなで》の優しくも愛おしさ溢れるまさに王子様の微笑みが羽音《はおん》の心の覚悟を決めさせてくれる。
「はい。 わたしのステージでたくさんの人たちの心に届く最高の形を作ります」
そう言った羽音《はおん》のとても楽しそうに嬉しそうにまさに幸せだというような可愛いらしい微笑みでもう後戻りすることのない危険な世界へと飛び立つ。
「着替えました」
着替えた羽音《はおん》の姿はアレンジした通りの本物の天使のような羽が特徴的で他の誰にも似合わないこのドレスは羽音《はおん》だけだからこそ似合う特別な一着。
だが、一つ忘れていることがある。
「羽音《はおん》、ティアラを頭に飾らなければステージには立てませんよ?」
「あっ! そうだった」
天声《あまごえ》から受け取った銀色のティアラを縮小した手の平サイズのクリップを鏡台に置いていたのを思い出してクリップを握った瞬間、クリップが自然と浮き上がりティアラに形を変えてそのまま羽音《はおん》の頭の上に飾られた。
「す、すごい」
クリップがティアラに形を変えたなんてすごい!
与えられたティアラこそが歌姫のステージを彩り同時に形を作り上げる。
奏《かなで》の言う通りティアラがなければステージには立てない。
天声《あまごえ》が作るティアラはガラスの欠片から心の音で完成する誰にも作れない世界にたった一つの特別な代物。
だから、簡単に壊れない。
「さあ、行きましょう。みんな待っていますよ」
左手を差し伸べた奏《かなで》の顔はおとぎ話に出てくるような本物王子様みたいに優しくてかっこよくて全てを任せられる笑顔を見たら誰だって。
「はい! わたしのステージ、奏《かなで》も見ててください」
そう言った羽音《はおん》の笑顔は誰にとっても忘れられないどんな運命でも乗り越えられる可愛さだけではない本気も覚悟も込めた暖かい姿。
そして、二人は手を握り合い歩き出した前には一つの館と同じようなちょっと小さめの真っ白な羽が描かれた水色の扉を奏《かなで》が右手で開けた同時に羽音《はおん》の視界が真っ黒になりなにも見えなくなったが。
「大丈夫ですよ。この扉の中に入った歌姫は視界が真っ黒になります」
「どうしてですか?」
「それは、王子様の僕たちがあなたたち歌姫を守るため、正しい道へと導くために必要なことです。ですが、不安にさせてしまうことは申し訳ありません。これも天声《あまごえ》様が決められたルールなので、どうか理解してください」
その言葉通り、これは天声《あまごえ》が決めた大切なルール。
だけど、それを分かった上で羽音《はおん》はこう言った。
「奏《かなで》がわたしを守ってくれるならなにも怖くない。だって、わたしの王子様はあなただけだから」
どんなことが待っていても、きっと羽音《はおん》はこの言葉通り奏《かなで》の全てを受け入れると願って、歩みを止めずに立ち止まった瞬間、大きな歓声と拍手が聞こえてくる。
「これって…」
「はい、みんながあなたを待っている証拠です。自信を持って、さあ、輝きを心に刻んで」
奏《かなで》の応援と共に視界が元に戻って気づいた時にはステージの上に立っている。
「えっ!? これがステージ…思っていた以上に大きい」
そう、このステージは約百人以上が入るほどのドームのようなデビューには相応しすぎるほどの記念の日。
観客席の中にはもちろん。
「お姉ちゃん! 頑張ってね!」
一番前の真ん中の席にはずっとそばにいてくれる大切な妹の音陽《ねひ》が両手に真っ白なペンライトを持って左右に揺らして満面の笑みで応援してくれている。
感動的でも嬉しいという言葉だけではない足りないくらいに最高のステージの上に立っていることを深く涙が溢れそうなくらいに噛み締めている羽音《はおん》。
「みんな、ありがとう」
あっ、そうだ。
今のわたしは歌姫。
お姫様でもあるから綺麗にお辞儀を披露してそれから…顔を上げて天声《あまごえ》ちゃんに合図の言葉を贈る。
「天使の羽が羽ばたく時、あなたの心に残るような素敵な時間を届けましょう」
そう言った瞬間、天声《あまごえ》の居る空間に大きなスクリーンが立ち上がり、その合図が聞こえたことで桃色の羽をそっと下に降ろしてその羽が羽音《はおん》のドレスに飾られたことで曲がかかり、歌い始める。
「ただ一人に贈る素敵な贈り物だけど、その贈り物はあなたに届かない。届かなくても、心に届くならわたしはその羽を心に届くように歌を歌う」
羽音《はおん》の歌声から一枚の小さな羽が宙に浮かび羽音《はおん》の体を一枚から十枚、五十、百枚と数を増やして囲んでいく。
その姿はまるで羽に意志があるように楽しそうに羽音《はおん》のデビューステージを祝福しているように見える。
「どうして、どうして。あなたはわたしの前に現れてくれないの? わたしはあなたに会いたい。あなたと愛し合いたい。ただ…それだけなのに」
この歌詞には羽音《はおん》のある人への想いが込められた切なくも「愛」を感じるような不思議な感覚を覚える幸せな一時。
羽音《はおん》が手を上げれは羽もそれに応えるようにその手に寄り添い離れることがないと思えば…ステージ全体に百枚を超える羽が真っ白なステージに水色の彩りを加えて、羽が一度羽音《はおん》の胸に集まり、その瞬間。
「きっと、きっと。わたしの想いはあなただけの物になる。それもきっと大切な贈り物」
水色の彩りが天使の羽に似たような羽ばたきを象徴させることで羽音《はおん》の歌声から溢れる百枚以上の羽が一つに合体し、ステージの中央にステージに収まりきらないほどの大きい羽が羽音《はおん》のドレスに羽の飾りがドレスをさらに色付けしていく。
虹色みたいに…。
ここで、最後に。
「やっと届く、あなたに届く。わたしたちの愛の贈り物」
両手を前に伸ばして同時に羽が天井から天使が舞い降りたような羽が舞い落ちて曲が終わり、羽音《はおん》のデビューステージは大大大成功に成し遂げた。
「やった。わたし、わたし、こんなに楽しいことがあるなんて、今までの人生の中で一番の後悔だけど、これからの人生にはもっとたくさんの楽しいことも幸せなことも、人と愛し合うこともあることを信じよう!」
このデビューステージは誰の心にもきっと永遠に残るであろう特別な時間になったことは間違いないだろう。
だって、デビューステージでこんなにもたくさんの羽を作った羽の歌姫は羽音《はおん》が初めてなのだから。
「新しい羽の歌姫。可愛い子、発見」
「ふふっ、我のライバルに相応しいぞ」
「これはまだまだ。でも、デビューステージ、おめでとう」
その様子を見ていた天声《あまごえ》は。
「これが羽音《はおん》のステージ…すごい。わたしの理想に近い…でも、これは始まり。もっと、羽音《はおん》の輝きわたしに見せて」
羽音《はおん》のデビューステージは近くにいる人も遠くにいる人にも届いた最高の一時。
自信があってもなくても関係ない。
ステージに立った瞬間から歌姫はその歌声で形を作りステージに色や飾りをつける。
それができれば大丈夫。
きっと、あの歌姫にもそう思えることがあるはずだから。
「ありがとう。わたし、もっと頑張るから。ちゃんと見ててね」
わたしのステージはまだ始まったばかり。
これからの人生でなにが起きるか、とっても楽しみ!


