コンテスト七日目。
この日でコンテストは終了する。
決勝に勝ち残ったのは羽音《はおん》と星宙《ほしぞら》。
一回戦で対決したが、また対決することになったようだ。
羽と星。
どちらも最強の力を持つ二人が再び争うことでなにが変わるのか、とても楽しみです。
それは二人も同じはず。
お互い顔を会わせて羽音《はおん》は天使のような暖かみのある微笑みと、星宙《ほしぞら》は宇宙を連想させられるような美しい微笑みを見せ合うことで二人だけのステージを作り出せるこの瞬間。
「わたしが勝ちます」
「ううん、わたしが何度でも勝つ」
今回のステージテーマは「照らす」。
天使の羽ばたきで人々の心を照らすのか。
無限に広がる星の照らしか。
決勝にふさわしいドレスに身を包む二人の歌姫。
羽音《はおん》は主体となるドレスの色をシルバーにし、透明に近い透き通るような薄く滑らかな羽の飾りをつけた姿はまさに天使に選ばれた特別な人間のように見える。
「ふふっ、大丈夫」
わたしのドレスは天使のような暖かみのある存在なの。
誰もわたしには届かない。
こんなに特別なドレスを着れるのはわたしだけ。
美しく神秘的てな人間離れした天使の微笑みを魅せられた星宙《ほしぞら》も負けずにドレスをヒラヒラと左右に揺らしていつもより機嫌良さそうに満面の笑みを見せる。
「ふっ、この程度でもわたしはわたしのままよ」
星宙《ほしぞら》のドレスの主体となる色は瞳と同じ青色。
眩く眩しく輝く揺れる度に星形のビーズが流れ星のを描いている特別な一着。
それぞれティアラを頭に飾れば歌姫としての完成を表している。
もちろん今ステージに立てるのは王子様のエスコートがあるから。
奏《かなで》と弦《げん》。
それぞれ好いて愛して歌姫を想う心は揺らぐことはないだろう。
「羽音《はおん》ちゃん、僕はいつまでも永遠に君のそばにいるよ」
「ほしちゃん、ぼくは君の隣にいるよ」
王子様はただエスコートをするだけでステージに立つのは歌姫。
歌声で形を作れるのは歌姫の使命。
誰にでもできることではない。
「さあ、今日が最終日となったこのコンテスト。羽音VS星宙の熱く燃え上がるステージをご覧ください!」
異等義《いらぎ》の自由すぎる司会進行も今日で終わり。
お疲れ様でした。
どちらが勝っても、世界は変わることもないかもしれないが、今日のステージは誰にとっても特別な一時になることは間違いない。
二人姿勢を正しく直してお辞儀をする。
「わたしの照らす先には天使の暖かな光が待っている」
「わたしが照らす流れ星の輝きは消えることはない」
二人声を重ねて。
「わたしの光《輝き》であなたの心を照らしましょう!」
合図と共にピンクの羽がドレスに触れることで曲がかかる。
同時に全ての照明が消えて二人だけをスポットライトで照らし、まずは羽音《はおん》から歌う。
「不思議、わたしの天使の羽が天から溢れる色もなく透明に光を照らしている。きっとこれがわたしがあなたに届ける光を照らす姿なのね」
ゆっくり両手を天に届くように伸ばして本当に天から光をもらったような照明では作れない光が羽音《はおん》を照らし、そこから真っ白な羽が静かに落ちて来る。
こんなに神秘的で人間には作り出せないことを羽音《はおん》なら作り出せる。
このステージは全て羽音《はおん》のために用意されたと思わさられる特別な時。
すごい。
わたしの形はどんどんすごくなっている。
わたしも想像できないことが、この歌詞とドレスでさらに輝きを増していく…わたし、本当に歌姫に選ばれて良かった!
光も輝きも二人のステージで作り出される素敵な瞬間、感動。
さあ、次は星宙《ほしぞら》の番。
「わたしの照らす先には流れ星が待っているわ。心と体を癒やす流れ星がどれほどあなたを照らすのか…分かるでしょ?」
いつも通り黄色の流れ星が天井を夜空に染め上げ上から下に流れて星の欠片が落ちていく…このいつも通りのことこそが星宙《ほしぞら》の対決心を流れ星のように途切れることなく繋げているのだろう。
ふふっ、どう?
わたしの星はすごいのよ。
あなたの天使の照らしも素敵だけど、やっぱりわたしの流れ星が一番人の心を照らすことができる。
今回のテーマはまさにわたしのために用意された物。
絶対に勝つ!
星宙《ほしぞら》の本気もすごく感じられる。
流れ星に願いごとをするように
「あなたを照らすのはわたしだけに」
というような自分だけが一番であり続ける最強の形をステージに描くことでその力を発揮する。
だが、羽音《はおん》も負けずにまだまだ歌い続ける。
「ほら、あなたを照らしたわたしの羽はどこまでも広がっていく。なんて素敵なの、なんて愛おしいの? もっと、もっとわたしに身を委ねて」
落ちていた真っ白な羽が一斉にバサッと飛び立ち、一つに集まり羽音《はおん》の体を覆い尽くして手を広げたらステージに天使の羽の欠片が隅々まで宿り生かし腰に大きな羽が生えた。
「これは…」
わたし、本当に天使になったの?
そう感じさせられるような幻想的な形が羽音《はおん》の心を優しく天から降りる美しい光が照らすみたいに羽音《はおん》の天使の羽は消えることなくどんどん止まらなく作られる。
「ふふっ、さあわたしを見て。あなたは一人じゃない、あなたを傷つける人はいない。天から降りる光があなたの心を暖かく癒やして離すことはないの…安心して」
まだまだ羽音《はおん》の形は糸のようにきつく縛り途切れることなく手を上げれは羽が浮かび、下ろしたら羽はゆっくり落ちていく。
これは羽音にしか作れないたった一人にだけ与えられた特別な力。
もっと、もっと、作り出す!
天使の微笑みのような暖かくも何十倍となる愛おしい羽音《はおん》の笑顔は見ている人々に癒やしさ優しさの心を与えてくれる素敵なステージが完成していく。
と思っていたら?
「ダメよ! 流れ星はどこまでもこの夜空で広がり続けるのよ。わたしの持つ力こそが世界で一番特別なのよ!」
頭を抱えてなにかに怯えるように大粒の涙を流して天使の羽音《はおん》に両手を伸ばす星宙《ほしぞら》。
どうして、どうしてなのよ!
わたしのステージが作れない。
こんなのどうしようないでしょ!
せっかくここまで勝てたのに、わたしはここで終わってしまうの?
このままじゃ勝てない…なんとかしてわたしのステージを作らないと絶対に勝てない。
星宙《ほしぞら》は決勝戦まで勝ち残った自分を誇り思っていた。
今まで勝つことが不可能だったのに、このコンテストでは二回勝ち、さらに決勝戦まで行くことができた。
これは星宙《ほしぞら》にとっては輝きへの第一歩。
それを奪われてしまうのではないかという不安が急に来てしまったことで星宙《ほしぞら》の形は消えて天井に描いていた夜空が天へと変わり全てを失ったように絶望を感じて涙も叫びも溢れては止まらずに自分自身に怒りをぶつけてこう言った。
「わたしなんて最初からいなければ良かったんだ…」
思い通りにステージが作れなかったこと。
まだまだ自分を制御できなかったこと。
星宙《ほしぞら》にはもう余裕なんてない。
しゃがんで溢れる涙を両手で拭って歌うことも難しいこの絶望的な状況でできることなどなにも…。
「大丈夫。わたしがいるよ」
ゆっくり優しくその傷ついた心を癒すようにギュッと手を握ったのは。
「羽音《はおん》?」
満面の笑みで星宙《ほしぞら》の心を天から降り立つ眩い光のように照らしてくれる羽音《はおん》の姿を見た星宙《ほしぞら》は。
「そうだね」
同じようにクスッと心から嬉しそうに微笑んでゆっくり立ち上がる。
「あなたのおかげね。わたしの星はやっぱり天使には届かない。でも、その羽がわたしの心を優しく包み込んでいつまでも寄り添ってくれる。ああ、わたしはきっと、あなたに出会うために生まれてきたのね」
形はもう作れないけれど、この歌詞は星宙《ほしぞら》の今の状態を表した思いやりと温かさが込められた曲になっただろう。
ふふふっ。
不思議。
一回戦の時はわたしが羽音《はおん》を包んであげたけど、今は逆。
わたしたちって、似た者同士だったんだ。
傷つき寄り添い手を握る。
羽音《はおん》と星宙《ほしぞら》の二人は決してお互いにとって欠かせない大切な存在。
それを知った星宙《ほしぞら》は心からの温かな笑顔で羽音《はおん》をギュッと抱きしめた。
「ありがとう。わたしを救ってくれて、わたしに癒やしをくれて…本当に、ありがとう」
これは歌詞ではなく、星宙《ほしぞら》の本音と感謝。
このコンテストはきっと、様々な歌姫同士を対決させ、どんなステージでも自分らしく最高の形を作ることが天声《あまごえ》の願いでもあったのだろう。
お互いを認め合い、分かり合い、笑い合う関係がこの二人を強くほつれることのない結ばれた糸がいつまでも続きますように…。
「さあ、決勝戦が終わりました! 予想できない、想像することすらも素人のワタシたちにはできない仕上がりがこのステージで胸が熱くなるほど伝わってきましたね! 皆さんもそう思いますよね!」
異等義《いらぎ》の自由派手すぎる司会も今日で終わり。
一週間にも及ぶこのコンテストはとても面白い物であった。
他の属性同士の対決。
同じ属性同士では何度も勝っていた者が他の属性となると負けてしまったが、それも良い経験となった。
こうして色々な想いやその歌姫の形の作り方などを知ることで次のステージにも役立てる勉強にもなった。
天声《あまごえ》の考えていることは誰もしらない。
これら全てを計算した結果が成功となったのならなんでもいいのかもしれない。
だが、今は。
「星宙《ほしぞら》さん、二回もわたしと対決してく
れてありがとうございました。とっても楽しかったです」
笑顔で握手を求めてくる羽音《はおん》に、星宙《ほしぞら》は年下を可愛いがるように微笑ましく明るい笑顔でその手を握る。
「わたしも、君と対決して本当に良かった。また一緒にステージに立てるようにこれからも頑張るよ」
わたしももうちょっと、わたしの形を見直さないとね。
今回のテーマは二人にピッタリ。
天使と星、どちらにも当てはまる最高のテーマ。
「ふふっ」
わたしはやっぱり天使になれる。
そう近い存在になれると信じている。
だって、わたしの羽は誰にも届かないわたしだけの輝きがある限り、誰もわたしを止めることはできない。
羽音《はおん》は自分自身と向き合い、一度闇に堕ちたものの、天声《あまごえ》の教えで光へと変わり今まで以上の自由な輝きを手に入れた。
「ふっ」
羽音《はおん》には敵わない。
一度勝てた相手にはもう一度勝てると思ってた。
でも、違った。
羽音《はおん》が変わったことで、わたしはまた自信が消えてステージ中だったのに勝手に落ち込んで…本当、恥ずかしい。
星宙《ほしぞら》のステージはまだまだ完成途中なのかもしれない。
自分の歌声と形を制御する力が完璧にできなければ同じ失敗を繰り返すだけ。
それでも、これから少しずつ直していけばきっと羽音《はおん》に近く、それこそ無限に広がる宇宙のように自由で綺麗なステージを作れますように。
そして、この対決結果は。
「羽音《はおん》、ありがとう」
君の勝ちだよ。
「星宙《ほしぞら》さん?」
わたしは勝てたのかな?
運命の結果がここで決まる…はずが。
「まだ終わってない」
照明が全て消えた。
誰の声か分からない。
コツコツとヒールの音だけが響く謎の感覚。
一体誰が来ているのだろうか?
「はぁ~、やっとボクも仕事ができるっす」
「ちゃんとエスコートして」
「分かってるっす。なんてったって、今日はあなたのデビューステージなんすからね」
「ふん、余計なことばかり言わないで早くして」
私のデビューステージはきっと…に嫌われてしまうのかもしれない。
それでも、私は私の使命を全うするだけ。
王子様のエスコートでステージに立ったのは。
「私は陽音《ひね》。陽の歌姫です」
そう言った瞬間、照明が全てつき、中央に立ったのは金色のティアラと黄色のドレスを着る音陽《ねひ》。
その姿を見た羽音《はおん》以外の者は全てを知った。
「十人目の陽の歌姫」
ゆっくり目を閉じてまたゆっくり開いたら陽だまりのような温かな笑顔で陽音《ひね》のステージが、今この瞬間から始まる。
「陽だまりの中で眠る一人の少女よ。私の祈りであなたの心に温かな笑顔を与えてあげます。しっかりと私を見て手を伸ばして、一緒に温かな世界へと羽ばたきましょう」
この日でコンテストは終了する。
決勝に勝ち残ったのは羽音《はおん》と星宙《ほしぞら》。
一回戦で対決したが、また対決することになったようだ。
羽と星。
どちらも最強の力を持つ二人が再び争うことでなにが変わるのか、とても楽しみです。
それは二人も同じはず。
お互い顔を会わせて羽音《はおん》は天使のような暖かみのある微笑みと、星宙《ほしぞら》は宇宙を連想させられるような美しい微笑みを見せ合うことで二人だけのステージを作り出せるこの瞬間。
「わたしが勝ちます」
「ううん、わたしが何度でも勝つ」
今回のステージテーマは「照らす」。
天使の羽ばたきで人々の心を照らすのか。
無限に広がる星の照らしか。
決勝にふさわしいドレスに身を包む二人の歌姫。
羽音《はおん》は主体となるドレスの色をシルバーにし、透明に近い透き通るような薄く滑らかな羽の飾りをつけた姿はまさに天使に選ばれた特別な人間のように見える。
「ふふっ、大丈夫」
わたしのドレスは天使のような暖かみのある存在なの。
誰もわたしには届かない。
こんなに特別なドレスを着れるのはわたしだけ。
美しく神秘的てな人間離れした天使の微笑みを魅せられた星宙《ほしぞら》も負けずにドレスをヒラヒラと左右に揺らしていつもより機嫌良さそうに満面の笑みを見せる。
「ふっ、この程度でもわたしはわたしのままよ」
星宙《ほしぞら》のドレスの主体となる色は瞳と同じ青色。
眩く眩しく輝く揺れる度に星形のビーズが流れ星のを描いている特別な一着。
それぞれティアラを頭に飾れば歌姫としての完成を表している。
もちろん今ステージに立てるのは王子様のエスコートがあるから。
奏《かなで》と弦《げん》。
それぞれ好いて愛して歌姫を想う心は揺らぐことはないだろう。
「羽音《はおん》ちゃん、僕はいつまでも永遠に君のそばにいるよ」
「ほしちゃん、ぼくは君の隣にいるよ」
王子様はただエスコートをするだけでステージに立つのは歌姫。
歌声で形を作れるのは歌姫の使命。
誰にでもできることではない。
「さあ、今日が最終日となったこのコンテスト。羽音VS星宙の熱く燃え上がるステージをご覧ください!」
異等義《いらぎ》の自由すぎる司会進行も今日で終わり。
お疲れ様でした。
どちらが勝っても、世界は変わることもないかもしれないが、今日のステージは誰にとっても特別な一時になることは間違いない。
二人姿勢を正しく直してお辞儀をする。
「わたしの照らす先には天使の暖かな光が待っている」
「わたしが照らす流れ星の輝きは消えることはない」
二人声を重ねて。
「わたしの光《輝き》であなたの心を照らしましょう!」
合図と共にピンクの羽がドレスに触れることで曲がかかる。
同時に全ての照明が消えて二人だけをスポットライトで照らし、まずは羽音《はおん》から歌う。
「不思議、わたしの天使の羽が天から溢れる色もなく透明に光を照らしている。きっとこれがわたしがあなたに届ける光を照らす姿なのね」
ゆっくり両手を天に届くように伸ばして本当に天から光をもらったような照明では作れない光が羽音《はおん》を照らし、そこから真っ白な羽が静かに落ちて来る。
こんなに神秘的で人間には作り出せないことを羽音《はおん》なら作り出せる。
このステージは全て羽音《はおん》のために用意されたと思わさられる特別な時。
すごい。
わたしの形はどんどんすごくなっている。
わたしも想像できないことが、この歌詞とドレスでさらに輝きを増していく…わたし、本当に歌姫に選ばれて良かった!
光も輝きも二人のステージで作り出される素敵な瞬間、感動。
さあ、次は星宙《ほしぞら》の番。
「わたしの照らす先には流れ星が待っているわ。心と体を癒やす流れ星がどれほどあなたを照らすのか…分かるでしょ?」
いつも通り黄色の流れ星が天井を夜空に染め上げ上から下に流れて星の欠片が落ちていく…このいつも通りのことこそが星宙《ほしぞら》の対決心を流れ星のように途切れることなく繋げているのだろう。
ふふっ、どう?
わたしの星はすごいのよ。
あなたの天使の照らしも素敵だけど、やっぱりわたしの流れ星が一番人の心を照らすことができる。
今回のテーマはまさにわたしのために用意された物。
絶対に勝つ!
星宙《ほしぞら》の本気もすごく感じられる。
流れ星に願いごとをするように
「あなたを照らすのはわたしだけに」
というような自分だけが一番であり続ける最強の形をステージに描くことでその力を発揮する。
だが、羽音《はおん》も負けずにまだまだ歌い続ける。
「ほら、あなたを照らしたわたしの羽はどこまでも広がっていく。なんて素敵なの、なんて愛おしいの? もっと、もっとわたしに身を委ねて」
落ちていた真っ白な羽が一斉にバサッと飛び立ち、一つに集まり羽音《はおん》の体を覆い尽くして手を広げたらステージに天使の羽の欠片が隅々まで宿り生かし腰に大きな羽が生えた。
「これは…」
わたし、本当に天使になったの?
そう感じさせられるような幻想的な形が羽音《はおん》の心を優しく天から降りる美しい光が照らすみたいに羽音《はおん》の天使の羽は消えることなくどんどん止まらなく作られる。
「ふふっ、さあわたしを見て。あなたは一人じゃない、あなたを傷つける人はいない。天から降りる光があなたの心を暖かく癒やして離すことはないの…安心して」
まだまだ羽音《はおん》の形は糸のようにきつく縛り途切れることなく手を上げれは羽が浮かび、下ろしたら羽はゆっくり落ちていく。
これは羽音にしか作れないたった一人にだけ与えられた特別な力。
もっと、もっと、作り出す!
天使の微笑みのような暖かくも何十倍となる愛おしい羽音《はおん》の笑顔は見ている人々に癒やしさ優しさの心を与えてくれる素敵なステージが完成していく。
と思っていたら?
「ダメよ! 流れ星はどこまでもこの夜空で広がり続けるのよ。わたしの持つ力こそが世界で一番特別なのよ!」
頭を抱えてなにかに怯えるように大粒の涙を流して天使の羽音《はおん》に両手を伸ばす星宙《ほしぞら》。
どうして、どうしてなのよ!
わたしのステージが作れない。
こんなのどうしようないでしょ!
せっかくここまで勝てたのに、わたしはここで終わってしまうの?
このままじゃ勝てない…なんとかしてわたしのステージを作らないと絶対に勝てない。
星宙《ほしぞら》は決勝戦まで勝ち残った自分を誇り思っていた。
今まで勝つことが不可能だったのに、このコンテストでは二回勝ち、さらに決勝戦まで行くことができた。
これは星宙《ほしぞら》にとっては輝きへの第一歩。
それを奪われてしまうのではないかという不安が急に来てしまったことで星宙《ほしぞら》の形は消えて天井に描いていた夜空が天へと変わり全てを失ったように絶望を感じて涙も叫びも溢れては止まらずに自分自身に怒りをぶつけてこう言った。
「わたしなんて最初からいなければ良かったんだ…」
思い通りにステージが作れなかったこと。
まだまだ自分を制御できなかったこと。
星宙《ほしぞら》にはもう余裕なんてない。
しゃがんで溢れる涙を両手で拭って歌うことも難しいこの絶望的な状況でできることなどなにも…。
「大丈夫。わたしがいるよ」
ゆっくり優しくその傷ついた心を癒すようにギュッと手を握ったのは。
「羽音《はおん》?」
満面の笑みで星宙《ほしぞら》の心を天から降り立つ眩い光のように照らしてくれる羽音《はおん》の姿を見た星宙《ほしぞら》は。
「そうだね」
同じようにクスッと心から嬉しそうに微笑んでゆっくり立ち上がる。
「あなたのおかげね。わたしの星はやっぱり天使には届かない。でも、その羽がわたしの心を優しく包み込んでいつまでも寄り添ってくれる。ああ、わたしはきっと、あなたに出会うために生まれてきたのね」
形はもう作れないけれど、この歌詞は星宙《ほしぞら》の今の状態を表した思いやりと温かさが込められた曲になっただろう。
ふふふっ。
不思議。
一回戦の時はわたしが羽音《はおん》を包んであげたけど、今は逆。
わたしたちって、似た者同士だったんだ。
傷つき寄り添い手を握る。
羽音《はおん》と星宙《ほしぞら》の二人は決してお互いにとって欠かせない大切な存在。
それを知った星宙《ほしぞら》は心からの温かな笑顔で羽音《はおん》をギュッと抱きしめた。
「ありがとう。わたしを救ってくれて、わたしに癒やしをくれて…本当に、ありがとう」
これは歌詞ではなく、星宙《ほしぞら》の本音と感謝。
このコンテストはきっと、様々な歌姫同士を対決させ、どんなステージでも自分らしく最高の形を作ることが天声《あまごえ》の願いでもあったのだろう。
お互いを認め合い、分かり合い、笑い合う関係がこの二人を強くほつれることのない結ばれた糸がいつまでも続きますように…。
「さあ、決勝戦が終わりました! 予想できない、想像することすらも素人のワタシたちにはできない仕上がりがこのステージで胸が熱くなるほど伝わってきましたね! 皆さんもそう思いますよね!」
異等義《いらぎ》の自由派手すぎる司会も今日で終わり。
一週間にも及ぶこのコンテストはとても面白い物であった。
他の属性同士の対決。
同じ属性同士では何度も勝っていた者が他の属性となると負けてしまったが、それも良い経験となった。
こうして色々な想いやその歌姫の形の作り方などを知ることで次のステージにも役立てる勉強にもなった。
天声《あまごえ》の考えていることは誰もしらない。
これら全てを計算した結果が成功となったのならなんでもいいのかもしれない。
だが、今は。
「星宙《ほしぞら》さん、二回もわたしと対決してく
れてありがとうございました。とっても楽しかったです」
笑顔で握手を求めてくる羽音《はおん》に、星宙《ほしぞら》は年下を可愛いがるように微笑ましく明るい笑顔でその手を握る。
「わたしも、君と対決して本当に良かった。また一緒にステージに立てるようにこれからも頑張るよ」
わたしももうちょっと、わたしの形を見直さないとね。
今回のテーマは二人にピッタリ。
天使と星、どちらにも当てはまる最高のテーマ。
「ふふっ」
わたしはやっぱり天使になれる。
そう近い存在になれると信じている。
だって、わたしの羽は誰にも届かないわたしだけの輝きがある限り、誰もわたしを止めることはできない。
羽音《はおん》は自分自身と向き合い、一度闇に堕ちたものの、天声《あまごえ》の教えで光へと変わり今まで以上の自由な輝きを手に入れた。
「ふっ」
羽音《はおん》には敵わない。
一度勝てた相手にはもう一度勝てると思ってた。
でも、違った。
羽音《はおん》が変わったことで、わたしはまた自信が消えてステージ中だったのに勝手に落ち込んで…本当、恥ずかしい。
星宙《ほしぞら》のステージはまだまだ完成途中なのかもしれない。
自分の歌声と形を制御する力が完璧にできなければ同じ失敗を繰り返すだけ。
それでも、これから少しずつ直していけばきっと羽音《はおん》に近く、それこそ無限に広がる宇宙のように自由で綺麗なステージを作れますように。
そして、この対決結果は。
「羽音《はおん》、ありがとう」
君の勝ちだよ。
「星宙《ほしぞら》さん?」
わたしは勝てたのかな?
運命の結果がここで決まる…はずが。
「まだ終わってない」
照明が全て消えた。
誰の声か分からない。
コツコツとヒールの音だけが響く謎の感覚。
一体誰が来ているのだろうか?
「はぁ~、やっとボクも仕事ができるっす」
「ちゃんとエスコートして」
「分かってるっす。なんてったって、今日はあなたのデビューステージなんすからね」
「ふん、余計なことばかり言わないで早くして」
私のデビューステージはきっと…に嫌われてしまうのかもしれない。
それでも、私は私の使命を全うするだけ。
王子様のエスコートでステージに立ったのは。
「私は陽音《ひね》。陽の歌姫です」
そう言った瞬間、照明が全てつき、中央に立ったのは金色のティアラと黄色のドレスを着る音陽《ねひ》。
その姿を見た羽音《はおん》以外の者は全てを知った。
「十人目の陽の歌姫」
ゆっくり目を閉じてまたゆっくり開いたら陽だまりのような温かな笑顔で陽音《ひね》のステージが、今この瞬間から始まる。
「陽だまりの中で眠る一人の少女よ。私の祈りであなたの心に温かな笑顔を与えてあげます。しっかりと私を見て手を伸ばして、一緒に温かな世界へと羽ばたきましょう」


