コンテスト六日目。
この日は華恋VS羽音の対決。
「わたくしの華やかさに勝てるとは思わないことね」
「いいえ、勝つのはわたしです」
華やかに豪華に微笑む華恋《かれん》と天使の微笑みのような暖かさを持つ羽音《はおん》の対決をどうぞご覧ください。
華恋《かれん》。
「うふふふふふふふっ! 今回は赤ピンクの椿で勝負しますわ!」
色を変えれば誰にでも勝てる。
空音《そらね》との対決でそれが分かった。
わたくしの椿は色が限られているけれど、使い方を上手くコントロールすれば無限に華を咲かせられる。
「なんて最高な気分なのかしら」
自信に満ち溢れて高笑いをしドレスの準備もバッチリ整えた華恋《かれん》に、舞《まい》も嬉しそうに微笑んでそっとさりげなく手を握る。
「華恋《かれん》様、今日も勝てると俺は信じています。華恋《かれん》様のステージは誰にも止められない唯一無二の物です。俺はただエスコートするだけですが、いつも華恋《かれん》様の隣で見守っています」
俺にできることからなんでもする。
俺は華恋《かれん》様の王子様に選ばれたんだ…ご主人様の言うことはできる限り叶えるんだ。
舞《まい》の持つ真剣さと熱い想いが込められた眼差しが華恋《かれん》のやる気をもっと引き立たせて華やかな笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、わたくしの願いはいつも舞《まい》が叶えてくれる。確かに王子様は歌姫をエスコートするのが仕事だけれど、わたくしはそれだけではないと思っているわ」
「つまり?」
「つまり愛おしいということなのよ」
「えっ」
「わたくしだけではない、他の歌姫の皆さんも同じことを思っているはずよ。王子様のエスコートなしにステージには立てない、手を握ってくれない。寂しい時も悲しい時も、いつもそばにいてくれるあなたたち王子様にわたくしたち歌姫はいつも救われているのよ。だから、もっと自信を持ちなさい」
その言葉で、舞《まい》は満面の笑みで深く頷き抱きしめる。
「ありがとうございます。その言葉、心に刻みます」
「ええ、忘れてはダメよ」
「もちろんです」
「うふっ、では行きましょう」
今回のドレスの主体となる色は薄ピンク色。
赤ピンクの椿の花びらがドレス全体に散りばめられた少し切なくもまた咲かせたいという想いが込められた一着。
胸元にはその椿が飾られた華やかさ抜群の物。
あとはティアラを頭に飾れば準備完了。
「うふふふふっ、お羽さんのステージがどんな物になるのか、楽しみにしているわ」
今回もどんな華やかなステージが見られるのか。
羽音《はおん》。
「わたしの天使の羽で華恋《かれん》さんに勝つ」
今回のドレスは薄紫色を主体とし、紫色の羽がまるで背中に生えたようにリボンで形を作り、またその羽が襟から裾へ隅々まで天使の羽をイメージした神秘的な一着。
あとはティアラを頭に飾り準備完了。
「うん、このドレスで勝負する」
初めて戦う人とどんなステージが作れるのか楽しみ!
不安や怖いという気持ちよりも、羽音《はおん》は楽しむことは大切に前を向いて鏡の自分に笑いかける。
「大丈夫。わたしなら勝てる」
だって、こんなにドキドキするほど楽しみなことは久しぶりだから。
羽音《はおん》が作り出す天使の羽は誰も見たことない神秘的で天に高く羽ばたくような特別な力を持っている。
「羽音《はおん》ちゃん、今日のドレスも超似合ってる! マジで本物の天使みたいで気分爆上がりだよ!」
いつも通りギューッと羽音《はおん》のドレス姿に感動しすぎてついつい抱きしめるほど絶好調な奏《かなで》。
はぁ~、僕の天使はマジ可愛すぎてチョコみたいにドロドロに甘く溶けてしまいそう〜。
少し不気味に感じるほどに自分で自分の舌を舐め回す奏《かなで》の姿は本当に気持ち悪いが、羽音《はおん》は全く気づかず、ただ抱きしめられたことを喜びに感じて頬を真っ赤に染めている。
「ふふっ」
奏《かなで》の手は温かい。
毛布に包まれている感じで心地良くて、いつまでもこうしていたい。
「わたしの王子様が奏《かなで》で嬉しい」
「えっ、急にどうしたの?」
僕、なにか変なこと言ったのかな?
羽音《はおん》の言葉全てに奏《かなで》は毎回ドキッとして舐め回していた舌を口の中に引っ込ませて恐る恐る羽音《はおん》と瞳を合わせたら
「やっと瞳が合ったね」
と、美しく清らかな笑顔を見せられたことで心から安心した奏《かなで》。
「ははっ、羽音《はおん》ちゃんには敵わないなぁ〜」
「えっ、なにが?」
わたし、なにか変なこと言ったかな?
不思議そうに首を傾げる羽音《はおん》の頭を奏《かなで》がポンッと優しく撫でた。
「僕には持ってない物を、羽音《はおん》ちゃんはたくさん持ってる。僕の方こそ、君が歌姫で良かった」
心からそう思ってる。
僕たちは似た者同士だね。
「わたしたち、もっと仲良しになれたね」
心からそう思いたい。
わたしたちは過去も未来もずっと離れたりしない。
「さあ、行こう」
「うん、絶対にわたしが勝つ」
二人仲良く手を繋ぎステージへと向かう。
「さあ、今日は二回戦二日目。華恋VS羽音の対決は一体どちらが勝つのでしょうか? 華やかさか、羽の音色か。ワタシも正直この対決の結果が知りたくて昨日の朝から今日の朝まで眠れず自画像を描くしかありませんでした…ということは置いておいて、今回は空音《そらね》に勝利した華恋《かれん》と三人の音を掴んだ者の中から選ばれ復活をした羽音《はおん》のお互い譲れない想いを胸に戦うステージをぜひご覧いただきましょう!」
今日の異等義《いらぎ》はいつもより二倍高くテンションが上がり何度もコロコロ転がったり起き上がってはジャンプをしての繰り返しで全く落ち着きがないが、実際ナレーションをしている私もワクワクしている。
それぞれ王子様のエスコートで扉の中に入り、生と死の間を通り抜ければそこはもうステージ。
会場の熱気が二人の登場で湯気のように沸き上がる。
「羽音《はおん》ちゃん、早く歌って!」
「華恋《かれん》様!」
「二人のステージ見たーい」
この前の空音《そらね》との対決で華恋《かれん》にも少しずつファンが増えている。
「うふふふふふっ! もっと、もっと聞かせなさい、あなたたちの声を!」
こんなに気分が良いのは初めてだわ。
やっぱりファンというのは必要なことなのね。
だが、羽音《はおん》はもっと喜んでいる。
天使の微笑みのような暖かくも愛おしいこの顔は誰が見ても癒される。
「ふふっ」
みんなの応援がすごく嬉しい。
わたしのステージを楽しみにしてくれているって、この応援がそれを表してくれているの。
二人の気分が高まったところで証明が一旦消える。
今回のステージテーマは「祈り」。
どんなステージを描いてくれるのか。
「わたしの祈りは天使のよう」
「わたくしの祈りは華のよう」
二人声を重ねて。
「今この時の祈りを大切にわたし《わたくし》の祈りをあなたに魅せましょう」
まずは華恋《かれん》から。
「一人の少女が道に迷ったみたい。少女は誰からも愛されず一人ぼっちで生きてきたけれど、ただ一つだけ、少女は祈る」
赤ピンクの椿が地面から浮き出るように、木が水に沈んでそこから泡のように椿がどんどん湧き出る不思議な光景。
「その祈りは華を魅せること。可愛い花よりも、豪華な華が少女が一番愛している物。だからわたくしはその祈りを叶える。少女が祈る人生全てを華やかに染め上げるのよ」
うっふふ。
どうかしら?
わたくしの形はあなたには作れない。
ほら、あなたの番よ。
心の中でも高笑いをするほど余裕を魅せる華恋《かれん》の形はまだまだ止まることはなさそう。
だが、その余裕も一瞬で全てを吹き消す。
「少年はみんなから愛される存在。たくさん頑張ってたくさん笑って毎日幸せだった。そんな少年の祈りは夢を叶えること。その夢はこの天使の羽のように大きく優しく包み込む温かな思い」
天使の羽というのは羽音《はおん》だけが作り出せる特別な形。
誰も真似できない羽音《はおん》だけが天使の微笑みのような暖かくも愛おしい笑顔がまさにそれを証明している。
真っ白な羽がステージを羽で包み込み、バサッと広げた瞬間、薄紫色の色とりどりの羽へと色を変えてステージにその羽の欠片がステージ全体に描かれ、ちょっとだけ天使とは違う神秘的で誰もが心奪われる最高のステージが完成した。
わあっ。
すごい、すごい。
わたしの形がどんどん進化していく。
きっと復活を遂げたあの時からわたしの形も自由に解放された。
もっと作りたい、もっとみんなに届けたい。
「少年の夢はみんなを笑顔にすること。いつもの笑顔よりも、みんなが心から笑ってくれるように、少年は色々と考えている。面白いこと、楽しいこと、それから…好きになること。こんなに簡単なことでも、夢にすればもっと頑張れる。だって、夢の形は誰にとっても特別な物だから」
羽音《はおん》の形はもう抑えことなく薄紫色の羽の欠片がステージから飛んで行き、観客席にいるファンの手に落ちていく素敵な瞬間。
これを見ていた華恋《かれん》は衝撃を受けて後ろで固まったまま。
「……」
なによ、これ?
わたくしには作れない物をこんなにあっさり作り出せるなんてどういうことよ?
そもそも何故羽音《はおん》がわたくしよりも形を上手く使いこなせるのよ?
分からないわ、わたくし、このままなにもせずに終わってしまうなんて…そんなの嫌よ!
せっかく二回戦まで勝ち進んだのに、デビューしたばかりの新人に負けるなんて恥をかくだけよ。
「くっ」
華恋《かれん》は新人の羽音《はおん》に負けることを心から嫌がり、無理やりにでも前に立とうとしたら
「今日は主役はわたしなの」
と、羽音《はおん》が本物の少年の低くも少し高めの声で止められてもうなにもできなくなってしまった華恋《かれん》。
「…はあっ」
もう遅いのね。
わたくしはこの子に勝てない。
もう諦めるわ。
黙って後ろに一歩下がり、華恋《かれん》は華やかに豪華に微笑み、ただじっと羽音《はおん》のステージを見守ることを選んだ。
「少年の夢は叶った。毎日祈ったおかげで少年みんなを心から笑顔にすることができた。祈りはきっと、誰もが望み希望を抱き願うことで人々の想いを叶えると少年は知った」
ここで曲が終わった。
「さあ、この対決の結果はどうなったのか?」
羽音《はおん》のステージにすっかり心奪われてドキドキして頬を真っ赤に染める異等義《いらぎ》の姿は少しだけ可愛く見える。
きっとこのステージを見た天声《あまごえ》も同じ想いを感じたはず。
「羽音《はおん》、あなたのステージは毎回わたしを虜にする。本当に、すごい子を選んだ」
あなたを選んでわたしはずっと心の扉が開いて閉じることはない。
ドレスも歌詞も全部わたしのために作ってくれた。
「ありがとう」
前髪で隠れた顔はきっと笑顔を浮かべているはず。
顔が見えなくても、その言葉遣いと胸に手を当てて安心している姿は本当に羽音《はおん》への大切な想いが滲み出ていることもまた事実となるだろう。
「よし、決めた」
水色の羽がたどり着いた先は。
「嬉しい」
胸に手を当ててひっそりと涙を浮かべる羽音《はおん》が選ばれた。
「ふふっ」
天声《あまごえ》ちゃんがわたしを選んでくれて嬉しい!
羽音《はおん》のステージは全て天声《あまごえ》に届いている…しっかりと。
この対決の勝者に選ばれたのは羽音《はおん》。
いよいよ次のお話は決勝戦。
星宙VS羽音。
一度対決した二人が決勝戦でまた対決することになった。
一体どうなってしまうのか?
「響《ひびき》」
「なんすか?」
「君は私の王子様なんだから、最後まで付き合って」
「もちろん、それは最初から分かってから言わなくてもいいっすよ」
「そう、ならいいけど…」
お姉ちゃん、ごめんなさい。
私はお姉ちゃんよりも上に立つことが心から怖かったけど、今はもうその感情を捨てて私の使命を全うする。
だから、なにも言わずに見守っててほしい。
私は私の形を作るだけ。
決勝戦でこのコンテストは終了する。
誰が勝っても文句なしの対決にどんな意味が込められていても、それが歌姫や王子様の未来をより良くするのなら、このコンテストを提案した天声《あまごえ》の想いも間違っていなかっただろう。
「決勝戦ではお互いお互いの限界を超えた本気の形で勝負しなさい。それがわたしがあなたたちを選んだ理由なんだから」
歌姫に選ばれた者 王子様に選ばれた者。
奇跡と運命の糸はもう既に切れることのない特別。
「私《わたし》のステージ、見せてあげる」
この日は華恋VS羽音の対決。
「わたくしの華やかさに勝てるとは思わないことね」
「いいえ、勝つのはわたしです」
華やかに豪華に微笑む華恋《かれん》と天使の微笑みのような暖かさを持つ羽音《はおん》の対決をどうぞご覧ください。
華恋《かれん》。
「うふふふふふふふっ! 今回は赤ピンクの椿で勝負しますわ!」
色を変えれば誰にでも勝てる。
空音《そらね》との対決でそれが分かった。
わたくしの椿は色が限られているけれど、使い方を上手くコントロールすれば無限に華を咲かせられる。
「なんて最高な気分なのかしら」
自信に満ち溢れて高笑いをしドレスの準備もバッチリ整えた華恋《かれん》に、舞《まい》も嬉しそうに微笑んでそっとさりげなく手を握る。
「華恋《かれん》様、今日も勝てると俺は信じています。華恋《かれん》様のステージは誰にも止められない唯一無二の物です。俺はただエスコートするだけですが、いつも華恋《かれん》様の隣で見守っています」
俺にできることからなんでもする。
俺は華恋《かれん》様の王子様に選ばれたんだ…ご主人様の言うことはできる限り叶えるんだ。
舞《まい》の持つ真剣さと熱い想いが込められた眼差しが華恋《かれん》のやる気をもっと引き立たせて華やかな笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、わたくしの願いはいつも舞《まい》が叶えてくれる。確かに王子様は歌姫をエスコートするのが仕事だけれど、わたくしはそれだけではないと思っているわ」
「つまり?」
「つまり愛おしいということなのよ」
「えっ」
「わたくしだけではない、他の歌姫の皆さんも同じことを思っているはずよ。王子様のエスコートなしにステージには立てない、手を握ってくれない。寂しい時も悲しい時も、いつもそばにいてくれるあなたたち王子様にわたくしたち歌姫はいつも救われているのよ。だから、もっと自信を持ちなさい」
その言葉で、舞《まい》は満面の笑みで深く頷き抱きしめる。
「ありがとうございます。その言葉、心に刻みます」
「ええ、忘れてはダメよ」
「もちろんです」
「うふっ、では行きましょう」
今回のドレスの主体となる色は薄ピンク色。
赤ピンクの椿の花びらがドレス全体に散りばめられた少し切なくもまた咲かせたいという想いが込められた一着。
胸元にはその椿が飾られた華やかさ抜群の物。
あとはティアラを頭に飾れば準備完了。
「うふふふふっ、お羽さんのステージがどんな物になるのか、楽しみにしているわ」
今回もどんな華やかなステージが見られるのか。
羽音《はおん》。
「わたしの天使の羽で華恋《かれん》さんに勝つ」
今回のドレスは薄紫色を主体とし、紫色の羽がまるで背中に生えたようにリボンで形を作り、またその羽が襟から裾へ隅々まで天使の羽をイメージした神秘的な一着。
あとはティアラを頭に飾り準備完了。
「うん、このドレスで勝負する」
初めて戦う人とどんなステージが作れるのか楽しみ!
不安や怖いという気持ちよりも、羽音《はおん》は楽しむことは大切に前を向いて鏡の自分に笑いかける。
「大丈夫。わたしなら勝てる」
だって、こんなにドキドキするほど楽しみなことは久しぶりだから。
羽音《はおん》が作り出す天使の羽は誰も見たことない神秘的で天に高く羽ばたくような特別な力を持っている。
「羽音《はおん》ちゃん、今日のドレスも超似合ってる! マジで本物の天使みたいで気分爆上がりだよ!」
いつも通りギューッと羽音《はおん》のドレス姿に感動しすぎてついつい抱きしめるほど絶好調な奏《かなで》。
はぁ~、僕の天使はマジ可愛すぎてチョコみたいにドロドロに甘く溶けてしまいそう〜。
少し不気味に感じるほどに自分で自分の舌を舐め回す奏《かなで》の姿は本当に気持ち悪いが、羽音《はおん》は全く気づかず、ただ抱きしめられたことを喜びに感じて頬を真っ赤に染めている。
「ふふっ」
奏《かなで》の手は温かい。
毛布に包まれている感じで心地良くて、いつまでもこうしていたい。
「わたしの王子様が奏《かなで》で嬉しい」
「えっ、急にどうしたの?」
僕、なにか変なこと言ったのかな?
羽音《はおん》の言葉全てに奏《かなで》は毎回ドキッとして舐め回していた舌を口の中に引っ込ませて恐る恐る羽音《はおん》と瞳を合わせたら
「やっと瞳が合ったね」
と、美しく清らかな笑顔を見せられたことで心から安心した奏《かなで》。
「ははっ、羽音《はおん》ちゃんには敵わないなぁ〜」
「えっ、なにが?」
わたし、なにか変なこと言ったかな?
不思議そうに首を傾げる羽音《はおん》の頭を奏《かなで》がポンッと優しく撫でた。
「僕には持ってない物を、羽音《はおん》ちゃんはたくさん持ってる。僕の方こそ、君が歌姫で良かった」
心からそう思ってる。
僕たちは似た者同士だね。
「わたしたち、もっと仲良しになれたね」
心からそう思いたい。
わたしたちは過去も未来もずっと離れたりしない。
「さあ、行こう」
「うん、絶対にわたしが勝つ」
二人仲良く手を繋ぎステージへと向かう。
「さあ、今日は二回戦二日目。華恋VS羽音の対決は一体どちらが勝つのでしょうか? 華やかさか、羽の音色か。ワタシも正直この対決の結果が知りたくて昨日の朝から今日の朝まで眠れず自画像を描くしかありませんでした…ということは置いておいて、今回は空音《そらね》に勝利した華恋《かれん》と三人の音を掴んだ者の中から選ばれ復活をした羽音《はおん》のお互い譲れない想いを胸に戦うステージをぜひご覧いただきましょう!」
今日の異等義《いらぎ》はいつもより二倍高くテンションが上がり何度もコロコロ転がったり起き上がってはジャンプをしての繰り返しで全く落ち着きがないが、実際ナレーションをしている私もワクワクしている。
それぞれ王子様のエスコートで扉の中に入り、生と死の間を通り抜ければそこはもうステージ。
会場の熱気が二人の登場で湯気のように沸き上がる。
「羽音《はおん》ちゃん、早く歌って!」
「華恋《かれん》様!」
「二人のステージ見たーい」
この前の空音《そらね》との対決で華恋《かれん》にも少しずつファンが増えている。
「うふふふふふっ! もっと、もっと聞かせなさい、あなたたちの声を!」
こんなに気分が良いのは初めてだわ。
やっぱりファンというのは必要なことなのね。
だが、羽音《はおん》はもっと喜んでいる。
天使の微笑みのような暖かくも愛おしいこの顔は誰が見ても癒される。
「ふふっ」
みんなの応援がすごく嬉しい。
わたしのステージを楽しみにしてくれているって、この応援がそれを表してくれているの。
二人の気分が高まったところで証明が一旦消える。
今回のステージテーマは「祈り」。
どんなステージを描いてくれるのか。
「わたしの祈りは天使のよう」
「わたくしの祈りは華のよう」
二人声を重ねて。
「今この時の祈りを大切にわたし《わたくし》の祈りをあなたに魅せましょう」
まずは華恋《かれん》から。
「一人の少女が道に迷ったみたい。少女は誰からも愛されず一人ぼっちで生きてきたけれど、ただ一つだけ、少女は祈る」
赤ピンクの椿が地面から浮き出るように、木が水に沈んでそこから泡のように椿がどんどん湧き出る不思議な光景。
「その祈りは華を魅せること。可愛い花よりも、豪華な華が少女が一番愛している物。だからわたくしはその祈りを叶える。少女が祈る人生全てを華やかに染め上げるのよ」
うっふふ。
どうかしら?
わたくしの形はあなたには作れない。
ほら、あなたの番よ。
心の中でも高笑いをするほど余裕を魅せる華恋《かれん》の形はまだまだ止まることはなさそう。
だが、その余裕も一瞬で全てを吹き消す。
「少年はみんなから愛される存在。たくさん頑張ってたくさん笑って毎日幸せだった。そんな少年の祈りは夢を叶えること。その夢はこの天使の羽のように大きく優しく包み込む温かな思い」
天使の羽というのは羽音《はおん》だけが作り出せる特別な形。
誰も真似できない羽音《はおん》だけが天使の微笑みのような暖かくも愛おしい笑顔がまさにそれを証明している。
真っ白な羽がステージを羽で包み込み、バサッと広げた瞬間、薄紫色の色とりどりの羽へと色を変えてステージにその羽の欠片がステージ全体に描かれ、ちょっとだけ天使とは違う神秘的で誰もが心奪われる最高のステージが完成した。
わあっ。
すごい、すごい。
わたしの形がどんどん進化していく。
きっと復活を遂げたあの時からわたしの形も自由に解放された。
もっと作りたい、もっとみんなに届けたい。
「少年の夢はみんなを笑顔にすること。いつもの笑顔よりも、みんなが心から笑ってくれるように、少年は色々と考えている。面白いこと、楽しいこと、それから…好きになること。こんなに簡単なことでも、夢にすればもっと頑張れる。だって、夢の形は誰にとっても特別な物だから」
羽音《はおん》の形はもう抑えことなく薄紫色の羽の欠片がステージから飛んで行き、観客席にいるファンの手に落ちていく素敵な瞬間。
これを見ていた華恋《かれん》は衝撃を受けて後ろで固まったまま。
「……」
なによ、これ?
わたくしには作れない物をこんなにあっさり作り出せるなんてどういうことよ?
そもそも何故羽音《はおん》がわたくしよりも形を上手く使いこなせるのよ?
分からないわ、わたくし、このままなにもせずに終わってしまうなんて…そんなの嫌よ!
せっかく二回戦まで勝ち進んだのに、デビューしたばかりの新人に負けるなんて恥をかくだけよ。
「くっ」
華恋《かれん》は新人の羽音《はおん》に負けることを心から嫌がり、無理やりにでも前に立とうとしたら
「今日は主役はわたしなの」
と、羽音《はおん》が本物の少年の低くも少し高めの声で止められてもうなにもできなくなってしまった華恋《かれん》。
「…はあっ」
もう遅いのね。
わたくしはこの子に勝てない。
もう諦めるわ。
黙って後ろに一歩下がり、華恋《かれん》は華やかに豪華に微笑み、ただじっと羽音《はおん》のステージを見守ることを選んだ。
「少年の夢は叶った。毎日祈ったおかげで少年みんなを心から笑顔にすることができた。祈りはきっと、誰もが望み希望を抱き願うことで人々の想いを叶えると少年は知った」
ここで曲が終わった。
「さあ、この対決の結果はどうなったのか?」
羽音《はおん》のステージにすっかり心奪われてドキドキして頬を真っ赤に染める異等義《いらぎ》の姿は少しだけ可愛く見える。
きっとこのステージを見た天声《あまごえ》も同じ想いを感じたはず。
「羽音《はおん》、あなたのステージは毎回わたしを虜にする。本当に、すごい子を選んだ」
あなたを選んでわたしはずっと心の扉が開いて閉じることはない。
ドレスも歌詞も全部わたしのために作ってくれた。
「ありがとう」
前髪で隠れた顔はきっと笑顔を浮かべているはず。
顔が見えなくても、その言葉遣いと胸に手を当てて安心している姿は本当に羽音《はおん》への大切な想いが滲み出ていることもまた事実となるだろう。
「よし、決めた」
水色の羽がたどり着いた先は。
「嬉しい」
胸に手を当ててひっそりと涙を浮かべる羽音《はおん》が選ばれた。
「ふふっ」
天声《あまごえ》ちゃんがわたしを選んでくれて嬉しい!
羽音《はおん》のステージは全て天声《あまごえ》に届いている…しっかりと。
この対決の勝者に選ばれたのは羽音《はおん》。
いよいよ次のお話は決勝戦。
星宙VS羽音。
一度対決した二人が決勝戦でまた対決することになった。
一体どうなってしまうのか?
「響《ひびき》」
「なんすか?」
「君は私の王子様なんだから、最後まで付き合って」
「もちろん、それは最初から分かってから言わなくてもいいっすよ」
「そう、ならいいけど…」
お姉ちゃん、ごめんなさい。
私はお姉ちゃんよりも上に立つことが心から怖かったけど、今はもうその感情を捨てて私の使命を全うする。
だから、なにも言わずに見守っててほしい。
私は私の形を作るだけ。
決勝戦でこのコンテストは終了する。
誰が勝っても文句なしの対決にどんな意味が込められていても、それが歌姫や王子様の未来をより良くするのなら、このコンテストを提案した天声《あまごえ》の想いも間違っていなかっただろう。
「決勝戦ではお互いお互いの限界を超えた本気の形で勝負しなさい。それがわたしがあなたたちを選んだ理由なんだから」
歌姫に選ばれた者 王子様に選ばれた者。
奇跡と運命の糸はもう既に切れることのない特別。
「私《わたし》のステージ、見せてあげる」


