コンテスト五日目。
この日から二日間は二回戦。
今日の対決は星宙VS翼。
「絶対に負けません」
「うんうん。あたしも本気で頑張っちゃうよ!」
親しい者同士の対決となると、勝ったり負けたりした場合は気まずくなってしまう可能性もなくはないと思うが?
「わたしが勝っても文句言わないでくださいね?」
「もちろん、あたしたちは親友だから勝っても負けても親友のままだよ。それは華恋《かれん》だって同じはずだよ」
今日は華恋《かれん》の出番はないが、親友二人の対決を観客席から静かに見守っっている姿に、星宙《ほしぞら》も翼《つばさ》も華恋《かれん》を見て頷き合い、笑顔で声を重ねてこう言った。
「あなた《君》のステージはわたし《あたし》が変える」
宇宙のような美しく色とりどりに溢れる最高級の星宙《ほしぞら》の笑顔。
自由に飛び立つ鳥の翼のような優雅さもありつつ、青春真っ只中の爽やかな笑顔の翼《つばさ》。
今回のステージテーマは「青」。
シンプルかつ、どんな「青」を形作り、ステージをどう染めるのか。
鳥と星が共鳴する瞬間、二人の輝きはどのように変化するのか。
星宙《ほしぞら》。
「今回は流星群にする」
星で「青」と言えば流星群がピッタリ。
だから、今回のドレスも青色の流星群をテーマにデザインした。
主体となるドレスの色は紫色。
明るすぎず、暗すぎず、まるで宇宙にいるかのような錯覚に陥る紫色の宙に流れる青色の流星群は細長いビーズで演出し、同じ青色のリボンは背中に小さく結ばれた最高に心癒される究極の一着。
ティアラを頭に飾り準備完了。
「これはわたしにしか似合わない。これなら翼《つばさ》さんに勝てる」
自信満々に満面の笑みで鏡の自分に言い聞かせる星宙《ほしぞら》の姿は可愛らしくも見える。
「良かった。ほしちゃんが笑ってくれて」
背中からギュッと抱きしめてきたのは弦《げん》で間違いないだろう。
何故なら、星宙《ほしぞら》が嬉しさと恥ずかしさで頬を真っ赤にさせられるのは弦《げん》しかいないのだから。
「ほしちゃん、そのドレス、宇宙一似合っているよ」
「もう、そんなに褒めたら照れるでしょ?」
「照れる方がぼくは嬉しいなー」
「なんで?」
「あっは、好きな人がどんな物を着ても似合うのはとっても幸せなことだから」
「なっ!」
また恥ずかしいことを言って…だけど、すごく嬉しい。
わたし、段々と弦《げん》のことが好きになっている気がする。
まだよく分からないけど。
少しずつ弦《げん》に恋愛感情を抱き、まさにその想いが星宙《ほしぞら》の顔をやかんから湯気が飛び出るくらいに熱く溶けることなく燃え上がる。
今はまだ恥ずかしくても照れても、その想いが二人の未来をより良くするのならそれだけでもいいのかもしれない。
「はあっ、そろそろ行くよ」
「はーい」
二人笑顔で仲良く手を繋ぎ、ステージへと向かう。
翼《つばさ》。
「へえ〜、これ中々いいじゃん!」
今回はクジャクをイメージした青を主張する体と七色に輝く翼で勝負するそうだ。
主体なるドレスの色は青色。
裾と背中にはクジャクの翼と同じような柔らかな七色の飾りとリボンでその翼の形を作った豪華な一着。
あとはティアラを頭に飾り準備完了。
だが、このドレスをデザインしたのは。
「翼《つばさ》ちゃん、よく似合ってるよ。オレ、こういう派手なドレスデザインしたの初めてだったから自信なかったけど、どう?」
そう、このドレスをデザインしたのは翼《つばさ》ではなく唄《うた》。
これは本来なら歌姫がデザインするべきことを翼《つばさ》は
『あたしじゃいいのはできないから、代わりに唄《うた》がやっといて』
と、自分勝手な理由で王子様の唄《うた》にデザインを任せていた。
大会やコンテストでは出場する歌姫本人がデザインするのがルールと定められいるわけではないが、普通なら歌姫がデザインすることが天声《あまごえ》に対する礼儀というものになるはずなのに…翼《つばさ》は…。
「よし、行こう! 今回もあたしが勝っちゃうよ!」
翼《つばさ》の歯を見せる元気な笑顔で余裕を出している姿は唄《うた》にとっては自分がデザインしたドレスを喜んで着てくれることに嬉しさを感じて満面の笑みで頷き手を繋ぐけれど…天声《あまごえ》からすればこれはもう。
「失格にしてもいいけど、まあ、これは二回戦だから今回だけ見逃してあげる」
少し呆れて翼《つばさ》を心のどこかで睨んでいそう。
「適当なステージなんて見たくない。わたしの期待を裏切らないで」
それぞれ王子様のエスコートで扉の中に入り、生と死の間を通り抜ければそこはもうステージ。
「さあ、今日から二日間は二回戦をお届けします! 今日は星宙VS翼の対決。星と翼、中々届くことが難しそうな組み合わせですが、きっと成功させてくれるでしょう、ええ、そう、まさにそのはず!」
今日は何故か適当な司会進行で会場中を走り回る意味の分からない行動をする異等義《いらぎ》のことなど、星宙《ほしぞら》と翼《つばさ》は全く見向きもしない。
「わたしの星は誰にも届かない」
「あたしの翼は誰よりも高く飛ぶ」
親友同士の対決というのも面白いこと。
見ているファンも敗れた三人の歌姫も星と翼の対決に興味が湧いて目線を二人から逸らすことはない。
「んっ」
わたしが勝って、優勝してそれから…「音」を手に入れる。
「あっはは」
あたしが勝てば来年の音掴みでも羽音《はおん》に勝てる気がするんだよね〜!
真剣に笑顔に燃える心。
誰が勝っても文句なしの一発勝負。
二人並んで目を閉じる。
「わたしが描く流星群は青く空を照らす魔法」
「あたしが描く青の鳥はどこまでも高く飛ぶ」
二人声を重ねて。
「今ここにわたし《あたし》が全てを青く染める」
まずは翼《つばさ》から。
「会いたい、飛びたい。あなたのところへ、どこまでも。この青い鳥が運ぶあなたとあたしの幸せはきっといつまでも永遠のまま」
青い鳥。
ステージの下から生まれて上へと高く飛ぶ姿はまさに青く輝き、まさに幸せを運んでいるように見える。
その鳥はただ青いだけではない、季節が変わるごとに色も翼も変化してまた新しい形に完成する。
羽音《はおん》との対決以上の大きな大きな青い鳥が会場中を飛び回り羽が隅々まで落ちていく最高のステージ。
だが。
「わたしの流星群は夜空を照らす幻。数え切れない星々が人々の心に届くのなら、流星群はわたしと同じように人々に青色の輝きを生み出す」
会場中が紫色の夜空を描き、ステージには青の流星群が上から下へその下には星の欠片がまた輝いて消えることはない。
ふふっ、わたしの本気はこんな物じゃない。
まだまだできる、まだまだ超えられる。
だから、もう諦めていいんですよ?
もうここで勝者が確定した。
その勝者とは。
「わたしの流星群は人々の笑顔を生み作り、永遠の物となるのよ。そう、私も同じようにね」
星よりも眩しい完璧に微笑む星宙《ほしぞら》の姿と形はもう限界とは違う本物の星宙を描いたのだ。
「あっ…」
そっか、あたしはほしには敵わないんだ…。
でも、諦めないよ!
諦めてはいけない。
まだまだ隙は作れる。
歌姫に選ばれた者はステージに立ったらどんなに強い相手と戦っても曲が終わるまでは諦めてはいけない。
もう一度前に立って。
「あたしの青い鳥はあなたを優しく包む毛布みたいなの。だから安心して、あたしに寄りかかって永遠に一緒にいよう…約束だよ」
もう流星群から青い鳥を描くことはできないが、それでも天井から舞い散る羽の欠片は決して星宙《ほしぞら》には作れない。
これはお互いが持ち持たない輝きの対決になったこと間違いなし。
「わたしと人々はこの流星群のように遠く離れて交わることはないかもしれないけど、でもきっといつか思うの…わたしは人々を照らす星になれるって信じている」
この歌詞を最後に流星群は太陽に近いほど眩しく輝いて光を消すことはない。
曲も終わり、ステージに描かれた流星群の青き輝きを見た会場にいる全ての人たちが星宙《ほしぞら》に拍手を贈り、星宙《ほしぞら》はそれに答えるように完璧に姿勢を正してお辞儀をした。
「ふふっ、嬉しい」
わたしのステージは星と同じようにどこまでも輝いて消えることはない。
本当に、この日を迎えられて良かった。
「さあ、星宙VS翼の対決の結果はどうなったのでしょうか?」
異等義《いらぎ》の司会進行と共に天声《あまごえ》からも密かに拍手が贈られた。
「すごい。二人の対決を見られて良かった」
天声《あまごえ》から落ちた水色の羽がたどり着いたのは。
「ふっ、やっぱりわたしの勝ち」
贈られた水色の羽を両手でギュッと握りしめて感謝する星宙《ほしぞら》が選ばれた。
「次も頑張ろう」
わたしの輝きはまだまだ止まらない。
「ほし、おめでとう。そして、決勝戦も頑張って」
満面の笑みで翼《つばさ》から頭を撫でられた星宙《ほしぞら》も笑顔で頷いて握手を交わす。
「はい、ありがとうございます。決勝戦でも勝って、わたしが優勝します!」
わたしはもう立ち止まったりしない。
わたしはわたしのできることをする。
決勝戦で誰と戦うことなっても、わたしが勝つ。
絶対に!
この笑顔と芯の強い眼差しで天井を見上げる星宙《ほしぞら》はまるで宇宙の中で惑星を見上げているよう。
そして、二人はステージから降りてそれぞれ楽屋に入る。
「ほしちゃん、お疲れ様、おめでとう」
明るく元気に笑う弦《げん》がいつの間にかクラッカーを用意していたようだ。
クラッカーの紙が髪やドレスについたことで力強く弦《げん》を睨む星宙《ほしぞら》は心から機嫌悪そうに思える。
「はあっ、あんた、疲れたわたしのことくらい気を遣ってよ。全くもう…」
「ごめんね。でも、嬉しいんだよ。ほしちゃんが今日も勝ってくれて、ぼくは今、人生で一番幸せなんだよ」
そう言った弦《げん》は心から嬉しそうに幸せそうに星と同じように瞳を眩しく輝かせて太陽に近いほどに明るく微笑んでいる。
ほしちゃんが優勝する…ぼくはそう信じている。
ギュッと二人抱きしめ合い、まだキスまではいかないが、星宙《ほしぞら》と弦《げん》の関係は良い方向へと進んでいる。
いつか名前の通り、二人で眩い星に手が届きますように。
一方、翼《つばさ》は。
「はぁ~、また負けた」
せっかく二回戦まで勝ち進んだのに、鳥の翼が風で倒れたみたいに呆気なく負けた…あたしって、誰に勝てるんだろう?
鏡の自分を見つめていても時間が過ぎるだけ。
どれだけ自分に問いても、どれだけ誰がに縋りついても。
翼《つばさ》はまだまだ自分の勝利だけを望んでいることもまた事実。
隠しようもないくだらない物。
頬を膨らまして悔しそうにしている姿は、王子様としては見過ごせないだろう?
「翼《つばさ》ちゃん、元気出して。オレがいるから安心だよ」
今年は翼《つばさ》ちゃんは負けてばかり…でも、オレはずっとそばで見ていたから分かるよ。
「翼《つばさ》ちゃんは誰よりも頑張ってるよ。だって、鳥の翼は誰よりも高く飛ぶ。空だけじゃない、宇宙にだって高く飛べる。今日は失敗なんかじゃない、成功への第一歩だって、オレはそう信じているから」
心からそう信じているという気持ちが暖かくも愛おしさが増しているキラキラな唄《うた》の微笑みに、翼《つばさ》も美しく鳥のように優雅な笑みで頷き、抱きしめた。
「うんうん、君の言う通りだよ! あたし、大事なこと忘れてた。負けたことは失敗じゃない、次への第一歩。なんでそんな簡単なこと忘れちゃったんだろう…」
「忘れるのは仕方ないよ。生き物の記憶は全てを覚えてるわけじゃない。だけど、どこかで思い出すんだよ。忘れたことは後悔じゃなくて、忘れてた時間にできた新しい記憶を作ってたことを思えばなんでも大したことじゃないって、オレはそう思ってる」
優しい、思いやり、温かい言葉。
その言葉を聞いた翼《つばさ》は後悔ではなく、成功への第一歩を踏み出した喜びの涙を流してまた頷いた。
「うん、うん。あたし、あっ、うう、次はちゃんと勝つから、君も見ててくれる?」
翼《つばさ》の溢れた涙を手で拭う唄《うた》も頷いてこう言った。
「次は絶対に勝とう!」
こうして、決勝戦に進出するのは星宙《ほしぞら》に決定した。
次のお話は華恋VS羽音。
どちらが勝ってもおかしくない特別なステージで勝つのは誰か?
「わたくしが勝つのよ」
絶対に負けないわ。
「わたしが勝つ」
二人の分までわたしが勝って優勝するの。
お楽しみに!
この日から二日間は二回戦。
今日の対決は星宙VS翼。
「絶対に負けません」
「うんうん。あたしも本気で頑張っちゃうよ!」
親しい者同士の対決となると、勝ったり負けたりした場合は気まずくなってしまう可能性もなくはないと思うが?
「わたしが勝っても文句言わないでくださいね?」
「もちろん、あたしたちは親友だから勝っても負けても親友のままだよ。それは華恋《かれん》だって同じはずだよ」
今日は華恋《かれん》の出番はないが、親友二人の対決を観客席から静かに見守っっている姿に、星宙《ほしぞら》も翼《つばさ》も華恋《かれん》を見て頷き合い、笑顔で声を重ねてこう言った。
「あなた《君》のステージはわたし《あたし》が変える」
宇宙のような美しく色とりどりに溢れる最高級の星宙《ほしぞら》の笑顔。
自由に飛び立つ鳥の翼のような優雅さもありつつ、青春真っ只中の爽やかな笑顔の翼《つばさ》。
今回のステージテーマは「青」。
シンプルかつ、どんな「青」を形作り、ステージをどう染めるのか。
鳥と星が共鳴する瞬間、二人の輝きはどのように変化するのか。
星宙《ほしぞら》。
「今回は流星群にする」
星で「青」と言えば流星群がピッタリ。
だから、今回のドレスも青色の流星群をテーマにデザインした。
主体となるドレスの色は紫色。
明るすぎず、暗すぎず、まるで宇宙にいるかのような錯覚に陥る紫色の宙に流れる青色の流星群は細長いビーズで演出し、同じ青色のリボンは背中に小さく結ばれた最高に心癒される究極の一着。
ティアラを頭に飾り準備完了。
「これはわたしにしか似合わない。これなら翼《つばさ》さんに勝てる」
自信満々に満面の笑みで鏡の自分に言い聞かせる星宙《ほしぞら》の姿は可愛らしくも見える。
「良かった。ほしちゃんが笑ってくれて」
背中からギュッと抱きしめてきたのは弦《げん》で間違いないだろう。
何故なら、星宙《ほしぞら》が嬉しさと恥ずかしさで頬を真っ赤にさせられるのは弦《げん》しかいないのだから。
「ほしちゃん、そのドレス、宇宙一似合っているよ」
「もう、そんなに褒めたら照れるでしょ?」
「照れる方がぼくは嬉しいなー」
「なんで?」
「あっは、好きな人がどんな物を着ても似合うのはとっても幸せなことだから」
「なっ!」
また恥ずかしいことを言って…だけど、すごく嬉しい。
わたし、段々と弦《げん》のことが好きになっている気がする。
まだよく分からないけど。
少しずつ弦《げん》に恋愛感情を抱き、まさにその想いが星宙《ほしぞら》の顔をやかんから湯気が飛び出るくらいに熱く溶けることなく燃え上がる。
今はまだ恥ずかしくても照れても、その想いが二人の未来をより良くするのならそれだけでもいいのかもしれない。
「はあっ、そろそろ行くよ」
「はーい」
二人笑顔で仲良く手を繋ぎ、ステージへと向かう。
翼《つばさ》。
「へえ〜、これ中々いいじゃん!」
今回はクジャクをイメージした青を主張する体と七色に輝く翼で勝負するそうだ。
主体なるドレスの色は青色。
裾と背中にはクジャクの翼と同じような柔らかな七色の飾りとリボンでその翼の形を作った豪華な一着。
あとはティアラを頭に飾り準備完了。
だが、このドレスをデザインしたのは。
「翼《つばさ》ちゃん、よく似合ってるよ。オレ、こういう派手なドレスデザインしたの初めてだったから自信なかったけど、どう?」
そう、このドレスをデザインしたのは翼《つばさ》ではなく唄《うた》。
これは本来なら歌姫がデザインするべきことを翼《つばさ》は
『あたしじゃいいのはできないから、代わりに唄《うた》がやっといて』
と、自分勝手な理由で王子様の唄《うた》にデザインを任せていた。
大会やコンテストでは出場する歌姫本人がデザインするのがルールと定められいるわけではないが、普通なら歌姫がデザインすることが天声《あまごえ》に対する礼儀というものになるはずなのに…翼《つばさ》は…。
「よし、行こう! 今回もあたしが勝っちゃうよ!」
翼《つばさ》の歯を見せる元気な笑顔で余裕を出している姿は唄《うた》にとっては自分がデザインしたドレスを喜んで着てくれることに嬉しさを感じて満面の笑みで頷き手を繋ぐけれど…天声《あまごえ》からすればこれはもう。
「失格にしてもいいけど、まあ、これは二回戦だから今回だけ見逃してあげる」
少し呆れて翼《つばさ》を心のどこかで睨んでいそう。
「適当なステージなんて見たくない。わたしの期待を裏切らないで」
それぞれ王子様のエスコートで扉の中に入り、生と死の間を通り抜ければそこはもうステージ。
「さあ、今日から二日間は二回戦をお届けします! 今日は星宙VS翼の対決。星と翼、中々届くことが難しそうな組み合わせですが、きっと成功させてくれるでしょう、ええ、そう、まさにそのはず!」
今日は何故か適当な司会進行で会場中を走り回る意味の分からない行動をする異等義《いらぎ》のことなど、星宙《ほしぞら》と翼《つばさ》は全く見向きもしない。
「わたしの星は誰にも届かない」
「あたしの翼は誰よりも高く飛ぶ」
親友同士の対決というのも面白いこと。
見ているファンも敗れた三人の歌姫も星と翼の対決に興味が湧いて目線を二人から逸らすことはない。
「んっ」
わたしが勝って、優勝してそれから…「音」を手に入れる。
「あっはは」
あたしが勝てば来年の音掴みでも羽音《はおん》に勝てる気がするんだよね〜!
真剣に笑顔に燃える心。
誰が勝っても文句なしの一発勝負。
二人並んで目を閉じる。
「わたしが描く流星群は青く空を照らす魔法」
「あたしが描く青の鳥はどこまでも高く飛ぶ」
二人声を重ねて。
「今ここにわたし《あたし》が全てを青く染める」
まずは翼《つばさ》から。
「会いたい、飛びたい。あなたのところへ、どこまでも。この青い鳥が運ぶあなたとあたしの幸せはきっといつまでも永遠のまま」
青い鳥。
ステージの下から生まれて上へと高く飛ぶ姿はまさに青く輝き、まさに幸せを運んでいるように見える。
その鳥はただ青いだけではない、季節が変わるごとに色も翼も変化してまた新しい形に完成する。
羽音《はおん》との対決以上の大きな大きな青い鳥が会場中を飛び回り羽が隅々まで落ちていく最高のステージ。
だが。
「わたしの流星群は夜空を照らす幻。数え切れない星々が人々の心に届くのなら、流星群はわたしと同じように人々に青色の輝きを生み出す」
会場中が紫色の夜空を描き、ステージには青の流星群が上から下へその下には星の欠片がまた輝いて消えることはない。
ふふっ、わたしの本気はこんな物じゃない。
まだまだできる、まだまだ超えられる。
だから、もう諦めていいんですよ?
もうここで勝者が確定した。
その勝者とは。
「わたしの流星群は人々の笑顔を生み作り、永遠の物となるのよ。そう、私も同じようにね」
星よりも眩しい完璧に微笑む星宙《ほしぞら》の姿と形はもう限界とは違う本物の星宙を描いたのだ。
「あっ…」
そっか、あたしはほしには敵わないんだ…。
でも、諦めないよ!
諦めてはいけない。
まだまだ隙は作れる。
歌姫に選ばれた者はステージに立ったらどんなに強い相手と戦っても曲が終わるまでは諦めてはいけない。
もう一度前に立って。
「あたしの青い鳥はあなたを優しく包む毛布みたいなの。だから安心して、あたしに寄りかかって永遠に一緒にいよう…約束だよ」
もう流星群から青い鳥を描くことはできないが、それでも天井から舞い散る羽の欠片は決して星宙《ほしぞら》には作れない。
これはお互いが持ち持たない輝きの対決になったこと間違いなし。
「わたしと人々はこの流星群のように遠く離れて交わることはないかもしれないけど、でもきっといつか思うの…わたしは人々を照らす星になれるって信じている」
この歌詞を最後に流星群は太陽に近いほど眩しく輝いて光を消すことはない。
曲も終わり、ステージに描かれた流星群の青き輝きを見た会場にいる全ての人たちが星宙《ほしぞら》に拍手を贈り、星宙《ほしぞら》はそれに答えるように完璧に姿勢を正してお辞儀をした。
「ふふっ、嬉しい」
わたしのステージは星と同じようにどこまでも輝いて消えることはない。
本当に、この日を迎えられて良かった。
「さあ、星宙VS翼の対決の結果はどうなったのでしょうか?」
異等義《いらぎ》の司会進行と共に天声《あまごえ》からも密かに拍手が贈られた。
「すごい。二人の対決を見られて良かった」
天声《あまごえ》から落ちた水色の羽がたどり着いたのは。
「ふっ、やっぱりわたしの勝ち」
贈られた水色の羽を両手でギュッと握りしめて感謝する星宙《ほしぞら》が選ばれた。
「次も頑張ろう」
わたしの輝きはまだまだ止まらない。
「ほし、おめでとう。そして、決勝戦も頑張って」
満面の笑みで翼《つばさ》から頭を撫でられた星宙《ほしぞら》も笑顔で頷いて握手を交わす。
「はい、ありがとうございます。決勝戦でも勝って、わたしが優勝します!」
わたしはもう立ち止まったりしない。
わたしはわたしのできることをする。
決勝戦で誰と戦うことなっても、わたしが勝つ。
絶対に!
この笑顔と芯の強い眼差しで天井を見上げる星宙《ほしぞら》はまるで宇宙の中で惑星を見上げているよう。
そして、二人はステージから降りてそれぞれ楽屋に入る。
「ほしちゃん、お疲れ様、おめでとう」
明るく元気に笑う弦《げん》がいつの間にかクラッカーを用意していたようだ。
クラッカーの紙が髪やドレスについたことで力強く弦《げん》を睨む星宙《ほしぞら》は心から機嫌悪そうに思える。
「はあっ、あんた、疲れたわたしのことくらい気を遣ってよ。全くもう…」
「ごめんね。でも、嬉しいんだよ。ほしちゃんが今日も勝ってくれて、ぼくは今、人生で一番幸せなんだよ」
そう言った弦《げん》は心から嬉しそうに幸せそうに星と同じように瞳を眩しく輝かせて太陽に近いほどに明るく微笑んでいる。
ほしちゃんが優勝する…ぼくはそう信じている。
ギュッと二人抱きしめ合い、まだキスまではいかないが、星宙《ほしぞら》と弦《げん》の関係は良い方向へと進んでいる。
いつか名前の通り、二人で眩い星に手が届きますように。
一方、翼《つばさ》は。
「はぁ~、また負けた」
せっかく二回戦まで勝ち進んだのに、鳥の翼が風で倒れたみたいに呆気なく負けた…あたしって、誰に勝てるんだろう?
鏡の自分を見つめていても時間が過ぎるだけ。
どれだけ自分に問いても、どれだけ誰がに縋りついても。
翼《つばさ》はまだまだ自分の勝利だけを望んでいることもまた事実。
隠しようもないくだらない物。
頬を膨らまして悔しそうにしている姿は、王子様としては見過ごせないだろう?
「翼《つばさ》ちゃん、元気出して。オレがいるから安心だよ」
今年は翼《つばさ》ちゃんは負けてばかり…でも、オレはずっとそばで見ていたから分かるよ。
「翼《つばさ》ちゃんは誰よりも頑張ってるよ。だって、鳥の翼は誰よりも高く飛ぶ。空だけじゃない、宇宙にだって高く飛べる。今日は失敗なんかじゃない、成功への第一歩だって、オレはそう信じているから」
心からそう信じているという気持ちが暖かくも愛おしさが増しているキラキラな唄《うた》の微笑みに、翼《つばさ》も美しく鳥のように優雅な笑みで頷き、抱きしめた。
「うんうん、君の言う通りだよ! あたし、大事なこと忘れてた。負けたことは失敗じゃない、次への第一歩。なんでそんな簡単なこと忘れちゃったんだろう…」
「忘れるのは仕方ないよ。生き物の記憶は全てを覚えてるわけじゃない。だけど、どこかで思い出すんだよ。忘れたことは後悔じゃなくて、忘れてた時間にできた新しい記憶を作ってたことを思えばなんでも大したことじゃないって、オレはそう思ってる」
優しい、思いやり、温かい言葉。
その言葉を聞いた翼《つばさ》は後悔ではなく、成功への第一歩を踏み出した喜びの涙を流してまた頷いた。
「うん、うん。あたし、あっ、うう、次はちゃんと勝つから、君も見ててくれる?」
翼《つばさ》の溢れた涙を手で拭う唄《うた》も頷いてこう言った。
「次は絶対に勝とう!」
こうして、決勝戦に進出するのは星宙《ほしぞら》に決定した。
次のお話は華恋VS羽音。
どちらが勝ってもおかしくない特別なステージで勝つのは誰か?
「わたくしが勝つのよ」
絶対に負けないわ。
「わたしが勝つ」
二人の分までわたしが勝って優勝するの。
お楽しみに!


