「それでは、いいですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「はあ、酒飲みたいのに…」
はなの家に集まったそらと音羽《おとは》と主のはな。
そらはとても嬉しそうに満面の笑みを見せ、音羽《おとは》はちょっとぎこちなく笑い、はなは朝からお酒を欲しがる。
三人ともまだ息が合わないが、始めての女子会に対しては少し楽しそうにお互い目を合わせて頷く。
「そらさん、今日は誘ってくれてありがとうございます。わたし、女子会は初めてなので分からないこともあるけど、精一杯ついていきます!」
「まっ、暇潰しにはちょうどいいから付き合ってあげる」
「二人とも、急なお誘いに付き合ってくれて嬉しいです。たくさん楽しみましょうね」
女子会に必要な物? は全て準備しました。
お菓子にパジャマに雑誌。
どれも私なりに考えた高級品のはずです。
さあ、なにからしましょうか?
張り切りすぎて色々持って来たのはいいが、そらはどの話題を始めようか悩み中。
「……」
あれ?
これって、ううん、女子会はこんなに重く悩むことじゃない。
もっと気楽に笑って。
「うふっ、そうでした。あの、良かったら、ティアラのクリップを見せ合いませんか?」
その言葉に、音羽《おとは》は。
「はい! いいですよ」
満面の笑みで頷き。
はなは。
「もちろん。わたしも気になってたから」
クスッと笑い、ちょっと乗り気にポケットからクリップを出す。
三人それぞれが持つクリップを改めて見ると。
羽音《はおん》。
「この天使の羽が左右に飾られているのがとても綺麗ですね」
「うん、本当に天使みたい」
「褒めてくれてありがとうございます」
花音《はなね》。
「この真っ赤な薔薇は優雅でとても美しいよ」
「ええ、それにこの銀色はおとぎ話のお姫様のようで見惚れてしまいますね」
「あ、ありがとう。こんなに褒められたのは初めて…」
空音《そらね》。
「やっぱり虹は最強。わたしには似合わない気がする」
「うん、虹は誰にでも似合う物じゃないけど、空音《そらね》さんだからこそ似合うのがすごいです」
「ありがとうございます。うふっ、なんだか発表会みたいでくすぐったいですね」
女子会がどういう物なのか分からないけど、私たちは私たちの形で楽しむべき…そう思ったらなにも悩みが吹き飛んだ。
「あっ、今日持って来たお菓子は楽《がく》さんがアルバイトで働いている高級スイーツ専門店から買いました。一日限定の特大いちごのタルトです」
そう言って、借りていた冷蔵庫から取り出したいちごのタルトはウェディングケーキとほぼ同じサイズの大きさ。
この量を三人で食べられるのか?
「わぁー、こんなに大きいタルトを食べられるなんて夢みたいです!」
「うん、わたしも」
「さあ、遠慮せずたくさん食べましょう」
この三人なら心配なさそうだ。
「どうします? 三等分に分けますか、それともクジで食べる広さを決めますか?」
食べる気満々なそらがナイフを手に取りタルトに切り込みを入れようとしたら。
「三等分で十分」
はながナイフをそっと下に降ろして止めた。
三等分の方がケンケにはならないし、クジなんて全然信用できない。
だから、そこは分かってよ。
食べ物には強いこだわりを持つはなの意見はその真剣な眼差しと揺らぐことのない姿はきっと二人に届いているはず。
「ふふっ、そうだね。ケンカになるくらいなら最初から三等分に分けた方がいいかも」
「そうですね。ここは最年長さんの意見を素直に受け入れますね」
「最年長? は?」
いや、そうか。
この中で一番年上なのはわたしか…でも、なんか年寄りみたいに感じるから嫌だ。
自分の実際の年齢に少し嫌になって全く悪くないタルトをじっと睨みつけているはなのことなど、音羽《おとは》そらは知ることはない。
タルトを三等分に切り、三人とも満足そうに可愛らしさと美しさが心から詰まった笑顔で食べている。
「ん~、おいしい!」
「本当、こんなにおいしい物、久しぶりに食べた」
「おいしいですね。後で楽《がく》さんに感謝のメールを送っておきますね」
さすが高級スイーツ専門店のいちごのタルト。
このタルトを手に入れた楽《がく》には本当に感謝してもしきれないくらいのお礼が必要だろう。
と、タルトを食べきったところである話題を語ることにする。
「さて、次は恋バナをしましょうか」
「恋バナ!?」
「ふーん、まあ、いいかも」
それぞれが抱える恋の形。
この話題を持ち出すためにそらがタルトを持って来たと言っても間違いなし!
満面の笑みを見せて最初に語るのは、はな。
「んー、わたしが律《りつ》を初めて見た時思ったのは生意気で完璧すぎる年下のガキ」
「えっ」
「ガキって…ちょっと言いすぎですね」
「いや、正直に言っただけでも褒めてよ」
だって、わたしは本当にそう思った。
『おれの永遠をかけて、あなたを守り、絶対に幸せにします』
初めて出会った時にプロポーズをするバカが実在していたことに心の底から驚いた。
まあ、結婚できた今はあの言葉が本当になったことがちょっと嬉しかった…って、これを言えば良かった?
そう、心の中で語った今の素晴らしいことを言えばいい物の、まだまだ人付き合いに慣れていないからこそ、上手く伝えずらいのを二人はしっかり理解してお互い頷き合う。
「うん」
はなちゃんと律《りつ》さんの話、ちょっとずつでいいから知りたい。
「んっ」
はなさんと律《りつ》さんの出会いを聞けただけでもっと仲良くなれた気がしてとても嬉しいです。
「…わたしは律《りつ》と結婚したことが一番の幸せ。でも、結婚してから律《りつ》は甘えるようになった。それも家にいる時はわたしから離れないし、ご飯も食べさせてくる。いくらわたしの見た目がこれでも、ちゃんと大人なんだから、大人らしいことさせてよ!」
途中から愚痴になって右手の親指を噛みしめるはなの姿に、音羽《おとは》とそらはさすがにちょっとなにを言えばいいのか分からず一瞬無言になるとはなが
「次は音羽《おとは》ちゃんの番」
と、適当に左手で指差された音羽《おとは》は可愛らしく微笑んで頷いた。
「うん。わたしは奏《かなで》が大好きです。出会った時から今もずっと、奏《かなで》はわたしの理想の王子様で居てくれることがわたしはすごく幸せです」
心に両手を当てて満面笑みでそう奏《かなで》への愛を語る音羽《おとは》の姿は誰にとっても羨ましく感じるだろう。
その姿を見たはなとそらは楽しそうに微笑みなかがら二人で音羽《おとは》をぎゅっと抱きしめた。
「二人とも?」
「そんなに好きなんだ、奏《かなで》のこと」
「良いことです。音羽《おとは》さんと奏《かなで》さんの関係がいつまでも続くように願いますね」
愛を知り愛に包まれた関係は本当に美しい。
この抱きしめられている二人の温もりが音羽《おとは》の心に寄り添う。
「二人とも、ありがとうございます」
わたし、奏《かなで》のことがもっと好きになった。
恋バナ、結構いい話なんだ。
「ふふっありがとう」
何度でも言いたくなる感謝。
さあ、次は。
「私ですね。私は楽《がく》さんと出会ったことをずっと忘れることはありません。私と我を受け入れてくれた楽《がく》さんは本当にいい人です。こんなに良い方、存在してくれていることが私の人生を全てひっくり返してくれました。私の人生を全て楽《がく》さんに差し上げることで我はずっとステージに立ち続ける。そうだろう?」
「はい、もちろんです」
「わたしたちは歌姫だから。当然」
うふっ、我の全てはお前にあるぞ。
「ふっ、誰かが私のことを言っているみたいです」
どんなに離れても一緒に居ても必ず終わりは訪れる。
それが生き物が生まれた時から決まっていたことだから。
「今日は付き合ってくれてありがとうございました」
「また女子会、したいです」
「うん、意外と悪くなかった」
初めての女子会は三人とってとても大切な時間となった。
こんなに笑顔で笑い合える人がいるだけでも人生で大きな得をしたと思っても良いくらいにステージとは違う輝きが溢れている。
「うふふふふっ、さあっ、行きましょうか」
「はい、わたしたちの力、見せつけてやります」
「うんうん。あたしも本気を出すよ」
二日後。
「あらあらっ、 こんなところで会うなんて偶然かしら?」
「…は?」
はなの前に現れた謎の少女。
「久しぶりですね。今年こそはわたしが勝って見せます」
「…ほう?」
そらの前に現れた謎の少女。
「あっはは、君が新人ちゃんか。結構可愛いじゃん」
「…はい?」
音羽《おとは》の前に現れた謎の少女。
この三人の少女は毎年開催されるある大会の出場メンバーである。
そして、その大会には、はなとそらと音羽《おとは》も自動的に出場が決定されている。
はなは少女を見た瞬間、花音《はなね》に切り替えてこう言った。
「ふふっ、久しぶりだね。この前の大会以来だね、すっかり忘れてたよ」
さすが強者の余裕。
可愛らしい微笑みと完全にけんかを売るような意地の悪い指差し。
そうされた少女もこう言った。
「うふふふふふっ、残念だわ。わたくしはしっかりと覚えていますのよ。花音《はなね》ちゃん」
こちらもけんかを喜んで買った少女は高笑いをして同じように指差す。
まるで獣のように獲物を譲らない二人。
すると?
「何度で言いましょう。わたくしは木々野華恋《きぎやかれん》。今年の音掴みでは必ず華音《かおん》として戻って見せますわ!」
椿のような和を象徴する赤色の髪をクルクルと華やかに巻き、緑色の瞳。
そう、この少女の名は木々野華恋《きぎやかれん》。
三年前まで華音《かおん》として花のトップ二位だったが。
「あなたがわたしに勝つなんて無理だよ。わたしは花のトップ。これを譲るなんて絶対に嫌だから、今のうちに素直に諦めた方がいいよ」
そう、三年前から大会に出ていたはなは一度も誰にも負けていない。
まあ、今まで大会をサボっていたはなだが、三年前から出始めた時から花音《はなね》の人気は上がり続けている。
この可愛らしさと華やかさの対決は一体どうなるのか?
「空音《そらね》さん、わたしのこと、覚えていますか?」
「もちろん。お前は我のライバルとしてカウントしている」
「くっ、相変わらず嫌な言い方しかしないんですね」
キラキラの星みたいな黄色の髪を後ろでポニーテールにし、宇宙を想像させる紫色の瞳。
「美亜星宙《みみあほしぞら》。わたしの星は絶対にあなたには渡さない!」
この強い意思とはっきりとした目的を持つ星宙《ほしぞら》に、そらはお返しとばかりにいつも通り怪しく麗しく微笑みこう言った。
「うふっ、お前が我に勝てる日など永遠に訪れない。全て我がお前から奪ってやろう!」
青空と星宙の譲らない戦いがこれから幕を開ける。
一体、どちらが空にふさわしいのか?
「初めまして、あたしは鳥大翼《とりたつばさ》。よろしく」
自己紹介と同時に握手を交わしてきた翼《つばさ》に、音羽《おとは》は首を傾げて全く今の状況についていけていない。
「……」
この人、誰?
でも、「翼」ってことは、わたしのライバルになる人ってことだよね?
そう、翼《つばさ》は音羽《おとは》のライバル。
羽音《はおん》がデビューするまで「翼音」《つばね》として活躍していたが、羽音《はおん》がデビューしたことで音を失った。
「あっはは! こんなに可愛い子と戦えるなんて光栄だよ。やる気が出てきた!」
海のような青色の髪を右耳でお団子にし、水色の瞳。
天使ではなく鳥の翼《つばさ》にふさわしい容姿と言える。
身長も音羽《おとは》の二倍以上高い百七十センチは超えている。
音羽《おとは》にとって、これがどういう戦いかは分からなくても、ライバルが現れたのなら自分もやる気を出してこう言う。
「絶対に負けません。あなたがどんなに強くても、わたしはあなたに勝ちます!」
力強く薄紫色の瞳を真っ直ぐ水色の瞳に真剣な眼差しでそう宣言した音羽《おとは》に、翼《つばさ》も負けずとゆっくり近づいて両手で肩を掴む。
「ふーん、中々言うじゃん。まっ、あたしも本気で勝つから覚悟してね」
そう言って、ササッと風のように素早く走って去って行った翼《つばさ》。
「わたしは負けない。絶対に誰にも」
「わたしが一番だよ、絶対」
「我には誰も勝てない、絶対にだ」
こうして、三つの戦いが始まる。
花、空、羽。
新たに現れた少女たちに三人は勝てるのだろうか?
まずは少女たちのステージの様子を見てみよう。
次のお話は花。
可愛さと華やかさの譲れない戦いの前の話をどうぞ、ご期待ください。
「はい、大丈夫ですよ」
「はあ、酒飲みたいのに…」
はなの家に集まったそらと音羽《おとは》と主のはな。
そらはとても嬉しそうに満面の笑みを見せ、音羽《おとは》はちょっとぎこちなく笑い、はなは朝からお酒を欲しがる。
三人ともまだ息が合わないが、始めての女子会に対しては少し楽しそうにお互い目を合わせて頷く。
「そらさん、今日は誘ってくれてありがとうございます。わたし、女子会は初めてなので分からないこともあるけど、精一杯ついていきます!」
「まっ、暇潰しにはちょうどいいから付き合ってあげる」
「二人とも、急なお誘いに付き合ってくれて嬉しいです。たくさん楽しみましょうね」
女子会に必要な物? は全て準備しました。
お菓子にパジャマに雑誌。
どれも私なりに考えた高級品のはずです。
さあ、なにからしましょうか?
張り切りすぎて色々持って来たのはいいが、そらはどの話題を始めようか悩み中。
「……」
あれ?
これって、ううん、女子会はこんなに重く悩むことじゃない。
もっと気楽に笑って。
「うふっ、そうでした。あの、良かったら、ティアラのクリップを見せ合いませんか?」
その言葉に、音羽《おとは》は。
「はい! いいですよ」
満面の笑みで頷き。
はなは。
「もちろん。わたしも気になってたから」
クスッと笑い、ちょっと乗り気にポケットからクリップを出す。
三人それぞれが持つクリップを改めて見ると。
羽音《はおん》。
「この天使の羽が左右に飾られているのがとても綺麗ですね」
「うん、本当に天使みたい」
「褒めてくれてありがとうございます」
花音《はなね》。
「この真っ赤な薔薇は優雅でとても美しいよ」
「ええ、それにこの銀色はおとぎ話のお姫様のようで見惚れてしまいますね」
「あ、ありがとう。こんなに褒められたのは初めて…」
空音《そらね》。
「やっぱり虹は最強。わたしには似合わない気がする」
「うん、虹は誰にでも似合う物じゃないけど、空音《そらね》さんだからこそ似合うのがすごいです」
「ありがとうございます。うふっ、なんだか発表会みたいでくすぐったいですね」
女子会がどういう物なのか分からないけど、私たちは私たちの形で楽しむべき…そう思ったらなにも悩みが吹き飛んだ。
「あっ、今日持って来たお菓子は楽《がく》さんがアルバイトで働いている高級スイーツ専門店から買いました。一日限定の特大いちごのタルトです」
そう言って、借りていた冷蔵庫から取り出したいちごのタルトはウェディングケーキとほぼ同じサイズの大きさ。
この量を三人で食べられるのか?
「わぁー、こんなに大きいタルトを食べられるなんて夢みたいです!」
「うん、わたしも」
「さあ、遠慮せずたくさん食べましょう」
この三人なら心配なさそうだ。
「どうします? 三等分に分けますか、それともクジで食べる広さを決めますか?」
食べる気満々なそらがナイフを手に取りタルトに切り込みを入れようとしたら。
「三等分で十分」
はながナイフをそっと下に降ろして止めた。
三等分の方がケンケにはならないし、クジなんて全然信用できない。
だから、そこは分かってよ。
食べ物には強いこだわりを持つはなの意見はその真剣な眼差しと揺らぐことのない姿はきっと二人に届いているはず。
「ふふっ、そうだね。ケンカになるくらいなら最初から三等分に分けた方がいいかも」
「そうですね。ここは最年長さんの意見を素直に受け入れますね」
「最年長? は?」
いや、そうか。
この中で一番年上なのはわたしか…でも、なんか年寄りみたいに感じるから嫌だ。
自分の実際の年齢に少し嫌になって全く悪くないタルトをじっと睨みつけているはなのことなど、音羽《おとは》そらは知ることはない。
タルトを三等分に切り、三人とも満足そうに可愛らしさと美しさが心から詰まった笑顔で食べている。
「ん~、おいしい!」
「本当、こんなにおいしい物、久しぶりに食べた」
「おいしいですね。後で楽《がく》さんに感謝のメールを送っておきますね」
さすが高級スイーツ専門店のいちごのタルト。
このタルトを手に入れた楽《がく》には本当に感謝してもしきれないくらいのお礼が必要だろう。
と、タルトを食べきったところである話題を語ることにする。
「さて、次は恋バナをしましょうか」
「恋バナ!?」
「ふーん、まあ、いいかも」
それぞれが抱える恋の形。
この話題を持ち出すためにそらがタルトを持って来たと言っても間違いなし!
満面の笑みを見せて最初に語るのは、はな。
「んー、わたしが律《りつ》を初めて見た時思ったのは生意気で完璧すぎる年下のガキ」
「えっ」
「ガキって…ちょっと言いすぎですね」
「いや、正直に言っただけでも褒めてよ」
だって、わたしは本当にそう思った。
『おれの永遠をかけて、あなたを守り、絶対に幸せにします』
初めて出会った時にプロポーズをするバカが実在していたことに心の底から驚いた。
まあ、結婚できた今はあの言葉が本当になったことがちょっと嬉しかった…って、これを言えば良かった?
そう、心の中で語った今の素晴らしいことを言えばいい物の、まだまだ人付き合いに慣れていないからこそ、上手く伝えずらいのを二人はしっかり理解してお互い頷き合う。
「うん」
はなちゃんと律《りつ》さんの話、ちょっとずつでいいから知りたい。
「んっ」
はなさんと律《りつ》さんの出会いを聞けただけでもっと仲良くなれた気がしてとても嬉しいです。
「…わたしは律《りつ》と結婚したことが一番の幸せ。でも、結婚してから律《りつ》は甘えるようになった。それも家にいる時はわたしから離れないし、ご飯も食べさせてくる。いくらわたしの見た目がこれでも、ちゃんと大人なんだから、大人らしいことさせてよ!」
途中から愚痴になって右手の親指を噛みしめるはなの姿に、音羽《おとは》とそらはさすがにちょっとなにを言えばいいのか分からず一瞬無言になるとはなが
「次は音羽《おとは》ちゃんの番」
と、適当に左手で指差された音羽《おとは》は可愛らしく微笑んで頷いた。
「うん。わたしは奏《かなで》が大好きです。出会った時から今もずっと、奏《かなで》はわたしの理想の王子様で居てくれることがわたしはすごく幸せです」
心に両手を当てて満面笑みでそう奏《かなで》への愛を語る音羽《おとは》の姿は誰にとっても羨ましく感じるだろう。
その姿を見たはなとそらは楽しそうに微笑みなかがら二人で音羽《おとは》をぎゅっと抱きしめた。
「二人とも?」
「そんなに好きなんだ、奏《かなで》のこと」
「良いことです。音羽《おとは》さんと奏《かなで》さんの関係がいつまでも続くように願いますね」
愛を知り愛に包まれた関係は本当に美しい。
この抱きしめられている二人の温もりが音羽《おとは》の心に寄り添う。
「二人とも、ありがとうございます」
わたし、奏《かなで》のことがもっと好きになった。
恋バナ、結構いい話なんだ。
「ふふっありがとう」
何度でも言いたくなる感謝。
さあ、次は。
「私ですね。私は楽《がく》さんと出会ったことをずっと忘れることはありません。私と我を受け入れてくれた楽《がく》さんは本当にいい人です。こんなに良い方、存在してくれていることが私の人生を全てひっくり返してくれました。私の人生を全て楽《がく》さんに差し上げることで我はずっとステージに立ち続ける。そうだろう?」
「はい、もちろんです」
「わたしたちは歌姫だから。当然」
うふっ、我の全てはお前にあるぞ。
「ふっ、誰かが私のことを言っているみたいです」
どんなに離れても一緒に居ても必ず終わりは訪れる。
それが生き物が生まれた時から決まっていたことだから。
「今日は付き合ってくれてありがとうございました」
「また女子会、したいです」
「うん、意外と悪くなかった」
初めての女子会は三人とってとても大切な時間となった。
こんなに笑顔で笑い合える人がいるだけでも人生で大きな得をしたと思っても良いくらいにステージとは違う輝きが溢れている。
「うふふふふっ、さあっ、行きましょうか」
「はい、わたしたちの力、見せつけてやります」
「うんうん。あたしも本気を出すよ」
二日後。
「あらあらっ、 こんなところで会うなんて偶然かしら?」
「…は?」
はなの前に現れた謎の少女。
「久しぶりですね。今年こそはわたしが勝って見せます」
「…ほう?」
そらの前に現れた謎の少女。
「あっはは、君が新人ちゃんか。結構可愛いじゃん」
「…はい?」
音羽《おとは》の前に現れた謎の少女。
この三人の少女は毎年開催されるある大会の出場メンバーである。
そして、その大会には、はなとそらと音羽《おとは》も自動的に出場が決定されている。
はなは少女を見た瞬間、花音《はなね》に切り替えてこう言った。
「ふふっ、久しぶりだね。この前の大会以来だね、すっかり忘れてたよ」
さすが強者の余裕。
可愛らしい微笑みと完全にけんかを売るような意地の悪い指差し。
そうされた少女もこう言った。
「うふふふふふっ、残念だわ。わたくしはしっかりと覚えていますのよ。花音《はなね》ちゃん」
こちらもけんかを喜んで買った少女は高笑いをして同じように指差す。
まるで獣のように獲物を譲らない二人。
すると?
「何度で言いましょう。わたくしは木々野華恋《きぎやかれん》。今年の音掴みでは必ず華音《かおん》として戻って見せますわ!」
椿のような和を象徴する赤色の髪をクルクルと華やかに巻き、緑色の瞳。
そう、この少女の名は木々野華恋《きぎやかれん》。
三年前まで華音《かおん》として花のトップ二位だったが。
「あなたがわたしに勝つなんて無理だよ。わたしは花のトップ。これを譲るなんて絶対に嫌だから、今のうちに素直に諦めた方がいいよ」
そう、三年前から大会に出ていたはなは一度も誰にも負けていない。
まあ、今まで大会をサボっていたはなだが、三年前から出始めた時から花音《はなね》の人気は上がり続けている。
この可愛らしさと華やかさの対決は一体どうなるのか?
「空音《そらね》さん、わたしのこと、覚えていますか?」
「もちろん。お前は我のライバルとしてカウントしている」
「くっ、相変わらず嫌な言い方しかしないんですね」
キラキラの星みたいな黄色の髪を後ろでポニーテールにし、宇宙を想像させる紫色の瞳。
「美亜星宙《みみあほしぞら》。わたしの星は絶対にあなたには渡さない!」
この強い意思とはっきりとした目的を持つ星宙《ほしぞら》に、そらはお返しとばかりにいつも通り怪しく麗しく微笑みこう言った。
「うふっ、お前が我に勝てる日など永遠に訪れない。全て我がお前から奪ってやろう!」
青空と星宙の譲らない戦いがこれから幕を開ける。
一体、どちらが空にふさわしいのか?
「初めまして、あたしは鳥大翼《とりたつばさ》。よろしく」
自己紹介と同時に握手を交わしてきた翼《つばさ》に、音羽《おとは》は首を傾げて全く今の状況についていけていない。
「……」
この人、誰?
でも、「翼」ってことは、わたしのライバルになる人ってことだよね?
そう、翼《つばさ》は音羽《おとは》のライバル。
羽音《はおん》がデビューするまで「翼音」《つばね》として活躍していたが、羽音《はおん》がデビューしたことで音を失った。
「あっはは! こんなに可愛い子と戦えるなんて光栄だよ。やる気が出てきた!」
海のような青色の髪を右耳でお団子にし、水色の瞳。
天使ではなく鳥の翼《つばさ》にふさわしい容姿と言える。
身長も音羽《おとは》の二倍以上高い百七十センチは超えている。
音羽《おとは》にとって、これがどういう戦いかは分からなくても、ライバルが現れたのなら自分もやる気を出してこう言う。
「絶対に負けません。あなたがどんなに強くても、わたしはあなたに勝ちます!」
力強く薄紫色の瞳を真っ直ぐ水色の瞳に真剣な眼差しでそう宣言した音羽《おとは》に、翼《つばさ》も負けずとゆっくり近づいて両手で肩を掴む。
「ふーん、中々言うじゃん。まっ、あたしも本気で勝つから覚悟してね」
そう言って、ササッと風のように素早く走って去って行った翼《つばさ》。
「わたしは負けない。絶対に誰にも」
「わたしが一番だよ、絶対」
「我には誰も勝てない、絶対にだ」
こうして、三つの戦いが始まる。
花、空、羽。
新たに現れた少女たちに三人は勝てるのだろうか?
まずは少女たちのステージの様子を見てみよう。
次のお話は花。
可愛さと華やかさの譲れない戦いの前の話をどうぞ、ご期待ください。


