怪異がまだ動かないことが幸いか。
痛みに動けずにいたら、狸がオロオロしながらそばにくる。
どうしていいかわからないようだった。
その姿が、何故か縁と重なる。
安心させないと。
冷や汗を掻きながら、俺は口角を上げる。
「心配すんなって。……大丈夫だから」
狸は怪我してる足元に近づき……そっと涙を流した。
その涙はポタポタと傷口に当たる。
するとどうだろう、しばらく経つとみるみる傷口が癒えて元通りになっていく。
「……ファンタジーな世界だな……狸は、人に化けるだけではなく魔法でも使えるのかな」
そっと立ち上がる。立てることに安堵した。
「石を配置しないといけない場所まで連れて行ってくれる?」
狸は俺をしばらく見た後、動けそうだと判断したのか外を歩いていく。怪異は月明かりに照らされたままジュウジュウと焼かれているようで動かない。
今のうちに狸の後を着いていくと、体育館裏に行き、いつも2匹が眠っている場所に連れて行かれる。
肝試しに参加する前に見た時は田沼によって荒らされた足跡があったけれど、今は石を配置するための窪みがあった。
そばで狸は俺を見上げてちょこんと座る。
「……石を置くんだな?」
そっと石を置く。
瞬間、月の光を浴びてさらに輝きだし、学校全体にかかった黒いモヤは消滅していく。
これで終わるのだろうかと待っていれば、1人の人物が物凄い駆け足でこちらに向かってくる。
縁かと思ったが……違う。
怪異が人型になっていた。幾分か小さくなったが動きが速くなった。
赤黒い見た目と、顔には複数の目玉が付いている。
『悪 イ 子 。 シ ネ』
俺も『悪い子』からは逃れられないようだった。俺が食べられたら終わるのだろうか──逃げ続けることに疲れてしまい、動けずにいたら。
狸が前に立ち塞がる。
『可 愛 イ 子 。 退 イ テ』
狸は退かない。怪異も意思があるのか狸を見下ろして会話をしている。
怪異が狸を跨ごうとすれば狐も立ち塞がった。「慧護くん!」と声が聞こえた方に顔を向けると、縁も外に出てきたのかこちらに走ってくる。
「縁、怪異がいる、危ないから離れて──」
月の光を浴びた2つの石は屋上と体育館裏でさらに強く光る。光に弱い怪異は苦しみながら俺を食べようと近づき、2匹は止めようとしているが……俺は怪異に肩を掴まれ、首元を噛まれる──
「……やめろ──ッ!」
縁が、割り込んで俺を抱きしめた。
怪異の大きな口は俺と縁の首を同時に噛んだ。
痛みと、死ぬ恐怖と、縁を巻き込んでしまった絶望と。
助けに来てくれた縁を最後に感じていたくてその手を強く握り締めれば、縁も握り返してくれた。
視界は暗転していく──。
痛みに動けずにいたら、狸がオロオロしながらそばにくる。
どうしていいかわからないようだった。
その姿が、何故か縁と重なる。
安心させないと。
冷や汗を掻きながら、俺は口角を上げる。
「心配すんなって。……大丈夫だから」
狸は怪我してる足元に近づき……そっと涙を流した。
その涙はポタポタと傷口に当たる。
するとどうだろう、しばらく経つとみるみる傷口が癒えて元通りになっていく。
「……ファンタジーな世界だな……狸は、人に化けるだけではなく魔法でも使えるのかな」
そっと立ち上がる。立てることに安堵した。
「石を配置しないといけない場所まで連れて行ってくれる?」
狸は俺をしばらく見た後、動けそうだと判断したのか外を歩いていく。怪異は月明かりに照らされたままジュウジュウと焼かれているようで動かない。
今のうちに狸の後を着いていくと、体育館裏に行き、いつも2匹が眠っている場所に連れて行かれる。
肝試しに参加する前に見た時は田沼によって荒らされた足跡があったけれど、今は石を配置するための窪みがあった。
そばで狸は俺を見上げてちょこんと座る。
「……石を置くんだな?」
そっと石を置く。
瞬間、月の光を浴びてさらに輝きだし、学校全体にかかった黒いモヤは消滅していく。
これで終わるのだろうかと待っていれば、1人の人物が物凄い駆け足でこちらに向かってくる。
縁かと思ったが……違う。
怪異が人型になっていた。幾分か小さくなったが動きが速くなった。
赤黒い見た目と、顔には複数の目玉が付いている。
『悪 イ 子 。 シ ネ』
俺も『悪い子』からは逃れられないようだった。俺が食べられたら終わるのだろうか──逃げ続けることに疲れてしまい、動けずにいたら。
狸が前に立ち塞がる。
『可 愛 イ 子 。 退 イ テ』
狸は退かない。怪異も意思があるのか狸を見下ろして会話をしている。
怪異が狸を跨ごうとすれば狐も立ち塞がった。「慧護くん!」と声が聞こえた方に顔を向けると、縁も外に出てきたのかこちらに走ってくる。
「縁、怪異がいる、危ないから離れて──」
月の光を浴びた2つの石は屋上と体育館裏でさらに強く光る。光に弱い怪異は苦しみながら俺を食べようと近づき、2匹は止めようとしているが……俺は怪異に肩を掴まれ、首元を噛まれる──
「……やめろ──ッ!」
縁が、割り込んで俺を抱きしめた。
怪異の大きな口は俺と縁の首を同時に噛んだ。
痛みと、死ぬ恐怖と、縁を巻き込んでしまった絶望と。
助けに来てくれた縁を最後に感じていたくてその手を強く握り締めれば、縁も握り返してくれた。
視界は暗転していく──。
