スクープ!《学校に棲みつく動物2匹と、姿を消した生徒の行方》

 最悪の場合、身代わりになってもらう。
 そのために田沼と合流する。こんな状況でなければ狸を酷い目に合わせた人と一緒に行動などしない。

『悪い子だーれだ』

 遠くで言葉が聞こえる。
 縁は不気味がるだけだったが、田沼は確実に顔が恐怖に染まった。怪異からの言葉が耳に届いているのだろう。

 運が良いことに、多くの生徒が身を隠している教室に入る。田沼を身代わりにさせるのは最終手段だったから、俺は怪異を外に追い出すことを提案した。

 方法は、勢いよく突進してくる怪異を窓に激突させて突き落とす。
 俺がやると言えば誰も反対しない。やりたがらないのは知っていた。

 縁だけが心配そうに俺の元へ来て「足悪いけど大丈夫なの?」と尋ねてくる。

 あの時の咄嗟に出た嘘を、信じていたのか。縁に今更言えない悪いこと。

 笑って誤魔化す。

 しかし作戦は失敗に終わる。
 様子見して外に出るべきなのに田沼は確認もせず扉を開けた。

 目の前に怪異がいた。

 田沼は食われる直前、背後にいた男子生徒を身代わりにした。

 教室の中は悲鳴に溢れた。こんな時に限られているのは縁を守ることくらいで、呆然と動けずにいる縁の腕を掴んで教壇の下に隠れさせる。

 廊下に逃げた生徒たちを怪異は追いかけて教室の中は静まり返った。

 なんとか生き残り息を吐く間もなく、田沼は俺を吊し上げた。

 まあ、そういう奴だよな。
 俺は田沼にとって都合の良い一軍でいてほしかったはずだ。

 だから俺をこき下ろす。

 少しはみんなのために悪い子を返上しようと動いたけれど、もうどうでもよくなってしまった。

 もう俺、他の人のためには動かない。

 俺の作戦に付き合おうともしなかった生徒たちに睨みつけられながら俺は教室を出る。怪異はいなかった。

 背後から着いてくる足音。

 縁が着いてきてくれた。
 丸い、狸のような可愛らしい目で僕を見上げている。

「一緒にいても、いいかな」

 優しい言葉だった。
 俺を信じて着いてきてくれる。
 縁のためになら動ける。なんだって出来る。そんな気がする。

 胸がじんわりと熱くなり、しかし素直に言葉にするのは恥ずかしくて「そんなにいたいなら、いいよ」と言う。

 縁は嬉しそうに笑った。

 本当の友人に近づいているのかもしれない、と思った。